世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百二十九話

『グッオォォォオオァアアアアアアア!!』

 

迫る劫火を前に、アンデッドキングは咆哮を響かせる。呼応する様に死霊が沸き上がり盾となる様に折り重なり劫火とぶつかり、轟音を撒き散らしながら炸裂した。

 

「今、死霊が爆発しましたね」

 

爆弾として使えるのかと確認しながら火球を数発放つ。流石に、焦っていた様子の先ほどと違い視線を鋭く走らせて睨むように見る。すると今度は何処からかボーンアーチャーが、いや少し違う様に見える弓矢を手にした屍が現れて、その肉の無い体を盾にして防ぐ。

 

弾け飛んでいくそれを見ながら、さてどう動いていくかと視線を巡らせながら考えるレフィーヤ。まさかこのまま防戦一方という訳がないと、何をしてくるのかと観察し。新たに現れた屍が、溶けるように消えるのを目にした。

 

自壊したのか、或いはそうなる様にアンデッドキングが何かをしたのか。もしそうしたのだとするならば、次を警戒すべきだろうと身構えて。

 

アンデッドキングの手元へと何かが集まっていることに気が付く。術者でなくともそれが攻撃の為の物であるとすぐに分かる。故に、放たれる前にとゴザルニが動き、複数の屍が彼女に向かって矢を放つ。それを切り捨てながら進むが、僅かとはいえ阻害されてしまった。

 

経験故に、レフィーヤは間に合わない事を理解する。弓を捨て落ちていた折れた剣を片手に突っ込んできた屍を手早く処理しているコバックに視線を僅かに向ける。彼ならば防げないと言う事はないだろうが、見たことのない技を受けてそれで動けなくなっては拙い。だからレフィーヤが術を行使する。

 

術をまるで投げ捨てるかのように放つアンデッドキング。それはしかしレフィーヤの生み出した氷柱とぶつかり合い何かを撒き散らしながら弾けた。詳しくは分からないが、毒性の何かだろうと見てわかる。

 

さてと、それを見てレフィーヤはコバックを見ると。彼もまた視線を向けて頷いて見せた。

 

「なら遠慮なくいきますよ!!」

『ヌッ?!』

 

術を行使し劫火を放つ。即座にそれを感知したアンデッドキングは瞬時に屍と死霊を重ねて防ぐ。どうやら、当たっては危険だと判断されているようだ。実際、それは間違いではなく。これはそう簡単に辺りはしないだろう。

 

まぁ、警戒されているならそれはそれで大いに結構。ただの目くらましでしかないのだから。

 

「足元注意でござるよ」

『ナッ!?』

 

勢いよく駆け抜けながら意識の外に居たゴザルニが一閃。絶叫を上げながらも自らの背後に回った彼女に視線を向けて。

 

「戦いなれてないんですか?」

『?! シマッ‐―――ガァァアアアアアアアアアアア!!』

 

無防備な状態となったアンデッドキングに劫火を叩き込む。吹き飛びながらさらに大きく響く絶叫。其れでも未だに終わらず。怒りを露にし乍らゆっくりと立ち上がるアンデッドキング。

 

を、一気にゴザルニは駆け上がり。勢いよく頭部に刃を突き刺した。

 

 

『キ、サマァァアアアアアアア!!』

「おっと」

 

激高しながら暴れるアンデッドキング。危なげなく離脱したゴザルニを見ながらレフィーヤは小さく呟いた。

 

「中々にタフですね。やっぱり死んでるからなんですかね?」

 

飛んできた矢を杖で叩き落しながらさてどうするかと考えて。とても大切なことを思い出す。

 

『シネェエェエイ!!』

 

考えていた故の僅かな隙に、アンデッドキングは声を轟かせながら術を放つ。先ほどの物よりも速いそれはレフィーヤでは避けられないもの。

 

だが、そもそも避ける必要のないものだ。なぜならばすでに眼前にはコバックが構えているのだから。

 

