世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百六十四話

獣を討伐した事によってか、急速に森から殺気が薄れていくのを感じながら首を切り落とされた獣を見る。

 

「動物にも居るんですね。頭のおかしいやつって」

「同じ生き物だかな」

「範囲が広すぎる気もするけど、取り合えずこれで依頼は達成かな?」

「行方不明者の捜索も一応依頼の内に入るのだが・・・・居なかったしな」

「そもそも、あれが人を生かしたままにするとは思えないんですが」

「そうだな。さてじゃあ……うん」

 

少し考える仕草をしてから、ローウェンは肩を竦める。

 

「見つからなかったと言う他ないだろう。元凶と思われるのも討伐したし、文句は無いだろう。というか人探しするには数が足りないよな」

「まぁ、生きてたとしたら一か所に留まるか、動き回りますからね」

「で、どちらなのか分からないのだからやっぱり人手が居ると」

「仕方ないですね」

「あぁ、仕方ない事だ」

「じゃあ」

「遺跡調べてから帰るぞ」

 

思わずガッツポーズをしたレフィーヤは悪くないだろう。ずっとそれを楽しみにしていたのだから。行方不明者が行方不明のままであるのだから喜んでいる場合では無いのだが。見つからないものは仕方ない。そこら辺は割り切らなければいけないのだ。

 

「では遺跡に向かいましょうか。見たという場所はこの奥ですか?」

 

と、レフィーヤが指差すのは三体のモンスターが居た場所の奥、獣道であるが続いている様に見える。

 

「いや、地図に大体の場所が描かれていた筈だが」

「あ、そうでしたか。では確認を」

 

自ら描いた地図でなく、渡された地図を広げてみる。さてと視線を滑らせてそれらしきマークを見つける。それと、自分の地図とを重ねて。

 

「成程」

「どこ等へんだった?」

「奥じゃなくて、もう少し手前ですね」

「よく考えたら、兵士がここまで奥に来たとは言ってないものね」

「まぁ、此処まで来てそのうえで在れと出くわしてたなら依頼に捜索を加えたりしないだろうからね」

「どうしますか。戻って遺跡に行きますか? それとも」

「…一回奥を見ておくか、仕方ないと言ってもちゃん奥が在ったけど見ませんでしたが見つかりませんでしたなんて言う訳にはいかないしな」

「其れもそうですね」

 

地図を仕舞いつつ、ローウェンの言った当然の事に頷いて見せる。幾ら遺跡に速く行きたいからといってしていい事としてはいけないことが在るのだ。必要なら自重できる、それが冒険者である。ただし依頼関係に限るが。

 

そして奥へと踏み込んだ結果、報告すべき内容が決まった。

 

 

 

嫌な事実を報告しなければいけなくなった彼らは、しかし速攻で切り替えて遺跡へと向かっていた。獣道を進みながら。

 

「あとどの位だ?」

「あぁ……ここら辺ですね」

「成程」

「でもそれらしいものは無いですね、といっても大まかなというだけですからそこに着いたらって訳では無いんでしょうけどね」

「というかこんな道と言えるのか分からないのも地図に描き込んでくのね」

「当たり前でしょう」

 

通れる場所が在る、ならばそれを描き込んでいかなければ完全な地図とは口が裂けても言えない。だが、それは其れとしても、普通なら描き込むようなものでは無いのも確か。だから、今まで遺跡は発見されなかったのかもしれない。其れこそ道など関係なく我武者羅に逃げ回りしない限りは。なんて事を考えていると、少しだけ開けた場所に辿り着き。

 

そこに、朽ち果てている建造物が在るのが目に映る。

 

「おぉ、遺跡だ」

「ですね」

「これは、かなり古いんじゃないかなってこれは」

 

と、近づいて気を付け乍ら軽く撫でる様にそれに触れるハインリヒは、ある事に気が付く。

 

「えっと……絵かなこれは?」

「絵ですか」

 

はて、どんなものが描いてあるのかとレフィーヤも近づいてそれを見る。かなり風化してるた為か、殆どどの様な物なのか判断できるような状態では無いが。一つだけ、しっかりと見る事の出来るものが在った、それは。

 

「……なんですかねこれ。太陽?」

「え、タコじゃないかしら?」

「なんでこれ見てタコなんだよ」

 

そうコバックに対して疑問の言葉を口にするローウェン。その疑問も尤もだと、描かれているそれを改めて見る。円形に幾つもの何かが飛び出ている絵。いやまぁ、見ようによってはタコに見えなくも無いが。正直先ほどレフィーヤ自身が言った太陽の方がそれっぽい気がする。

 

さてと、そんなに可笑しなことを言っただろうかと首を傾げながら別の場所に向かうコバックを横目に、これがどの様な意味を持つのかを考える。

 

「信仰的な意味でしょうか?」

「妥当といえば妥当だが、なんか違う気がするな」

「何故?」

「勘」

「なら仕方ない」

 

といっても所詮は勘だ。断言する積りは無いのだろう。それを言ったらレフィーヤの言った事もそうなのだが。

 

「他に何か、そう伝えたい事とかなら……厄災?」

「日照りの恐怖とか?」

「或いは、何か襲われたとかだな」

「なにか、ですか」

 

その言葉に、それが何かであることを前提に見る。

 

「…タコですね」

「あぁ、タコだな」

「タコかぁ」

「そういえばタコ焼きなる食べ物が在ると聞いた事あるでござる」

「唐突に食べ物の話振りますね」

「ぬん? 食べ物の話では無かったのでござるか?」

「違いますよ。で、ゴザルニさんは何か見つけましたか」

「拙者はこれといって」

「そうか」

「ただ何かを放り捨てようとしてたコバック殿からこれを奪い取って来ただけでござる」

「良くやった」

「素晴らしい働きですね」

「帰ったらタコ焼き作ってあげるよ。材料が在ればだけど」

「やったぁーでござる」

 

腕をあげて喜びを表現した後手に持っていたそれをローウェンに渡すゴザルニ。涎が零れている事からすでに頭の中はタコ焼き一色なのだろう。材料が無かったら作れないのに。

 

まぁ、それは其れとして果たしてコバックは何を見つけたのだろかとローウェンの手の中に在るそれを覗き込むと。

 

 

それは綺麗な緑色の石板だった。

 

 

 

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