世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百五十九話

ラキア王国、王都城下町。そこにある多くの人々が行き交う道を歩くのはレフィーヤとヘルメスの二人。

 

「いやぁ、やっぱりあっという間だったな。やはり空を飛ぶと速い速い!」

「まぁ、気球艇に乗ってるのに歩きよりも遅かったら色々と問題だとは思いますけどね。其れこそ利点がそこまで疲れないって言う事だけに成りますよ」

「それでもアレスからすればこれ以上ない利点だろうね」

「其れは言ってましたね。疲れの無い兵士が空から襲い掛かるだけでオラリオに勝利できるとか何とか」

「勝てるかは分からないにしてもかなり危ういだろうね。しかしだからこそ分からない」

「何がですか?」

「あのアレスが、何故気球艇を開発できたのに攻めてこないのかと言う事だ」

 

あぁそう言う事かと頷きながら、それはとレフィーヤは答えた。

 

「その気球艇を作ってる人材が変態すぎて色々とやらかすから戦争どころじゃないからですよ」

「あぁ、そう言えば城が壊れてたりしたな」

「えぇ、それを修繕したら今度は別の場所を吹き飛ばし。それを直し終えたと思ったら出来上がった気球艇をさらに弄ってぶっ壊しと。そんな事を繰り返すものですから戦争どころではないみたいですね」

「……今、俺は初めてアレス相手に哀れんだかもしれない」

「それだけじゃなくさらにあれな事に成ってますからね。今となって神アレスはとても酒臭い事に成ってますよ? やけ酒的な意味で」

「そ、そうか。まぁ納得と言えば納得だな」

 

と、言葉にするヘルメスの視線の先には何かをやらかしたのか吊るされている冒険者の姿が見えた。時々、一般の通行人に落ちている棒で突かれている。

 

「一体、何時からここは世紀末に成ったのやら」

「何ですか其れ」

「いやこっちの話だ、気にしないでくれ。しかし、先程の話を聞いて疑問に思ったのだが」

「何がですか?」

「君たちの気球艇はよく無事だったなと」

「あぁ、しっかり動くならある程度は好きに弄っていいって言ってあるんですよ」

「それは大丈夫なのか?!」

「変に色々と縛るよりはずっと。あれをしてあれをするな、みたいな事を言うと反発はしませんけど良く分からない方向に暴走するので、その過程で色々と被害出るんですよね」

「そうなのか」

「そうなんですよ。まぁ、好きにさせるとは言ってもある程度は注文するんですけどな、守られることは殆どありませんけど」

「あぁ、もしかしてだが」

「はい、其の所為でパルゥム位しか操縦できない気球艇のままなんですよね」

「成程ねぇ、それでパルゥムの子を連れていたのか」

「まだ正式にって訳じゃないですけどね」

 

多分、すぐにも加わるだろうけど。さらに言えば雇うという形にしているが、望めばギルドに入ってもらっても良いような気もする。断る理由もないし。

 

「とはいえ、そうなったとしても解決しなくちゃいけない問題もあるんですけどね」

「と言うのは?」

「どうやって守るかって事ですよ」

「ふむ、確かに気球艇が何かに狙われて壊されたらそれまでだからね」

「えぇ、はい。リリルカさんにもある程度自衛の為の手段を教える積りでは在りますけど。其れだけでは足りない場合も考えておかないとですしね」

「自衛の手段……ねぇ。恩恵を得ていない君たちがかい?」

「何だったら今、証明がてら何かしてあげましょうか? 勿論、貴方に対してですが」

「いやいや、結構だ。恩景に関してはただ単に確認しただけの事だ。しかし」

 

と、レフィーヤの事を見るヘルメス。そして納得したように頷いて。

 

「やはり、ベル・クラネルの言っていた英雄とは君たちの事だった訳か」

「英雄ではなく冒険者なんですが」

「その返し、正しくだ。うーん、成程君たちがねぇ」

「そんな意外ですかね?」

「あぁ、何時だったか会った時はそんな話をしてくれなかったしね」

「あの時は衝撃が凄すぎてそれどころでは無かったので。お陰で貴方の事が嫌いになりましたよ神ヘルメス」

「可笑しいな、やっぱり嘘をついていない。何時からバグったのかな俺は?」

「バグ? まぁ、でも可笑しくは無いですよ。嘘ついてませんから」

「そうかぁ、悲しいなぁ!!」

 

