世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百四十八話

「良いか?」

「あ、待ってまだ注いでない」

「ねぇ、なんかコップが多いわよ」

「それは拙者が色々と飲み物を混ぜてみようと思って持ってきたやつでござるな」

「挑戦心の塊ですね。冒険者らしいといえばらしいですけど」

「はい取り合えず静かに……ハインリヒ注ぎ終わったか?」

「大丈夫だよ」

「そうか、じゃあ世界樹踏破を祝って」

 

 

『乾杯ッ!!』

 

 

ジェネッタの宿の食堂。そこに響くのは笑い声と、少しの悲鳴。中心に居るのは勿論ギルド・フロンティア一行。所々に包帯が見えているが、それでも確かにそこに居た。

 

原初の闇を乗り越えたからこそそこに居た。

 

「――――――ッあぁ!! うん、やっぱり美味しいわね」

「だねぇ。踏破した後に飲むお酒が一番だね本当に」

「………………」

「あの、ゴザルニさん。食べ物ちゃんと残しておいてくださいよ? あと、ローウェンさんは如何してお酒を瓶で持ってるんですか?」

「飲みにくいからだよ」

 

この状態だしなと、包帯で動かしようがない状態の利き腕を見せる。そういえばそうだったなと頷きながら酒を流し込む。まぁ、手の中であんな爆発もどきが在ったのにそれだけで済んだことはある意味異常なのだが。そんな事に成ったのに当然の様に弾丸を命中させたのも同じく。まぁ其れに関しては何時もの事だが。

 

「というか、飲み始めておいてなんですけど。ここでやってよかったんですか? 酒場もあるのに」

「良かったというか、使ってくれって言われたから使ってるんだよここを」

「え、誰に?」

「ジェネッタ」

「宣伝材料にでもしようって魂胆なのかね。すっごい無駄な事だけど」

「逆に客足が遠退きそうよね」

「そうでもないかもですよね? 結構、この街の人たちも調教されてきてるみたいですし」

「言い方…まぁ、間違ってはいないけれど」

 

そこで否定しないのかとレフィーヤは思った、が口には出さない。正しく、この街はキチガイに因って調教され強く育ったのだから。まぁ、自分で言っておいて否定しないのかなんて言う積りが無いというのが一番の理由なのだが。

 

「しかし、ジェネッタは良いとしてもその妹が良く許したね」

「そういえばそうね……よく考えたら名前知らないのよね、何時も忙しそうで聞く暇なかったし」

「まぁ、名前に関してあれとしても別に良いって言ってたぞ」

「いっては何ですが、何故?」

「金払ったから」

「おぅ、金銭」

 

そりゃ確かに良しとするだろうなと思わずうなずいてしまった。たまにだが宿の金を勝手に使ってしまう姉とやばい程あれな姉の所為で子供としては涙を誘うくらい大人びた子だったし、ちゃんとお金を払って周りに迷惑を掛けない様にすればそりゃそうだろうと。

 

まぁ、それはそうとしても気に成る事が一つできたので、酒を瓶から直接飲んでいるローウェンに問いかける。

 

「そのお金はどうしたんですか?」

「普通に払ったぞ」

「…その、大丈夫なんですか?」

「弾代と予備の銃を買った金額と比べれば大したことない……いや、ほんとはした金だから。いやマジで、自棄になってないから。うん十万消し飛んだだけで自棄になる訳ないし、まじで…まじで! は、はは、ははははははははははははははッ!!………あぁ、あれなんだろう飲みすぎたか? 視界がぼやけてよく見えない」

 

小さく呟いた後にまたも乾いた笑い声を響かせながら酒を飲むローウェン。思わずレフィーヤは目を背けた。なんかもう悲しくて。

 

「まぁ俺の財布が寂しいのは何時もの事なんだがな」

「自分で言いますか?」

「自分の事だから言うんだよ」

 

其れもそうかと思いながら近くに在ったサンドイッチを手に取り口にする。心地の良い辛味にやっぱり辛さは良いなと思うレフィーヤ。

 

ふと、今する様な話ではないがどうするのかと疑問に思った事を口にする。

 

「アルコンさんのお願いというか依頼というかはどうしますか?」

 

それは原初の闇を打倒した直後。冗談抜きで死に掛けていたいた彼らの元に彼女、アルコンが現れさらりと治療を施し、感謝と彼らへの称賛を言葉にした後、彼女が口にしたのだ。

 

もしよければ未知へと挑まないかと。

 

「俺は行くぞ」

「あたしも」

「僕もかなぁー」

「拙者は流石に家族と別れを済ませたいでござるなぁ」

「じゃあゴザルニさんのが済んだらって事ですか?」

「そうなるな」

 

と、ゴザルニ以外即答する。話を聞く限り、海の向こうどころでなく本当に今いるのとは違う星、世界へと旅立つ事になるというのに。もう少し迷っても良かったのではないのだろうかと、彼らと全く同じ意見のレフィーヤは思う。

 

星の外へと至る。全く心躍るじゃないかと。

 

そこにはあの時と同じ景色が広がっているのだろうかと思いをはせながら、楽しみだと笑う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ、そうだ。アルコンと言えば、あれだったね」

「なんです?」

「凄い光ってたよね」

「あぁ……そう、ですね」

 

 

心底どうでもいい事を口にするハインリヒ。どうやってなのかとかそう言った疑問なら兎も角、そんなはいそうですねとしか返せない事を口にされても困るレフィーヤだった。

 

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