木々生い茂るその森の浅い場所、そこでギルド・フロンティア一行は驚いた様子でそれを見ていた。今まで色々な場所を巡ってきた彼らだが、それでも驚かずにはいられないものが眼前に在ったのだ。
「……これ、樹海磁軸ですよね?」
「見間違でなければな。まぁこれを見間違いようがないが」
そうですよねと、レフィーヤは頷きながら渦巻く光の柱を、樹海磁軸を見上げる。まさか、これが在るとは思って居なかった。というか今まで目にすることが無かったから無いのだとばかり思って居たのだ。
そして、それを見ながらレフィーヤが思い起こすのはアルコンから聞いた話。
「確か樹海磁軸って分かり易い目印が必要だって話ですよね」
「大体そんな話だったな。詳しくは全く分からなかったが」
「さっぱりでしたね」
それでも重要な部分はある程度憶えている。先ほど言ったように磁軸を設置利用するには分かり易い目印が必要で在ると言う事、そしてその目印に最適な物が・・・世界樹で在ると言う事。
「在るんですかね、世界樹」
「さてな、別に世界樹で無ければいけないなんて事は言って居なかったと思うが」
「でも、これが在るならまず間違いなく在るとは言ってたよね」
「そうだな、確かにそう言ってたな・・・・と言う事は」
「ある、と思って行動した方が良いですよね」
「だな」
しかし、だとしたら不思議に思えるのは今まで世界樹などという目立つ物を見つけられなかった事だ。若しかしてもう無いのかと思い、いや或いは隠されているのかもしれない。そう思考し、ローウェンがレフィーヤの頭を軽く叩く。その衝撃のお陰で深く考えてしまっていたことを自覚する。
「あぁ、すみません。ありがとうございます」
「気にするな」
言いながら軽く手を振り、空いている手で地図を取り出すローウェン。現地の状態と地図とを比べているのだろう。正直、自分がそれをやりたかったと思うレフィーヤ。まぁ、考え事してた所為で遅れたのがいけないのだと言い聞かせて堪える。
「……ちょっと変わってるな」
「どこがですか?」
「ここ、地図が正しければ通れる道が在るはずなんだが」
と、指を地図から外し、そこを差す。複数の倒木が重なる様にして壁の如く在る場所を。
「あぁ、あそこ普通に使える道だったんですか。てっきり何かしらの理由が在って使えない様にしたのかと」
「明らかに人の手でされたって感じでは無いけどね」
「力技でって感じよね」
「適当にそこら辺に生えてるのをへし折っておいたって感じだな」
「…で、如何しますか?」
「そうだなぁ」
と、またも地図を覗き込んで。
「まぁ、無理してまで通る必要があるって訳でも無いな。幾らある程度急ぎとは言え、それが過ぎれば碌な事に成らんし」
「ちゃんと見て回らないと見つかりませんしね。見逃しは駄目ってやつですよ」
「探す様に言われてるしな」
「という訳で地図を! さぁ地図を私に! さぁさぁさぁ! 私に!」
「必死だなおい」
「勿論ですよ! 地図を描くのは辛い物を食べる事の次に好きなのですから」
「あっそ、まぁ駄目という理由も無いから良いが」
「ひゃっほい!!」
「あ、因みにだが」
「なんですか?」
「冒険は?」
「一番に決まってるでしょう」
何を分かり切っていることを訊くのかと思わずローウェンを見る、と彼は笑っていた。
「本当に、どうしようもないなおい」
「どうしようもない人のトップが言えた事じゃないですよね」
「そうだな」
頷きながら地図をレフィーヤに投げるローウェン。軽く受け取りつつさてと、何の問題も無く進む事の出来る道を見る。
「獣道だな殆ど」
「モンスターとモンスターに気を付け乍らでござるな」
「分かりにく!」
「やっぱり、ちゃんとした区別がつくようにしたいねぇ」
「そういえばラキアの兵士が魔石を持ってない方のモンスターの事魔獣って呼んでたわよ」
「じゃあそれで、違和感凄いが取り合えずそれで」
「……ふと思ったんですが」
「なんだ?」
「どっちもモンスターである事変わりないですよね?」
魔石が在るかどうか、それだけの違いだ。其れにしたって急所をぶち抜くという意味では変わらない。そしてそれを聞いたローウェンは、ふむと少し考える様な仕草をしてから。
「はい、この話終了。行くぞ」
「でござるな」
「無駄な時間の使い方をしてしまった」
「急ぎましょうか」
「そうですね。誰かに遺跡を探検されてしまう前に」
「うん、本音は口にしない方が良いんじゃないかなレフィーヤ?」
「おっとうっかり」
気を付けなければと思いつつ、一応行方不明の兵士に関しても忘れてはいない。重要度で言えばそちらの方が上なのだから。でも気に成ってしまうのは仕方ないじゃないか、冒険者なんだから。
「それじゃあ、これ以上レフィーヤの本音が零れる前にさっさと依頼を済ませるぞ」
「出来る限り地図を埋めながらですからね」
「まぁ、あれだけどね」
「なんでござるか?」
「その元凶を先に潰してしまった方がゆっくり地図を埋められる気がするんだけどね」
「それは確かにそうね」
「と言う事だが、如何する?」
そう問いかけられて、レフィーヤはふっと微笑み。
「速攻で見つけ出してぶちのめしましょう」
勿論、慢心も油断も抜きでだ。レフィーヤは今、地図を描くのだと燃えていた。