世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第十四話

「と言う訳で、ギルド設立を祝って酒飲むかッ!!」

「イィエエエエエエエエエエエアァアアアアアアアッ!!」

「お酒、其れはあたしを惑わす魅惑の飲料。勿論飲むわよ!!」

「なんですかこのテンション?」

 

夜、かすみ屋の一室。ローウェンが借りて寝泊まりしている部屋に、彼等は集まっていた。酒を持って。

 

「何故かって? 酒を飲むからだよ!!」

「ホオォオオオオオオオオオオオ……ホッホォォオオオオオオ!!」

「レフィーヤちゃん、お酒を飲むときはね、取り繕っちゃ駄目なのよ。全てを曝け出すのよ!!」

 

そう言われても、と思いながら見る。

ローウェンは酒の注がれたグラスを傾けてゆっくりと飲んでいる……何故か逆立ちししながら。

コバックを見る。彼もグラスに注がれた其れを、飲んでいる……何故かグラスの底の部分をかち割って。 

そして最後の一人、先程から奇声を上げながら、しかし飲み方だけはいたって普通な男性。

 

メディックの……ハインリヒと名乗った人物。

 

やっぱり似ている、いやそう言えるのは身長だけなのだが。それにしたって、若干彼の方が低い様に思える。しかし、立派な成人なのだとか。それを聞いてレフィーヤは益々似ていると思った。団長、いや彼の種族、パルゥムに。 

 

と、見られている事に気が付いたハインリヒ。ふっと、笑みを浮かべて。

 

「何だい? 僕に一目惚れでもしたのかい?」

 

白い歯では無く眼鏡を煌かせながらそう言った。

 

「え、酔いが回りましたか?」

「おいおい、ハインリヒ。お前寝るの早過ぎじゃね?」

「あら彼寝てるの? 布団用意しなきゃ」

 

「ぼろクソだね! あとローウェンが言ったのはそういう意味じゃ無いから布団出そうとしないで。僕まだ酒飲みたいよ」

 

あらそうなの? と、言いながら布団を戻すコバック。大丈夫なのだろうか彼は。

 

「まぁ、冗談は置いといて」

「寝言な」

「五月蠅いわい。君が僕の事を見てしまうのは仕方ない事だ。あ、自惚れとか勘違いだとかそう言うのは言わなくていいから。まさかこんな所でブラニー族を見る事に成るとはって君は思ったんだろう? 実際、僕も驚いたから。まさか、アルカディア以外でルナリア族を見るとは思わなかったから」

 

ハインリヒから零れる言葉。ブラニー、ルナリア、そしてアルカディア。それも、聞いた事の無い言葉だった。それを聞き、彼女は思う。

 

「えッ……レフィーヤ、お前ルナリアだったのか?!」

 

何故ローウェンが驚いているのかと。え、此処って彼女自身が驚いて落胆成り、何かしらの変化が出る所じゃないのかとレフィーヤ自身、何を考えているのだと片隅で思いつつも、しかし何で驚いているのかが気に成り過ぎた。

 

「何で驚いてるんですか」

「というかローウェン。君、ルナリアを……いや、若しかしてアルカディア独特の種族に関して知っているのか?」

「あぁ、知ってる……し、ってる? まぁ知ってる。あと、セリアンって何か動物みたいな耳してる奴等が居るんだろう? あ、あとアースランだっけ?」

「やっぱり知ってたのか。けど、なら尚更なんで驚いたんだい? 彼女の事、知ってたんだろう?」

「いやまぁ、うん。耳に関してはちょっと違うなぁとか思ってたけども、それもまぁ、レフィーヤの不思議の一つなのかなぁって、思っててな。しかし、そうかぁ、ルナリアだったかぁ……あぁー、そう言う事かぁ」

 

何故か、顔を手で覆って納得したかの様に呟く。一人で納得されても全く分からない。如何いう事なのか説明してもらう為に、口を開こうとして。だが、ローウェンが先に言葉にする。

 

「いやな。そのアルカディアについて色々と教えてくれた奴がいてな。あ、冒険者ギルドで言ったフーライの知合いな? っで、そいつの種族関係の説明が……何というかあれだったんだよ」

「あれ?というのは。まさか全く見当違いな事を教えられていたと?」

「いや、間違ってはいないぞ。だって、あいつはルナリア族の特徴は」

 

 

『とんがってるでござるよ』

 

 

「って言ってたしな」

「ちょっと待って下さい」

「と、とん……え? とんがってる?」

「……あぁ、耳の事言ってるのね」

 

耳、確かに……とんがっている。確かに、特徴と言えば一番の特徴だろう。しかしなんか違う。あとござるって何だ!?

