世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百四十四話

第五階層。少女の語る始まりの場所。それが偽りでないと示すかのように見覚えの無い草木が生い茂る樹海。自然の悪意である罠が、強力なモンスター達が。今までとは一線を画すその場所に足を踏み入れた彼らは今。

 

物理的に浮いていた。

 

「おぉー」

 

驚きの声を上げるのはローウェン。流石の彼も吹き飛ばされた訳でも無く宙に浮くというのは初めてだったのか、楽し気に滑る様に移動している。そんな様子を見ながらレフィーヤは思う。

 

あの努力は何だったのかと。

 

いや、まるで違うのだが。今の状態は第五階層の良く分からない装置の効果に因るもの。それに対してレフィーヤのは誰でも出来るようになる技術。装置が無くともどこだろうと同じような効果を発揮出来るのは間違いなく優れている面である。

 

が、刀を振り回すミカエに追い回され痛い思いをした事を考えると、どうしても渋い顔をしてしまうレフィーヤだった。まぁ、それはそれとしても装置は参考にさせてもらうのだが。

 

「で、どうするか」

 

と、どうやってなのか目の前で止まったローウェンが口にする。さてそれは何の事なのかと視線を向けると。

 

「この状態だと満足に戦えないだろう」

「それは、確かに」

 

改めてに、今の状態を確認するように見る。宙に浮いている自分を。当然、宙に浮いているため踏ん張りなど聞かない、さらには地に足が付いている訳では無いので方向転換も出来はしない。止まるのだって何かにぶつからないといけない程だ。正直言って、戦えないと言った方が良い。

 

「止めますか?」

 

と、視線を装置へと向ける。それに触れれば起動し、また停止する事が出来るのは確認済み。今の状態でなければ進めないなんて場所も在るかも知れないが、それはレフィーヤが何とかすればいいだけの話だ。詰まり、別に今の状態で居続ける必要はないと言う事だ。しかし、ローウェンは否定するように首を振った。

 

「このままでも良いだろう」

「でも戦えませんよ?」

「あれを見ろ」

「あれ?」

 

何の事だと指差された方向を見ると。なんか、イノシシが浮いていた。必死に足をばたつかせながら揺蕩い、木にぶつかって何処かへと滑る様に飛んでいき姿は見えなくなった。

 

「この状態になるのはモンスターも変わらない。詰まりモンスターも戦えるような状態では無いと言う事だ」

「…まぁ、確かに戦わなくても良いならそっちの方が良いですかね。でも」

「なんだ?」

「あの三人はどうしますか」

 

と、視線の先に居る仲間を指差す。ゆっくりではあるが回転して止まれないでいるハインリヒと逆さに成っているコバック。と、地面に立ち続けているゴザルニ。

 

「私は色々あって慣れたから大丈夫ですけど、戦えない処か動けないのは流石に拙いですよ」

「まぁな。慣れてもらうしか無いけどなこればっかりは」

「それはそうですけど……というかゴザルニさん」

「何でござるか?」

「なんで浮いてないんですか」

「地面に足を突き刺しているからでござる」

「其れは見ればわかります」

 

そうではなく何故そうまでして浮こうとしないのかと疑問の思ったのだがと、そう口にする前にゴザルニは口を開いた。

 

「今浮いたら…吐いてしまうでござる」

「また何か食べたんですか」

 

いや確かにそれを前提に考えると今の状態は非常によろしくないのは確かだ。下手すると被害が拡大するかもしれない、被弾的な意味で。如何するかとローウェンに視線を向けると、彼は無言でうなずいた。

 

「取り合えず、ゴザルニが落ち着くまではやめておくか」

「申し訳ないでござる」

 

そう言った彼女の顔は、酷く青ざめていた。

 

 

 

装置を停止し第五階層を歩んで進んでいたギルド・フロンティア一行。ゴザルニの体調も落ち着いた処で再び宙に浮かぶ。

 

「おぉ、これは…新感覚でござるな」

「横に成ってますけど」

「バランスを取るのが難しいのでござるよ」

「あたしは慣れてきたわよ」

「僕はもうちょっと掛かるかなぁ」

「体重が軽いからかしらね?」

「だから平然とそういう事を言わないでくれるかな? 事実だけれども」

 

なんて会話をしつつ、態勢が可笑しな事に成っているがそれでも割と問題なく進んでいる。モンスターと戦わなくて済むというのがとても楽でいい。

 

「っと、危うかったでござる」

 

まぁ、どこからかすっ飛んできたモンスターと衝突しそうになるのは問題と言えば問題なのだが。

 

「これが無ければ良いのでござるがぁ」

「それは欲張りすぎだろう。俺的には節約できるだけで万歳ものだよ、本当に」

「で、ござるか……そういえばローウェン殿」

「なんだ?」

「今の状態で銃を撃ったらどうなるのでござるか」

「すっ飛んでいくぞ」

 

まぁ大したことでは無いが彼は口にするが。それは結構大したことでは無いのだろうかとレフィーヤは思う。

 

「しかしそうだな。残弾数を考えなければ方向転換とかに使えそうだな」

「銃を撃って移動……かっこいいですね」

「只管に金が掛かるけどな」

「あぁ、やっぱりそこですかー」

 

でも、お金を払ってでも見てみたい、銃撃による空中移動。とてもロマン溢れる光景を見れることだろう。まぁ、頼みはしないけれど。

 

なんて考えながらレフィーヤは進んでいく。途中、装置を止めて歩いたり、また浮いたりと繰り返しながら彼らは進んでいると。

 

 

再び、少女が姿を現した。

 

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