世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百二十六話

「ここですかね」

「あぁー……もう少し、あっちだな。この情報が正しければだけど」

「其れは言ってはいけませんよ」

 

疑わないのはどうかと思うが、全部疑っていたのでは疲れ果ててしまうのだから。なんて事を考えながらローウェンが指差した位置まで歩いていき、地面を確認する。そこは少しだけ周辺と違う様に見える。人の手がはいっているというか、自然の物とは少し違う。といっても本当に僅かな違いでしかない。それこそ情報を持った上で意識しなければ見逃してしまう程に。

 

「まぁ、何百年も経過してればそうですよねっと」

「寧ろよく違うと分かる違いが残ってたもんだよな。あれか、そういう技術でもあるのかね」

「その技術の意味は?」

「さぁ?」

 

首を傾げるローウェン。まぁ、確かに数百年先まで掘り返した跡が僅かに残るようにする技術とか余りに限定的すぎる。何故その技術を生み出したのかと問いただしたいくらいだと。他の三人が見張る中、掘り返しながら思う。

 

と、其れほど掘っていないのに早々にそれは姿を見せた。

 

「お、これか。えぇ…よいしょ」

「これはぁ…あぁ、鎧ですかね?」

「見た感じはだけどな。案外、盾として使ってたかもしれないぞ」

「これを?」

「これを。まぁ、違うだろうけど」

「ですよね」

 

身を守るという点は同じだけれども。どう見ても盾ではない。まぁでも一応はと確認するように視線を詳しいだろうコバックへと向け。それに気が付いた彼は如何したのかと近づいてくる。

 

「これ、盾ですか?」

「鎧ね」

「ですよね」

「知ってる。何故ならすでに盾を見つけているから」

 

寧ろ鎧まで盾として使ってたらどうなるのかと疑問に思わなくもないレフィーヤ。そして当然の答えを聞いたところでローウェンは慎重に掘り出した古びた鎧をします。

 

さて、何故彼らがこんなことをしているかというと。評議会から依頼されたからだ。遥か昔、戦場であったらしい第三階層に眠る英雄。その遺品である武具を見つけ出し集めて欲しいとの事。

 

この依頼、ミッションは請けても請けなくてもいいと言われたが、軽く話し合った上で請けたので今に至るのだ。理由は単純にお金が貰えるからだ。それ以上に断る理由がなかったからというのもあるが。別にギルド・フロンティアは焦っている訳では無いので寄り道は大丈夫なのだ。

 

「と、これで一つ、二つ、三つで……四つだな」

「なんでちょっと間が空いたのよ」

「鎧の中に兜が入り込んでたからだよ。嘘だけど」

「嘘なんですか」

「正確には鎧が上に乗ってたから見えなかっただな。正直、ヒヤッとした」

「壊れてないわよね?」

「取り合えず大丈夫だ」

 

入れ方の所為でミッション失敗とか冗談にならない類の失敗になってしまう。それでも少しすれば笑い話として酒の席で盛り上がるのだろうけど。キチガイとはそういうものだから。

 

「鎧に兜、盾に……あぁ、これは銃、じゃなくて重砲か」

「装備的にはドラグーンの物ね」

「数百年前にはもうこの類の武器開発されてたんだな。ちょっとびっくり」

「戦争の事を考えると劣化してるかもよ? 今の技術」

「否定は出来んな」

 

戦争が在った所為で技術が失われた。よく考えれば割とありふれている事なのかもしれない。逆にそれが切欠で爆発的に発展することもあるだろうけど。余り、良い発展の仕方とは言いたくない類のものだ。なんて事を考えながら歩いていく。

 

「ん?」

 

不意に、ローウェンが何かに気が付いたように声を零しながら視線をある方向に、下へと続く階段のある方へと向ける。何か、あるいは誰かが来るのだろうかとレフィーヤも同じようにみると、丁度姿が見えた。

 

現れたのはソロル。リリの姿は見えないが、酷く焦っているように見える。何かあったのだろうかと思いながらどうするのかと視線をローウェンに向ける。彼は肩を軽く竦めて、彼女に向かって近づいていく。

 

響く足音にハッと彼らの事を見るソロル。今気が付いたと言わんばかりに驚きの表情を浮かべて、駆け寄ってくる。尋常でない様子に如何したのかと問いかけようとして、その前に彼女が先に口を開く。

 

「お前たちリリを見なかったか?!」

「あいつを? 第三階層という意味でなら見てないぞ」

 

なぁと言葉にするローウェンに頷いて見せる。当然といってはあれだが、三人も同じだ。

 

「そうか。あぁクソ!!」

「取り合えず何があったのか……って聞くまでもないか、リリが居なくなったのか?」

「そうだ! あぁ、そうだよ!! 様子が可笑しかったから宿で休んでろって言ったのに帰ったら居なかったんだよ!! 町中探してもいなくて、だからここに」

「落ち着け。焦っても意味なく命を落とすだけだぞ」

「分かってる!! だけどもしリリがここに居たらあいつは、あいつは馬鹿みたいな事の為に命を捨てようとするに決まってる!!」

「だから」

「分かってると言っただろう! だが落ち着いて何になる! 俺が落ち着けばリリが向こうから顔を出すのか?! それともお前たちが一緒に探してくれるとでもいうのか?! あぁ、そうなら落ち着いてやるよ! なんならお前の望んだとおりの事をしてやるよ!! それでリリが救えるならなぁ!!」

 

「ほぉ?」

 

ギチリと何かが軋む音が聞こえた気がした。それはソロルも同じだったのか、自分が興奮していたとはいえ何を言ったのか、言ってしまったのか理解した。其の事に

 

顔を青くし、けれどそれがどうしたと覚悟を決めたのかしっかりとローウェンを見て、一気に血の気が失せた。

 

仕方ない事だろう。満面の笑みを浮かべたローウェンを間近で見たのだから。

 

「其れは詰まりあれだな。リリの探索、場合によっては救出を手伝うから道具や矢弾などの消耗を補填してくれ。なんて言ったらしてくれるのか?」

「そ、その程度なら」

「そうか、そうか。成程そうか」

 

彼がソロルの肩をまるで逃がさないと言いたげに力強く掴んだまま音が聞こえそうなほどの勢いで視線を四人へと向ける。如何するかと問いかけるように。ここで首を振れば、きっと彼は引き下がる。そしてここで首を振らなければソロルはリリを探すのに手間取るだろうが、酷い傷を負う事になるだろう。主に財布に。

 

けれど、けれどだ。圧力を感じるほどの笑みを浮かべるローウェンを相手に、首を横に振る勇気はレフィーヤには無かった。そしてそれは他の三人も同じなようで。

 

 

 

こうして、第三階層に自重無しの人外が解き放たれた。

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