 

「……因みに、他のに関しては何て?」

「他か? そうだなセリアンはもふもふで、ブラニーは丸いって言ってたな」

「まる?! 丸い、か。何だろう、いや確かに、若干丸みを帯びては要るけども……チビって言われた時よりショックなんだが」

 

丸いか、そうかぁ。そう何度も呟くハインリヒ。確かに、レフィーヤから見ても、若干丸みを帯びている、子供的な物だが。そして、それを口にする事無く心の奥に仕舞い込んだ。

 

微妙な空気が漂う中、彼は静かに酒を口にする。

 

 

 

 

 

そして。

 

「黄昏の時に天より堕ちる熾天使の嘲笑……なんてどうだろうか?!」

「いえ、此処はもっとこう人々を引き付けてやまない感じに。詰り、アイズさん見つめ隊以外ありません!!」

「ボーイミーツガールって素敵よね」

「金が欲しい」

 

その空気が払拭された時、残ったのは混沌だった。

 

因みに、レフィーヤとハインリヒが言い合ってるのはギルド名の候補だという。当然だが後の二人の呟きは関係ない。明らかに普段ならば頭を抱える様な言葉が飛び交っている。彼等は…酔っていた。

 

「なぁああにが、熾天使ですか! そんな物よりもアイズさんの方が一兆倍は尊いですよ」

「なにおう?! 熾天使良いだろうかっこよくて、堕天使の次ぐらいい良いだろう?! というかアイズって誰だ?!」

「人類の宝でしゅ!」

「恋人がほしいは、最初は冷たくて……でも何時の間にか甘えてくれるようになる。そんな恋人が」

「なんでこんな金が無いんだろう?」

 

言い合う二人に、呟く二人。もはやこの場を如何にか出来るものは居はしない。かと、思われたのだがそうでも無い様だ。

 

ふと、何気なく辺りを見渡したローウェン。暫く続けてから、視線をレフィーヤに向けた。

 

「そろそろ、部屋に戻って寝た方が良いぞレフィーヤ」

「はぁ? いまさら何言ってるんですす?! まだアイズさんの良い所をぜーんぜんいってますんよ!!」

「いや、口調が可笑しな事に成ってるから。と言う訳で行くぞー」

「なんですか、なんでひぱてるんですか。私は子供じゃないでんよ」

「じゃあ、レフィーヤおいて来るから、適当に片づけといてくれ」

「はぁーい。いってらっしゃいね」

「熾天使…熾天使駄目か? じゃあ座天使?」

 

悩みながら呟くハインリヒを無視して、ローウェンは廊下に出て行く。レフィーヤを引きずりながら。

 

「其れでですね、アイズさんはですねぇー。かっこよくですねぇ……きいてますかぁ?」

「聞いてるよぉ、かっこよくて綺麗で強い、パーフェクト冒険者アイズの伝説ならちゃんと聞いてるぞぉ」

「聞いて無いじゃないですか!!」

「え? 何故に聞いて無い判定?」

「一番重要な、とても頑張れる人ってとここが抜けてます」

「其れ聞いて無い」

「アイズさんはですねぇ、とっても頑張る人でですね。どんどん強くなって綺麗なってかっこよくなってそれでですね」

 

 

 

 

 

 

「きっともう、ずっと遠い場所まで行っちゃってます。私が如何やっても届かない様な場所まで」

 

嗚呼、と声がレフィーヤから零れ落ちる。なにを見るでもなく視線を彷徨わせて。

 

「私は置いて行かれちゃうんです………嫌だなぁ」

 

とても、悲し気に。そしてそれ以上に寂し気に言葉にして。

 

 

 

「そいっ!!」

「キャパ?!」

 

ローウェンに物理的に気絶させられた。

 

脱力し、見事に落ちた事を確認して、やり切った様に息を吐いたローウェン。

 

「これは、大変な冒険になりそうだねぇ」

 

そう呟きながら、廊下を歩いて行った。当然、レフィーヤを引き摺りながら。

 

 

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