世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百三十話

迷宮都市オラリオの誇る最強の一角たるロキファミリアが本拠、黄昏の館。多く存在する部屋の内の一つでレフィーヤはベットに座り込み頭を抱えながら唸っていた。

 

「…どういう事なの?」

 

いや考えれば思いつくことではある。いつの間にかアスラーガの迷宮に居たのだから、これまた気が付けば元の場所に戻っている可能性がある事を。だが、しかしだ。もう少しタイミングとかあるだろう。原因が分かっていなかったのだから仕方ないとは言えるが。いや、そんなことはどうでもいい。同じく意味も原因も分からないけど無視することができない事。それは現在レフィーヤが。

 

「服……どこ?」

 

全裸であると言う事だ。これには困惑する他にレフィーヤ。幸いなことに同居人がすでに出た後なようで服を着ていたはずのレフィーヤがなぜか全裸でベットから転げ落ちるというパニック確実な光景を見られることはなかったが。

 

まぁ、全裸である事に変わりないのだから慰めにはならないが。

 

「しかし、何で服だけ?」

 

いや服が無くなったのではなく、服だけが向こうに残された、と言う事なのかもしれない。全くなんて不親切な謎現象なのか。向こうに放り込んだときはちゃんと服と一緒だったのに。

 

まぁしかし、このまま唸っていてもただの痴女でしかない。肌寒いしいい加減服を着るかと思い立ち上がり。

 

「……どこだっけな」

 

見つけるのに少しだけ時間が掛かったそうな

 

 

 

「お、やっほーレフィーヤ!!」

 

廊下を歩いていると背後から声を響く。はて誰だろうかと振り向き。

 

固まった。目に映る人物の名前が出てこない。この、えっと。褐色で天真爛漫と言う言葉がよく似合う様に思える、悲しくなる程に胸のない……ない?

 

「……あ、ティオナさん」

「何その間?」

 

首を傾げるティオナに、大したことでは無いと口にする。実際、嘘はない。

 

「ただ少し名前が記憶から吹っ飛んでただけですから」

「其れ大したことだよ?! 何があったの?」

「だから大したことじゃないんですって。ベットから転がり落ちただけですし。頭から」

「いや、記憶が飛んでる時点で大したことだよそれ」

 

大丈夫かと心配するティオナ。その気持ちが心に染み渡り少しだけ癒されたレフィーヤだった。しかしあんまり心配させすぎるのもどうかと思ったので、確実に納得させる事のできる言葉を口にする。

 

「でも大丈夫ですよ。だってアイズさんは忘れてませんから!!」

「ブレないねレフィーヤ」

 

ならまぁ大丈夫かと納得するティオナに、本当に納得されてほんのり納得いかないレフィーヤ。まぁ、そんなことは良いとしてだ。

 

「アイズさん今どこに居ますか?」

「アイズ? アイズならって今の時間は食堂でしょ、何言ってるの?」

「食堂、成程食堂なら確実に会える。そう絶対に!!」

「何か可笑しいけど。若しかして今日はまだアイズに会ってない?」

「え? まぁ、そうですね」

「まさかそれがって流石に……うん」

 

無い、とは口にしなかった。おい、ティオナと言う人物にとってレフィーヤ・ウィリディスと言うのはどんな人物だと思って居るのかと。流石にアイズに会えていないというだけで調子が可笑しくなるなんて事はない。多分。

 

「まぁ、取り合えず食堂に行こ!! こんなところで徘徊してないでさ」

「ちょ、ティオナさん引っ張らなくても」

「良いから良いから」

 

そう言いながらレフィーヤの手を引いて歩くティオナ。言葉ではそういっているが、内心ではホッと息を吐く。食堂への行き方を忘れていて彷徨っていたレフィーヤからすれば渡りに船というものなのだから。勿論口にはしない。

 

胸がないという事で名前を思い出したと言う事と一緒に、心の奥底にしまい込むレフィーヤだった。

 

 

 

黄昏の館の食堂。そこにはロキファミリアの団員が集い、語らい、食事を楽しんでいる。そんな場所の一角で、レフィーヤは震えていた。

 

「おぉ……アイズさんだ!」

「如何したのレフィーヤ?」

 

何か言っているがそれどころではない。なんというか、懐かしい。久しぶりに見ると凄い美人だ。まぁ、それだけだけれど。

 

其れよりも気になるのが二人の視線だ。何故かレフィーヤがこれから食べようとしているものに注がれている。別に可笑しなものではない筈なのだが。と、ティオナが恐る恐ると言った様子で言葉にする。

 

「あぁー……レフィーヤ。それ、すっごい辛い奴だよね?」

「え、あぁはいそうですけど」

「大丈夫?」

「何がですか?」

 

先ほどと違う意味で心配するように見るティオナとアイズ。何故、辛い料理を食べようとしてそのような視線を向けられなければいけないのか。だからどうしたという話だが。

 

取り合えずそんな視線を無視して匙を取り、一口。あ、なんて零れた声を聴きながらレフィーヤは噛み締めて。固まった。

 

「あぁもう、言わんこっちゃない」

「はい水」

 

やはりかと言わんばかりに額に手を当てるティオナと水を差し出すアイズ。だが、そんな二人に反応を示さないレフィーヤは少ししてからふっと息を吐いて。

 

舌打ちをした。

 

「え?」

「レフィーヤ? 如何したのレフィーヤ?」

「いえ大丈夫でお気になさらず。ただ、辛くすれば良いってもんじゃないぞクソがって思っただけなので」

「本当に大丈夫レフィーヤ? なんか様子が可笑しいけど」

 

大丈夫か? 大丈夫じゃない。こんな辛味を冒涜しているかのような料理を食べて大丈夫なわけがない。今すぐにこれを作った人の所に行ってぶちのめしたいほどにレフィーヤは憤っていた。

 

まぁ、残したらそれ以下になってしまうとレフィーヤは黙々と料理を詰め込んでいく、眉間に皴を作りながら。

 

「レ、レフィー……ヤ?」

「……ちょっと外に出てきます」

 

掛けられた言葉を無視して完食し、立ち上がりながらそう言って足早に食堂から出ていくレフィーヤ。何か聞こえた気がしたが現在のレフィーヤの機嫌は最悪なのでこれもまた無視する。そう、最悪なのだ。美味しくもない辛いだけの料理を食べてしまった所為だろう。気分が悪いのも、言葉にできない不快感を感じるのも。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰ってきた事に酷く落胆してしまったのも、その所為だ。

 

そうでなければ…いけない。

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