さてと、レフィーヤは鞄の位置を直しながら歩く。そこは世界樹の頂き、原初の闇の在った場所。未だにその影響が抜けていないのか薄暗いその部屋の先を目指して。
「しかし本当に良いのかしら?」
「何が」
「いつも通りでよ」
「荷物がって事ですか?」
確かに、持ってきたものは何時も冒険に出る時とそう変わりない。精々着替え用の衣服や食料が多い程度だ。コバックの言葉も分かる。けれど、それに対してローウェンは言う。
「と言ってもこれ以上は持てんだろう。動きの邪魔になる」
「それはそうだけど。これから全く違う場所を目指しているのにって思うとね」
「逆だろう、新しい所だから殆ど荷物を持ち込んでないんだろうが」
「というと?」
「ぶっちゃけ意味がないかもしれないからだ。特に金」
「あぁ、それでかなりの量のお金を使ってたのでござるか」
「使えなくなるかもしれないものを残しておいても意味ないからな。使える処で使った。其れだけだ」
「その割に物は多くないですよね」
「言うな、其れは言うなまじで。俺だって出来ればもっと銃弾を持ってきたかったよ、ほんとに」
けれど、先程言ったように今以上に持ち歩くと動きが阻害されてしまうと。何かする度に消費するのは辛いものだなと、いつも通り思うのだった。
「しかしだとしても大丈夫なのかい? これから行く場所は全くの未知、星の外だと言うじゃないか。どれだけの道具をそろえようと足りるとは思えないが」
「其れに関しては行ってみない分からんが。まぁ、場合に因っては戻る事も考える、それだけの事だ」
「あぁ、そう言えば途中までならアリアドネの糸が使えると言ってたでござるな」
しかしそうなるとかなりの量のお金を使ってしまったローウェンはとても拙いのではないかと思わなくもないレフィーヤ。まぁ、彼の事だからそこをちゃんと考えて残しているだろう。まぁ、もともと彼の消費する要素は弾と宿代くらいなので大量に買い込んだだろうから弾の代金を考える必要が無いから必要な金銭はかなり少ないのだが。
部屋の奥、扉へと到着した彼らは迷いなく開く。差し込む光は酷く眩しく目を細め、そしてその先に在るものを見る。
そこに佇むのは一人の少女、アルコン。そしてその視線の先に在るのは光の渦。思わず何だあれはと見つめるレフィーヤ。他の四人もまた興味深げにその渦を見る。
と、そこで今気が付いたかのように振り返るアルコン。彼女は彼らの事を見て、ふむと呟いてから言葉にする。
「あぁ、来てくれたのか」
「勿論、というかあんなこと言われてこないとでも思ったのか? 俺たちは冒険者だぞ?」
「それもそうか」
と、頷くアルコン。そして改めて彼らの事を見渡して。
「では確認として改めて言おう。君たちに頼みたいのは私の護衛だ」
「別の星、新天地に至るまでの間だったよな」
「そうだ。母星との連絡が途絶え、航路はあれど船が無い。ならば星に行くには危険だろうとその航路を航路徒歩で進まなければいけない。だからこその願い、いや依頼だ。何分、私には戦う術がないのでな」
まぁ、その術が在るならば頼まないだろう。けれどそれを自覚しているならば何かしら憶えても良いようにおもえるが、まぁ何かしらの理由が在るのだろうとレフィーヤは思う。例えば、原初の闇関係の事で手一杯でそれどころでなかったとか。
「そして、其の依頼の報酬は」
「その新たなる地での、冒険…だろう」
「そうだ。不満は」
「在ると思うか?」
そもそも在ったならここに来ていない。なんというか彼女は聞く必要の無い事をよく言葉にする。勿論、悪い事だなんて思わないが、確認は大事だ。
「さて、では行こうか。準備は出来ているのだろう?」
「あぁ……それにしても」
「なんだ、私に何か言いたいことでもあるのか?」
「随分と楽しそうだと思ってな」
「ふむ、そう見えるか? いや、そうだろうな。その通りなのだから」
そう言ってアルコンは笑う。その表情はよく見るものだった。そう、自分たちが浮かべるそれと同じもの。それは詰まり。
「アルコンさん、いつから冒険者になったんですか?」
「しいて言うならば昔からか、何せ星から星へと渡り歩いてきたのだから」
「おっと、では大先輩か」
「だが経験で言えば君達には及ばないさ。何せ、自らの足で航路を進むのは初めてだからな」
「だからこそ」
「胸躍る、と言う事だ」
「生粋だな」
「お互いな」
アルコンの視線が、光の渦へと向かう。つられる様に彼等もまたそれを見る。
「…あの先か」
「そうだ。身を投じれば、目指す場所へと至る為の道へと至る」
「また謎技術だな。樹海磁軸と同じような物か?」
「そう違いは無いのは確かだ。ただ、行き先が完全に固定されているというだけでな」
「ほぉ……もしかしてアリアドネの糸とか樹海磁軸とかがどういうものなのか説明できたりするのか?」
「樹海に磁軸に関してはそうだな、説明に相当の時間を必要とするが。アリアドネの糸に関しては知らない」
「知らないのか」
「残念ながらな。それで、樹海磁軸の説明でも聞くか?」
「いや、自分で解明するさ」
「それでこそだな」
さてと、彼女は言葉にする。
「この先は世界樹の理の届かない領域。巣くうものはみな強大。細心の注意を払い進まねば、命を落とすことだろう……君たちは、言う必要の無い事だろうがな」
言って、アルコンは彼らを見渡し。足を踏み出す。
「行こう。新たなる星に向かって」
そして彼らは、光へと身を投じた。