涼やかな風が頬を撫でる様に吹き抜ける。
やはり気持ちが良いものだなと思いながら、少しだけ乱れた髪を整える。
「すみません、私が勝手に空になんて約束しちゃって」
「別に構わんよ。こっちはこっちで気球艇の確認と依頼関係で出る積りだったしな。次いでというやつだ、それでちゃんと雇えるなら何の問題も無いだろう」
「ですかね」
視線を、じっと景色を見つめるリリルカに向ける。さて、何を思って居る事かと考えながら今は話しかけない方が良いかと改めてローウェンを見る。
「で、其の依頼ってどんなものですか?」
「ある植物を取ってきてほしい、という内容だ」
「植物ですか」
「そう、なんでも気球艇関連で必要らしいぞ」
「植物が?……それを何故私たちに?」
「単純に速いからだ。現状、まともに気球艇を扱える俺達だけだし」
「と言うか動く気球艇ってこれ以外在りましたっけ?」
「聞く限りでは幾つかあったって話だな」
「過去形なんですね」
「今は無いらしいからな。変態どもが改造しようとして吹っ飛んだらしい」
「本当に自由ですよねあの人たち」
「ある意味冒険者よりもな」
どうやったら自重させられるのかとラキアの偉い人たちは頭を痛めながら考えている事だろう。実際、逆で自重させない方が安全なのだが、まぁ言っても無駄だろう。偉い人が自重させずに好き勝手させるなんて選択できるわけもないし。
「因みに、速いからって言うなら急がなくちゃいけない理由があるんですよね?」
「それはな、それを求めてるのが変態どもだっていうのが理由だ」
「……あぁ、若しかして」
「城が壊れてたのはそれが原因らしい、だから出来る限り早くとの事だ」
其れなら仕方ないと頷きながら、さてと考える。
「その植物探してる間、リリルカさんは如何しますか?」
「気球艇に残ってもらう積りだ。ゴザルニも残るって言ってたしな」
「そういえば言ってましたね」
「あぁ、それにリリルカをって言うのもあるが気球艇を見てるやつも必要だしな。コバックやハインリヒよりはいいだろう」
「私は下手すると気球艇を吹っ飛ばしちゃいますからね」
「で、俺が残らないのは弾の良し悪しを確認したいから。そこまで劣悪って訳では無いんだがどうにも使っても無いと流石に正確には分からんしな」
「成程、それは確かに必要な事ですね」
「まぁ、そう言うの抜きにしてもさっき言ったようにゴザルニが残るって言ったからじゃあそれでってなったんだけどな」
確かにそうだったなと頷く。否定する要素も無かったからサクッと決まりすぎて忘れていた。と、そこでふと思いつく。
「それでも、もしもの時ハインリヒさんが気球艇に居なくて大丈夫なんですか?」
「……あぁ確かに真面に動かせるの今の所ハインリヒだけだしな」
「でしょう?」
「ふむ、確かゴザルニも動かし方自体は知ってたはず、だが」
「流石にその大きさのは動かしたことないでござるよ?」
と、正直に答えるゴザルニ。其れはそうだろうなと思いつつ、ならどうするのかと視線をローウェンに向ける。彼は少し考える仕草をしてから、ハインリヒを一瞥。それを見逃す事無く反応したハインリヒは、意図を読み取り頷いた。
「ま、直したばかりのをまた壊されても困るしな。今回は取り合えずハインリヒにも残ってもらうか」
「という訳で留守番させてもらうよ」
「なら拙者は如何するでござるか?」
「一応って事で」
「承知でござる」
こんな処かと、話が纏まる。出発前にある程度決めてたものから少しずれたがその程度、想定の範囲内だ。では改めてとローウェンに語り掛ける。
「それでその植物が取れるのは何処なんですか?」
「あぁそういえば言ってなかったか、ちょっと待ってろ」
と言いながら懐から地図を取り出すローウェン。それを軽く見てから床に置き、指差す。
「ここだな」
「えっと……あぁ、あそこの森ですか」
「森というには規模が小さいがな」
「へぇ、あそこで取れるんですか」
「らしいぞ。まぁ、正確な場所の情報も貰ってるから、すぐ終わるだろ。情報が正しければ在る場所は割と近いしな」
気球艇での移動ならばラキアから遠いという程でなく近い訳でもないその森。しっかりとと言っては何だがモンスターも発生する。確認などをするには丁度良いだろう。
「しかしあそこって事はもうそろそろ着いても……あぁ、やっぱりもう見えますね」
「降りる準備は?」
「それは何時でも大丈夫なようにしてあります」
「そうか、コバックは?」
「問題ないわよぉー」
と、少し離れた場所から声を響かせるコバック。後はと視線をハインリヒに向ける。
「流石に今の状態で準備は無理か」
「私が最低限の準備をしておきますねぇ」
「ごめんねー」
「謝るなら、ちゃんと降ろしてくださいねー」
「はいはーい。ちゃんと降ろしますよーっと」
そんなふざけている様に思える言葉を返しながら、けれどふざけてなどいないと長い付き合いから理解しているレフィーヤはならと、分かる範囲で準備をするのだった。