世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百六十話

「…よし、賛美しろ!!」

「イエェェ――――ッ!!」

「見事、実に見事!!」

「これ以上内でござるな!!」

「はっはっはっはっはっは!!」

 

「え、何ですかこれ? 何なんですかこれ?!」

「歓迎会だが?」

「これが?!」

 

人影の少ない酒場の中で叫ぶ様に声を響かせる手に果汁水を持ったリリルカ。まぁ、そうなるのも仕方ない。コバックはスクワットをしてるしハインリヒは三転倒立してる。ゴザルニに至っては吊るされたまますさまじい勢いで回転しているのだ。真面と言えるのは瓶の底を綺麗に切り落としているローウェン位だろう。一言で言うなら混沌だなとレフィーヤは瓶でジャグリングしながら思うのだった。

 

「まぁ、一回落ち着くか」

「はーい」

 

そう言われたならそうするだけだと瓶を落とさない様にキャッチしてからテーブルの上に置く。そしてそのまま席に座ると、続くようにコバックとハインリヒも座るのが目に映る。因みに視界の端では吊るされたゴザルニが止まれずに周り続けていた。まぁ、そんな事はどうでもいい事なのだが。

 

「という訳でリリルカ・アーデが正式に雇われてくれる事になった。はい拍手」

 

そして控えめに広がる手を叩く音。先ほどとは打って変わった彼らにリリルカは戸惑いを隠せない様だ。落ち着くように言われたからそうしているだけなのだが。

 

「じゃあ歓迎会のついでに報告会と行こうか」

「あ、その前に飲み物貰っていいでござるか?」

「はいどうぞ」

 

要求に答えて目の前に置いておいた中身入りの瓶を軽く吊るされたままのゴザルニに向かって投げる。彼女はかたじけないと短く告げると、口でキャッチしそのまま上を向くことによって流し込んでいく。相変わらず顎と歯の強さが尋常じゃないなと思いながらローウェンに向き直る。

 

「では私から。神ヘルメスを見送りした際にやらかしたかもしれません」

「何したんだよ」

「別に大したことじゃないですよ。ただダンジョンがモンスターだって言っただけですし。まぁそしたら露骨な反応が見られたので」

「成程……どうしようもない系の奴だな。取り合えず何かしらやらかされるまで放置しかないだろそれ」

「ですね」

「じゃあ僕からも一つ。やっとこれまでと同じくらいの効果を持つ薬が出来たよ」

「物が全然違うのに割と早かったな」

「頑張ったからね。と言う事でそこら辺の憂いは無くなったと思ってくれていいよ」

「そうかそうか。で、コバックとゴザルニは?」

「あたしは特にこれと言ってないわね」

「へっはほへほはふ」

「そうか」

「え、なんて言ったか分かるんですか?」

 

なんて相変わらず困惑気味に言葉にしながらレフィーヤを見るリリルカ。そんな彼女に対して頷いて返す。寧ろ分からない訳が無いと。そんなこと言われても彼女は困るだろうが。

 

「無いなら無いで良いとしてだ。俺からも言いたいことが在る」

 

とても真剣なローウェン。一体、何を言おうというのか、視線とレフィーヤの気も引き締まる。さて、何が在ったのかと視線と一緒に耳も傾けて。

 

 

「冒険がしたいッ!!」

 

 

相変わらずな事を口にした。

 

「ぶっちゃけもう無理! 未知へと挑みたいし強敵と相対して勝利したい!! そしてその先に在るものへと至りたい!! 端的に言えば冒険がしたい!!」

「まぁ、ダンジョンがあれだった所為で冒険と呼べるような事殆ど出来てませんしね」

 

採取に言った森も知っているし知られている場所だ。危険性もそこまででは無いF.O.Eみたいなの居たけど、其れだけだ。確かにこれでは冒険に全てを掛けているローウェンが叫びたくなるのも分かる。

 

「という訳で依頼の話をしよう」

「ほほぉ」

 

何がという訳なのかと、なんて事は聞かない。だってそう言う事だから。今は其れよりも依頼だ。その内容はどのような物だろうかと、地図を取り出したローウェンの指差した場所を見る。

 

「ここにそれなりの大きさの森が在る」

「ですね」

「伐採に利用されてる場所だな」

「そして、最近行方不明者が増えてる場所だね」

 

と、ハインリヒが言葉にする。そう、確かにその話はよく聞く。木材を伐採に言った兵士たちが帰ってこないらしい、と。

 

「と言う事は、今回の依頼は」

「その行方不明になった兵士の捜索、及び原因の排除だな」

「ふむ、そうなると出来るだけ急いだほうが良さそうですね」

 

もしも行方が知れなくなった兵士が生きていたなら、時間を掛けるほどにその命は零れ落ちていくことだろう。そういう意味でも気球艇での移動が出来る自分たちに声がかけられたのかと。そう思いながらレフィーヤは気に成ったことを口にする。

 

「で、その話が植物採取の依頼よりも後だったのは何故ですか?」

「単純に、あの時はラキアの兵士がもう調査捜索に向かってたからだな」

「其れなら納得ですね。で、その兵士たちが何事かあった上で帰還したことによって」

「今回の依頼に繋がる訳だ。さらに言えばその何事かは、恐らく原因と思われるもの、いやモンスターの所為って訳だ」

「それで原因究明でなく、排除な訳ですか」

「そうだ、が。俺的に重要なのはそこじゃない」

「と言いますと?」

 

「森の奥で遺跡らしきものを見たらしい」

 

その言葉に、自然と笑みが浮かぶのをレフィーヤは自覚した。

 

「……それって」

「其れらしいものが発見された事は今まで無かったそうだ」

「成程成程、詰まりまだ良く分からないと言う事で良いのかな?」

「そう考えても良いだろう。あぁ、全く変態どもの扱い方はまだまだなのに俺たちの乗せ方は分かってきたじゃないか本当に」

 

良いながら、ローウェンは笑い。

 

「で、この依頼だが……如何する?」

 

如何するのか、そんなものは決まっているだろう。

 

「勿論、受けましょう」

「僕も少し冒険したいと思ってたところだしね」

「同じくね」

「兵士を襲う何かとの対決、心躍るでござるな」

 

冒険者が、冒険を否とするなど、在り得ないだろう。さぁさぁ、冒険に出かけるとしようじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

「え? あの、え?」

 

困惑するリリルカを引きずる様に連れて行きながら。

 

 

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