なんて言いつつも笑顔を浮かべるヘルメス。欠片も悲しそうではない。なんて会話をしていたからか、目的の場所である外へと繋がる門が見える。

 

「と、もうか。やっぱり楽しく話しながらだと時間の流れが速いね」

「楽しい?」

「そこは嘘でもそうですねと言っていいんだよ? 俺の心がその方が傷つかない」

「じゃあ言っておきます。別にそうでもなかったと」

「ぐっは?! 傷つくなぁ、なんでそんなに俺の事嫌うのかな?」

「え、どうでも良くないですか?」

「容赦なく抉るね!?」

「まぁ、そう言う訳で気に成る事が在るんですが」

「流すの?! まぁ、仕方ない。で、なにかな?」

 

胸元を押さえながら、しかしやっぱり笑うヘルメス。まぁどんな表情を浮かべていても変わらないとレフィーヤは言葉にする。

 

「じゃあ訊きますけど。ベル君に関しては良かったんですか?」

「あぁ、其れに関しては良いんだよ。もとよりラキアの王都までの護衛だったし」

「と言う事は、私たちが仕事を横取りしてしまったと言う事ですか。追加料金貰っていいですか?」

「そこは申し訳なく思うところじゃないのかい?!」

「え、乗せてって頼んだの貴方と彼じゃないですか。何言ってるんですか?」

 

まぁ護衛の対象をより安全に、そして速く目的の場所まで送り届けるという目的を考えれば間違った判断ではないのだが。

 

「ぬー、払わなきゃダメか?」

「別にどちらでもいいですけど。良かったですねローウェンさんじゃなくて」

「彼だと如何なっていたんだ」

「財布の中身がほぼ無くなる思っていただければ」

「怖いな!?」

 

それはそうだろう。誰だって財布の中身が無くなるのは怖いだろう。人も神も関係ない事だ、それは。人外だって怖がるし。

 

と、そういえばと確認しなければいけないことが在るんだったとレフィーヤは思い出す。

 

「神ヘルメス」

「何かな?」

「これから向かうのはオラリオですか?」

「うん? 確かにそうだが」

「なら気を付ける事ですね」

「何を?」

「ダンジョンですよ。あれ、巨大なモンスターですからね?」

「――――――――――――――――………嘘、では無いみたいだな」

 

そうか、と小さく呟いてこれまで浮かべていた表情が消える。しかしそれも一瞬の事で。すぐにまた笑みが浮かぶ。

 

「成程、突如として発生した巨大な穴の正体はそういうものだったのか。意外な所で神々も知らぬ事実が明かされてしまったものだ。君たちが恩恵を得ていたら間違いなくレベルアップしていただろう偉業だ」

「あ、そうですか」

「軽くないかい?」

「偉業でも何でもないですから。そのモンスターを叩きのめしたわけでもないですし」

「それをしたら偉業どころではないが……しかし、ふむ。そうなるとオラリオも安全とは言えないか」

 

ならば、如何するかとヘルメスは考える様な仕草をして。

 

「うん、うん。そうだな、そうしよう」

「何をですか?」

「いやなにこちらの話だ。っと、そうだ。ありがとう、そんな重要な事を教えてくれて」

「別に重要でもないですよね。いやまぁ、今まで誰も気が付かなかった事を考えるとそうなるのかもしれませんけど」

「あぁ、そうだ。さっきも言ったがこれは偉業となる事だ。だからそれに為した君たちに対する何かを俺もしたいと思う」

「いや何かって」

「それはその時が来てからのお楽しみだ!」

 

では、急ぐとしようと。彼は駆け足気味に王都の外へと向かっていく。それを見ながら、レフィーヤは思うのだ。あ、これ若しかしてやらかしたかな……と。

 

まぁ、もうしょうがないと割り切ってしまおうと首を振り、仲間の居るであろう宿に向かって歩き出すのだった。

 

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