世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第十六話

第二迷宮に出現した怪物を退治せよ。

 

そんなミッションを果たすべく彼等、ギルド・フロンティアはかすみ屋に戻り準備を整えるのであった。尤も、レフィーヤは此れと言って荷物が在る訳でも無いの手持ち無沙汰の様子。と、荷物を取ってきたローウェンが何やらかすみ屋の女将であるかすみと会話しているのが見えた。どんな話をと近づいてみる。

 

「と言う訳で言って来るから、何時も通りでお願いします」

「はい、お気をつけて。荷物の方は出来る限り管理させていただきますので」

「本当に何時も通りの返事だな。まぁ、その方が良いのだけれど」

 

如何やら、丁度会話が終わったようで。振り返る様にして、レフィーヤが近くに来ている事に今。

 

「で、何の用だ?」

 

では無く普通に気が付いて居た様だ。なんでそんなにあっさりと気が付いたのかと思わなくも無いが。取り敢えずそれは置いて置き、問い掛ける。

 

「何を話していたんですか?」

「ん? あぁ、駄目だった時の事を少しな」

「駄目? 駄目って……若しかして」

「考えておかない方が可笑しいだろう? まぁ、其の積りは無いが、万が一そうなったら俺の集めて保管してもらってる素材やらなんやらは売ってしまって構わないって事を言ってたんだよ。宿関係に使うか、或は街に寄付するかしてくれってな。ま、女将は其の積りは皆無らしいけど」

 

言いながら肩を竦めるのを見て。レフィーヤは女将を見る。すると、微笑みながら。

 

「ええ、何時までも無事を祈り、当宿に戻ってきます事を願っておりますので。そうですね、願掛けの様なものですよ。駄目だった時にする様に頼まれた事をしない、だからまだ生きている…なんて」

 

不謹慎と思われても仕方のない事ですが、と。これには、レフィーヤは驚きしかない。まさかそんな事をと。ファミリア、仲間なら兎も角、宿の女将がそう言うとはと。オラリオの宿を詳しく知っている訳では無いから偏見でしかないかも知れないが。それでも驚きを隠せなかった。

 

「わたくし、いえ、わたくしたちこの街に住まう人たちは皆様に、冒険者の方々に助けられて此処に居ます。ですから、無事を祈り続ける事位はと、そう思っております」

 

流石に、分かり易かったのか、女将はレフィーヤにそう言った。と、何かを思い出した様に、少し失礼しますと言って、何処かに行き。そして言葉の通り少しと言える時間を待てば戻ってきた。

 

「言い忘れておりましたが、当宿にご宿泊いただく冒険者に武運長久を祈り、特典をご用意させていただいておりまして。貴女にはお渡ししておりませんでしたので。どうぞ、お納めください」

 

レフィーヤは差し出された物を見て、そして固まった。それは、何処から如何見ても。

 

「イト?」

「はい。アリアドネの糸と言います。使用する事に因って迷宮から安全に帰還する事の出来るアイテムです」

「アリアドネの……イト?」

「糸だぞ。まぁ、困惑するのも分かる。正直、なんでこれを使うと安全に帰れるのか全く分からんしな。あ、因みに使い方は端っこを持ってから伸ばす様にぶん投げる・・・・いや本当になんでだろうな?」

 

なんだその謎アイテムは、思いながらレフィーヤはアリアドネの糸を見る。やはり、糸、唯の糸。けれど説明の通りなら、謎の効果で帰還できるらしい。それが・・・三つ。

 

こんなに必要なのだろうかと首を傾げて。

 

「冒険には一つあれば十分かも知れません、ですが」

「いや必要だろ」

「そうね、アリアドネの糸の最低数は一つじゃないわ。二つよ」

「そしてそこからさらに念を入れて一つ持つ。此れが冒険者の鉄則」

「と、冒険者の皆さまはおっしゃられますので、三つ程用意させていただいております」

「はぁ」

 

そう言ったローウェンに、準備を終えたらしい二人が同意する。なんでと、思うのは普通の事である。いや、若しも無くしたり、使い物にならなく成ったりしたらと、そう言った事を考えれば普通の事だが。それにしては少々、その熱がこもっているというか。若干の恨みと言うか。そう言った物が感じられた。

 

「まぁ、レフィーヤが分からないのは仕方ない事だから、まだ気にする必要は無い。そう、まだな」

「そうね」

「いずれは修羅と成る事が分かり切っているとは言え、流石にね」

「えぇ?」

 

決定事項なのか。と、レフィーヤが思って。しかしと、糸を改めて見る。まさか、こんな風にあの夢と、昔の記憶と繋がるとは。思ってもみなかったレフィーヤだった。

 

尚、暫く後にこれを使えば戻れるのではと思って試して見たが駄目だったそうな。

 

 

さて、と、声が聞こえた。顔を上げるとローウェンが軽くメンバーを見てから口を開く。

 

「準備は?」

「大丈夫よ」

「問題なし」

「ん、レフィーヤは?」

「え?…あ、大丈夫です!!」

「なら良い。そんじゃ……」

 

 

「行くかね、怪物退治に」

 

 

 

 

 

 

そして気宮廷乗り場にて。

 

「第一迷宮でどこかの冒険者が人工壁を壊したらしい」

「……みたいですね」

「その所為で、構造が変わった上にフロアの地形が変わり、更には罠も発生したそうだ」

「……らしいですね」

「大変困ってる事だろうな。と言う訳でちゃんと加減を出来る様にならないとなレフィーヤ」

「…はい、頑張ります」

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