世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百五十話

「そうして私たちは空の上、星と星とを繋ぐ航路へと足を踏み入れた訳です」

 

夜、星々の輝く時間。レフィーヤは、今までの冒険を目の前の少年に語っていた。本当は暇つぶし程度の積りが思ったよりも少年が楽しそうに、そして目を輝かせながら夢中になっているものだからついその気に成ってしまっていた。

 

「何やってんだ?」

「あ、ローウェンさん。もう交代でしたっけ?」

「いや、ちょっと用が在っただけだ」

「そうですか」

「で、何やってんだ?」

「あぁ、今までの冒険の話をしてたんですよ。詰まり…昔語り?」

「昔って程でもないだろ」

「其れもそうですね」

 

頷きながら、レフィーヤは目の前に座る。興奮して今にも叫びそうで、けれど夜だからか我慢していると分かる少年を見る。

 

「思ったよりも楽しいですよ。すっごい良い反応返してくれますし」

「あぁ、そう言えば冒険譚をよく読んでたらしいな。祖父作のらしいけど」

「でも、でたらめでは無かったですよね」

「俺からは何とも」

 

そこまで詳しくないのでねと、ローウェンは肩を竦める。まぁそれも当然なのだが。と、そこで漸く落ち着いてきたのか、しかしそれでも未だに目を輝かせながら少年は言葉にする。

 

「あの、あの! それでその、航路での冒険はどうだったんですか?!」

「あ、あぁ………あそこ、あそこでのは、そのなんというか」

「これと言って無かったぞ」

「え?」

 

そうローウェンの言う通り、これと言って語るようなことが無いのだ航路に関しては。いや確かにモンスターは強力だったが、其れは何時もの事だし。探索も上にいったり下にいったりと繰り返してばかりで語るのがとても面倒だ。あとはそう、航路の一部が消滅していて遠回りしなくてはいけなくなった程度の事しかなかった。

 

要するに聞く側も語る側もそこまで楽しめるものでは無いのだ。いや、少年ならば楽しめるかもしれないが。

 

「そう、何ですか?」

「ですね。これと言って主と言えるようなモンスターもいませんでしたし」

「楽しかったは楽しかったけどな。語るとしたら面白くないだけで」

「そうですね。語るには面白くないですね」

 

というか、すぐに語り終わってしまう。歩きながらモンスターを撃退していた。以上である。山も谷も皆無だった。

 

「そうですか。そういう事もあるんですね」

「世界樹付近以外は大したことは余り起こらないからな」

「そうなんですか?!」

「なんで驚いてんだよ。おい、レフィーヤなに吹き込んだんだよ」

「別に普通の事ですよ。侵入したF.O.Eを囲んでボコボコにした後、吊るし上げて火炙りにしていたら周りで踊り始めた一般住民たちの話とか」

「あぁ、在ったなそんな街。流石にどうかと思ったけどな」

「笑いながら参加しましたけどね」

「だな」

 

あれは楽しかったなぁ、なんて思い起こす。なんか少年の表情が引きつっているが仕方ない事だ。だって彼は一般人だし。まだ、だけれど。

 

それにしても、と。夜空を見上げながら思い、呟く。

 

「まさかって思いましたよ本当に」

「何の話だ?」

「ここがどんな場所か知った時ですよ」

「あぁ、なんか凄い表情してたなお前」

「そりゃそうでしょ。全く未知の場所かと思ったら知ってる人が居たんですから。驚かない方が可笑しいでしょう」

「まじかぁ!! って叫んだしなお前」

「オーバーロードの言葉を思い出して、其れってそういう事だったの?! ってなりましたからね……改めて考えるとオーバーロード知ってたって事ですよね」

「相変わらずオーバーロードがやばい」

 

何時まで経っても勝てる気がしないというかどうやったら勝てるのかと逆に訊きたくなる位だ。

 

「あの、一つ訊いても良いですか?」

「はい?」

 

と、少年が口を開く。訊きたい事、さてそれはなんだろうかと思いながら、視線で軽く確認するようにローウェンを見ると別に良いようだ。だから少年を見ながらレフィーヤは先を促す。

 

「どうやったらレフィーヤさん達みたいに英雄に成れますか?」

「英雄じゃなくて冒険者なんですけど」

「まぁ、やってきたことを考えるとそう言えれても可笑しくは無いのかもしれないが」

 

三回程世界の滅びを何とかしてるしねとレフィーヤは思う。が、少年の問いははっきり言って訊かれても困る事だ。

 

「もう一度言っておきますけど、私たちは冒険者です。英雄では在りません」

「でも」

「貴方はそうだと思って居る、って事でしょう?」

「はい!!」

「はぁ、じゃあ言いますけど」

「はい!!」

「私には分かりません」

 

そう答える他なかった。実際、分からないし、英雄のなり方なんて。

 

「そう、ですか」

「えぇ、申し訳ないとは全く思って居ませんけど一応謝っておきます。ごめんなさい」

「え、えぇー??」

「けど、そうですね。英雄にはっていうのは分かりませんけど。一つだけ言える事は在りますよ」

「なんですか?」

 

首を傾げる少年。なんだか可愛らしい其の仕草に、少し笑みを浮かべながら言葉にする。

 

「貴方は、故郷を飛び出して私たちに付いてきました」

「はい。その、迷惑だとは思って居ますけど」

「別にそんな事は無いから良いですよ。そして重要なのはそこです」

「え、そこって飛び出した事ですか?」

「そう、飛び出した。言い方は悪いですけど、まぁその通りだから我慢してください」

「……はい」

 

と、縮こまってしまう少年。やってはいけない事をしてしまったと思って居るのだろう。けれど。

 

「それを気にする必要は無いんですよ」

「え?」

「だって、ずっと同じ場所に居たら出来る事はたかが知れてますし」

 

そう言う意味では。

 

「私たちに付いてくるって、選択して行動した貴方はとても凄いですよ」

「凄い?」

「えぇ、案外少ないですからね。それが出来る人は」

 

レフィーヤは微笑みを浮かべながら言葉にする。

 

「貴方は英雄を目指して歩み進む事の出来る冒険者であると、貴方の思う英雄である冒険者の先輩の私が保証してあげますよ」

「レフィーヤさん」

「だから貴方は貴方の思うままに、ですよ。分かりましたか?」

「はい、はい!!」

「よろしい、さぁそろそろ寝た方が良いですよ?」

「分かりましたおやすみなさい」

「はい、おやすみなさい。で、ローウェンさんはっていない」

 

まぁ、まだ交代の時間じゃなかったしなと思いながら。もう一度、夜空を見上げる。さてまた暇な時間の始まりだ。警戒を怠ることなく、どうやって暇をつぶそうかと思い。考えてみる事にした。

 

一つ、これからの冒険の事。

 

一つ、それは少年がどの様な冒険をするのかを。

 

案外、悪くないかもしれない。考えただけでも心が躍るというものだ。あぁでは考えよう、思い浮かべよう。この知っているど何も知らなかった星で紡がれる二つのこれからを。

 

ギルド・フロンティアと、ベル・クラネル少年の冒険を。

 

 

 

 

 

「しかし、思ったより早い帰郷になったなぁ」

 

そんな呟きが、小さく響き溶ける様に消えた。

 

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