「そぉーれっと!!」

 

向かってくる術を盾で見事に流して見せた。

 

『馬鹿ナ』

 

まさかこうも鮮やかに流されるとは思って居なかったの、唖然とした様子で固まるアンデッドキング。当然それは先ほどの、誘うためにレフィーヤがわざと見せた隙と違う。故に。

 

確実に、彼女の攻撃が当たる。

 

「アンデッドキング!!」

『?! 貴様ハ!』

 

響く声に、反射的に動く。しかしそれを阻害するように氷が手足を縛る。驚きの声を上げるアンデッドキングの元へと駆け寄るのは多くの死霊を束ね、力へと変えその手の内に持つネクロマンサーの少女。

 

「あなたを――――――倒します!!」

 

リリはアンデッドキングの顔面へと渾身の力を込めて術を…叩き込んだ。

 

『ガ、アァァアアアアアアア――――――――ッ!!』

 

絶叫、悲鳴。いやそれは断末魔であろう響き。音を轟かせながら強烈な爆発はアンデッドキングを呑みこみ、存在感を薄れさせていく。

 

主を失ったからか、崩れ落ちていく屍たち。それを見て終わったのだと崩れ落ちるリリと、慌てて駆け寄るソロル。

 

そんな二人を見ながら、まだ終わっていないかもしれないと警戒を怠らないようにと視線を向けるレフィーヤは。

 

『許サン』

 

憎悪に満ちた、崩れ行くアンデッドキングを見た。

 

『許サン許サンユルサン……絶対ニ、貴様ラダケハユルサン!!』

 

驚愕し固まるリリと庇う様に立つソロル。

 

『キサマ、貴様らキサマ貴様ラヲ、ヲオォォオオォオ』

「喋るならもう少しまともにお願いしまーす」

 

震え、只管に憎しみの言葉を吐き続けるアンデッドキングに劫火を叩き込むレフィーヤ。瀕死を通り越している故にそれが躱せるわけもなく呑みこまれて。

 

 

凄まじい力の奔流を感じ取った。

 

 

「な、なんですかこれ?!」

 

危険だ。それは分かる、だが如何する事も出来ないと理解してしまった。それが全てを捨てたモノであると理解してしまったから。

 

燃え盛る劫火の中、力を吐き出す何かを垣間見る。それは、指輪。

 

「あれ、はまさか不死者の指輪!!?」

 

ルナリア族の秘宝。リリが、その一族が長き時を経て尚、取り換えさんとしたもの。それが輝きを増しながら宙を舞う。

 

『許サヌ。貴様ラヲ許サヌ。コレヲ、秘宝ヲ失ウナド認メヌ。我ノ手ヨリ零レ落チルナラ。諸共ニ滅ボシテクレル!!』

 

誰かが、無いかを叫んだ気がした。光が暴力的な力となって満ち溢れ。逆にレフィーヤの意識がゆっくりと闇へと落ちていくのを感じ取る。そして、何もかもが落ちるその間際、最後に目のしたのは。

 

 

一発の弾丸が、指輪を撃ち抜く光景だった。

 

そして意識は闇へと落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐへぇ」

 

頭部に強い衝撃。瞬く視界に、こんな風に術を仕込んだつもりはなかったのにと、如何してこんなことになったのか考えながら起き上がり、今いる場所が第三階層の中で無い事に気が付く。と言うか見慣れない様な、見慣れたような場所だった。

 

目の前にベットがある事から、寝かされていた自分はあそこから落ちたのかと理解して。

 

「………あれ?」

 

気が付いた、いや思い出したのだ。ここがどこであるのかを。しかし、どういう事なのかまだ把握できていない。出来ていないから、レフィーヤは窓から外を見た。

 

外の景色には、世界樹は存在しなかった。しかしそれは当然だろう。彼女が今いるのはアイオリスの街ではなく。

 

 

迷宮都市オラリオなのだから。

 

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