世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百五十四話

ラキア王国。アレスという神を信仰するファミリアであり、非常に肥沃な大地を有する緑豊かな国で在る。主神の気性故に軍事国家としての側面を持つその国の王都は、それはそれは立派な王城と城下町が存在する。

 

の、だが。

 

「………あの」

「なんですかリリルカさん?」

「その、訊きたいことが在るのですが」

 

そう、控えめに居ながらリリルカは遠くからでもよく見える王城を指差した。

 

「何で城から煙が上がってるんですか?」

「どこかの変態がやらかしたんだと思いますよ」

「…なんで城の一部が崩れ落ちてるんですか?」

「どこかの変態が吹っ飛ばしたんだと思いますよ」

 

実際、変態がなにかを吹っ飛ばすのは何時もの事だ。と、言葉にすればリリルカは頬を引きつらせて、視線を城から街へと向ける。

 

「その、なんか街も色々と可笑しいように思えるのですが」

「可笑しい?」

 

何がだろうと、レフィーヤも見渡す。見えるのは道を歩いている住民と巡回しているのだろう衛兵。それに以外にはヒャッハーしながら道を滑る様に移動している冒険者位しかいない。

 

ふむと、冒険者が止まれずに樽に突っ込んだのを見てから、視線をリリルカに向けて。

 

「いつも通りですよ」

「これが?!」

「そうですよ……あ、でも」

 

改めて見渡して、ある事に気が付く。

 

「冒険者は増えましたね」

「それ、どうやって判断してるんですか?」

「服見れば分かるでしょう」

「いえ、分かるでしょうって言われても」

 

分からないと言いたげに見渡すリリルカ。そして樽の残骸から這い出てきた冒険者を見てから暫くすると、あっと気が付いたように声を零す。

 

「レフィーヤ様が着ているのと似てますね」

「様? まぁ良いけど。で、服が似ているっていうのはその通りなんですよ。理由としては冒険者である事と、役割が分かり易いようにというものですね」

「成程…オラリオではそういうのは無かったと思いますけど」

「まぁ、あそこはファミリアで区切りが出来てますからね。そこまで気にする必要が無いのは確かですから」

 

ラキアにしても今までそれを必要としてなかったのは単純に冒険者で無かったというだけだし。

 

「そうなんですか」

 

と、何とか納得しようとしているのか何度も頷くリリルカ。そして改めてラキアの城下町を見渡して。

 

「…思ってたよりも、活気が在るんですね」

「オラリオに負け続けな割にはって事ですか?」

「あ、そう言う訳では」

「別に否定する必要は無いですよ。ぶっちゃけその通りだったので」

「え、えぇ?」

「ここに最初に来た時はなんというか、疲れ果ててるって感じでしたし」

「そうなんですか?」

「えぇ、勝った負けた関係なく戦うのって疲れますし。それの大規模版である戦争が疲れないなんて事は在りませんし。負けたらそれこそ精神的にきますからね」

 

そこに加えてラキアの主神が勝てなくても勝つまで戦えばいいのだ的な思想をしているのは、団長である国王も只管に神の言葉にうなずく事しかしなかった。だから、どれだけ疲れていようと戦い続けなければいけない、其れなのに全く勝てない。結果、どうなるのかは考えなくても分かるというものだ。

 

「それなら何で」

「さぁ? 私には理由なんて分かりませんよ。いや本当に、なんでこうなったのか」

「……何かしたんですか?」

「何故そんな疑うような視線を向けてくるのか。まぁ、でも何かという意味では確かに技術指南的な事はしましたね」

「技術?」

「えぇ。神の恩恵を必要としない、人が人のまま戦えるようになる技術ですよ。リリルカさんだって覚えれば使えるようになりますよ? そういうものですから」

「そんなものを知ったならすぐにオラリオに攻めてきそうなものですが」

「なんででしょうねぇー。私はただ言われた通り技術を教えた以外には冒険者としての魂に火を付けただけなんですけどねぇー。そしたら何故かヒャッハーする人が増えましたけどねぇー。なんででしょうねぇー」

「其れが原因でしょう。明らかにそれが原因でしょう!!」

「知ってますけど?」

 

その程度の事も理解できない程頭が悪い訳ないだろうと、レフィーヤはリリルカに言う。すると彼女は小さな体を震わせてから、肩を落とした。

 

「なんか、もう言うだけ無駄な気がしてきました」

「その通りです。理解が速くて結構」

「…そうですか」

 

酷く疲れた様子のリリルカ。その疲労の原因は勿論自分で在るのだと理解しているのでレフィーヤは申し訳なく思って……まぁ、居ないのだが。自分たちとの関わり方を教えているのだ、疲れるのはしょうがないと言えるだろう。

 

「それで、どこに向かっているのですか?」

「あぁ言ってませんでしたっけ? 変態の所ですよ」

「そうですか、変態の変態?!」

 

驚いたように立ち止まり大きな声で言葉にするリリルカ。そんな変態なんて大声で言って恥ずかしくないのだろうか。いや恥ずかしいのだろう、顔真っ赤だし。

 

「す、すみません。それその、変態というのは間違いですよね?」

「間違いじゃないですよ? どこからどう見ても変態で変人なキチガイですから」

「悪化した?!」

「まぁ、そう言いたくなりますよね。でも腕は確かなんですよね困った事に」

 

変態で変人でキチガイだからこそともいえるのだが。如何しても色々と投げ捨てた人は優秀に成ってしまうのだ。とてもあれだが。

 

「え、あのリリが一緒である必要は」

「残念でしょうけど在るんですよねこれが」

「そんな」

 

恥ずかしさから赤くしていた顔が青くなっていく。そんなに会うのが嫌なのかと。いやまぁ、そうだろうなとは思うけど。

 

「取り合えず、さっき貴女が言ったように何を言っても無駄ですから何を言われても適当に聞き流しておけばいいですよ」

「そうしないとどうなるんですか?」

「長時間拘束されるか……染まります」

「そま、染まる?」

「変態に成ると言う事ですよ」

「分かりました無視します」

「其れで良いと言っておきましょう」

 

まぁ、出来ないと思うけれど。あのキャラの濃さを無視できるとはとてもできないしと思いながらも口に出さず。目的の場所。ラキアの大工房に向かうのだった。

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