ラキアに帰還した一行が森で在った事を報告してから凡そ一週間は経過したある日の事だ。
「は? 依頼?」
「そう! その通りなのですレフィーヤ氏!!」
ギルド・フロンティアが部屋を借りている宿の食堂にそのような言葉が響く。口にしているのは何故か半分だけ残っていた髪の毛を縦ロールにしているエヴィー・ショートという変態エルフである。
「依頼って言われても。今私しかいないんですけど……まぁ、取り合えず話は聞きますから座ってください」
「感謝!!」
言いながら椅子を勢い良く引き宙返りしてから座るエヴィー。何故、宙返りしたのか。問いかけた処で大した答えは返ってこないと知っているのでレフィーヤは話を続ける。
「で、依頼の内容ですが。詳しく訊いても?」
「もぉちろん!! そなわけでこれを見てくれるかねレフィーヤ氏!!」
と、勢いよく手を動かして……縦ロールに突っ込み地図らしきものを取り出すエヴィー。何故そこにしまったのか、それも訊かずに広げられたそれを覗き込み彼の指差した部分を見る。
「…森ですね」
「そうですとも!! ですがただの森では在りません!!」
「と言いますと?」
「エルフが住んでいる森なのです!!」
「はぁ、それで?」
「反応が鈍いですぞぉ!!」
「言われましても」
森にエルフが住んでいるのは別にそう珍しい事では無い処か割と普通なのではと思うレフィーヤ。だがと、思う事もある。はて、この森にエルフが住んでいるなどという話を聞いた事が無いからだ。
「では飛び切りの情報をお伝えしましょう!!」
「わーたのしみですねー」
嘘ではない、ただ少し面倒に成っているだけだ。
「なんとこの森に住まうエルフは!! 結構前からこの森に住んで居るのです!!」
「…………で?」
「視線が冷たい!! でもこのエヴィー。挫けませんよ」
「そうですか」
「でも気に成りませんか? 何故、この森に住み続けるのか。まるで何かがある様では在りませんか」
「ほぉ?」
少し、処ではなくかなり興味深い。だが確かにそう言われてから見れば、そうだ。山に囲まれた深い森。モンスターもいるだろう事を考えると、住みやすい場所というよりは守り易い場所と言えるだろう。まぁ、モンスターにその何かが壊されるという可能性を考えなければだが、それも環境さえ整って居れば問題ないだろう。
「否定は出来ませんね」
「でしょう?」
「ですが確信は無い、違いますか?」
「ごもっともです。なのでもう一つ面白い情報を零すとしましょう」
耳を傾ける。彼はレフィーヤの事を、いや彼女から話を聞くだろうギルド・フロンティアの全員を乗せる積りなのだと理解したからだ。
「実はここ、先程言ったエルフが住んでいると言う事以外よく分かっていないんですよね」
「ほぉ? それで」
「かといってそれは別にそのエルフが排除しているからという訳でなく森が天然の迷宮の様なものに成っているからでしてね」
「成程成程。それは詰まり?」
「言ってもよろしいので?」
「どうぞ」
ではと、エヴィーは少し間を置いてから。
「この森には未知が溢れているのです!!」
「実に魅力的じゃないか。冒険のし甲斐が在りそうだ」
そう言葉にするのは何時の間にか隣に座っていたローウェンだった。全く気が付く事の出来なかったレフィーヤ、やはり人外だなと一瞬だけ思って、未知という言葉の魅力に抗えず消えてなくなる。
「では改めて話を聞こうか。どうせ俺が来るのを待ってたのだろう?」
「お分かりで?」
「ぶっちゃけそう言った類の話をされて一番食いつくの俺だし」
ですよねと言葉にすることなく頷く。今まさに未知という言葉を聞いて飛びついた訳だし。まぁ、冒険者ならみんな同じような反応するよね、というのがレフィーヤの感想である。オラリオの冒険者はどうかは知らないが。
「では改めて依頼の内容を。と言いましても単純な事ですよ。ここに住まうエルフを探して、少し木々を分けてもらえないか交渉してほしいのですよ」
「交渉、しかし木か……ここのは特別と言う事か」
「えぇ、はい。昔森を調べようとした者たちが結局何も発見できずに帰還した際にこれだけでもと持ち帰った枝が大変良質な魔力を帯びているものだったそうで。魔力を帯びたそれは杖にするにはこれ以上ないもの。それが在ると知ったこのエヴィー!! ふとこれを使えば気球艇をより良き物にすることができるのではと思ったのです!!」
「それで、依頼をしに来たと」
「はい!!」
瞳を輝かせながらはっきりと言葉にするエヴィー。既に顔に木を弄りたい気球艇を改良したいと書いてある。なんとも分かり易い事でと思うが、まぁ分かり易いのはこちらも同じなのだが。
「成程、未知が在りその上で気球艇も良くなるかもしれないと。確かに断る様な事では無いな」
「でしょう?」
「まぁ、一応話し合ってからだけどな」
「そうですね」
「だがそれは其れとして一つ問題が在る」
「問題?」
「リリルカの護衛」
「あぁ……そういえばベル君はもう出ちゃったんですよね」
ちょっと北まで行ってくると笑顔で走り去って行ったベル・クラネルの背中を思い出しつつ呟く。彼が居ないとなると考えなければいけない。
それを解決しない事には向かう事は控えた方が良いだろう。未知といっていい場所なのだからなおさらだ。何とかしないといけないと思って居たことが早々に立ちふさがったなと思いながらさてと冒険者たちを思い出しながら如何したものかと考え。
「話は聞いたぞ!!」
解決方法が自分からやって来た。