第二迷宮。翠玉ノ華段と呼ばれるそこは美しく輝く地下水で満たされた石灰棚で発見された場所だ。そして、石灰岩の採掘場として利用されているとは言え迷宮。そして、当然の様に現れるモンスターは第一迷宮の其れよりも強力であるの、だが。
「はい」
「ほいほい」
「よいしょっと」
驚く程、簡単だった。
いや其れは正確ではない。そう、別に第二迷宮が思ったよりも簡単だった訳では無く、単純に仲間が思っていた以上に凄かった。それだけの事だ。
「ヤンマ」
「はいはーい」
短く、モンスターの種類と接近を告げるローウェン。それに軽くコバックが返す。何時の間にか驚く程接近していたトンボの様なモンスター。モリヤンマの突進を盾で軽く流し。
「よい―――――しょ!!」
其の儘踏み込み、かちあげる様にシールドバッシュ。衝撃から、モリヤンマは飛んでいる時とは違う浮遊感に襲われた事だろう。尤もそれを感じている時間は長くはないが。
―――――――――タンッ。
銃声。放たれた銃弾は、驚く程正確にモリヤンマの羽根の付け根を撃ち抜き、羽根は宙を舞う。行き成り、羽根が一枚失われ、安定感を失うモリヤンマ。それでも、何とか距離を取ろうとするそれにコバックは更に踏み込んで、一閃。それでおしまいだ。
「んー、やっぱり良い腕してるなぁ。仲間にして大正解だったぜ!!」
と、コバックを称賛する様に言葉し、同時に背後に現れたシャインバードを視線を向ける事無く頭部を撃ち抜くローウェン。如何いう事なのかと。
「良いね優秀なパラディンって、治療が必要な人が減るし、本当に楽でいい」
そう、何度も頷く森ネズミを手にした槌で叩き潰したハインリヒ。槌にくっ付いているモノを取って欲しい。
「ふふん。言ったでしょう? 後悔させないってね、有言実行って事よ。あ、でもハインリヒちゃんは其の時居なかったのよね」
なんて、コバックはボールアニマルの突進を受け止め、其の儘上から盾で押し潰してから言った。盾って武器だっけ。
やる事が無いと、レフィーヤは思った。
だが其れ以上に彼等の連携の淀みなさに驚いた。まるでずっと一緒に戦い続けてきたかの様だったのだ。どのようなモンスターがどの様な時に現れようと、個人でできるならばさらりと対処し、苦手とするモンスターが出れば短く言葉を交わして協力して速やかに排除した。もう一度言おう、レフィーヤはやる事が無かった。しかし、其れは今はという意味で。
「! 爆弾カズラよ!」
「レフィーヤァ!!」
「ウェ?! は、はい、行きます!!」
声に驚きながらも、印術を用意する。その印は、氷槍。驚く程簡単に生み出された氷の槍を、杖を振るい打ち放つ。目標は、風船の様な植物のモンスターの爆弾カズラ。揺蕩うようにゆっくりと近づいて来るそれに向かって氷の槍は風を切る様に突き進み、爆弾カズラに大きな穴をあける様に貫いた。衝撃からか幾らか後方に向かって跳ねる様に転がり、やがて止まった。
「……大丈夫そうね」
「あぁ、焦るわぁ。しかしレフィーヤの印術の威力が高くて助かったわ、いや本当に」
「そうだね。まさかローウェンの弾丸が貫通して其の儘突っ込んでくるとは思ってなかったしね」
「いや、それに関しては…何というか。植物系のって何処を撃てば止まるんだって話で」
「でも、属性弾が在った筈よねガンナーって」
「あれな…あれ幾らすると思う? 冒険者値段で五百enだぞ?」
「あぁー…それはー、うん」
「必要な時以外は使えないわね」
「だろう?」
そんな会話を聞きながら、ふぅっ、とレフィーヤは息を吐いた。
今、自身が倒したモンスターの死骸を見る。爆弾カズラと呼ばれた其れ。最初に現れた時は、ローウェンが対処した。したのだが、先程の会話の通り、放たれた其れは貫通したにも拘らず、接近。爆弾の名に恥じぬ自爆を見せつけてくれた。幸い、レフィーヤ等後衛では無くコバックに対してであった為に被害は最小限で在ったが。
「取りあえずモンスターは居なそうだから先に進むぞ」
そう言ったローウェンに向かって視線を向けて頷き。それを見て歩きだす彼等に付いて行くように彼女も又歩きだした。
さて、どれ程時間が経っただろうか。いいや、その様に言う必要が在る程経過してはいないかも知れない。
最初に気が付いたのは、やはりローウェンで在った。ふいに顔を顰めて、何かを探す様な仕草をしはじめたのだ。
「どうかした?」
何かを探して居るローウェンに気が付いたハインリヒは、壁に叩き付けたベノムスパイダーを見ながら問い掛ける。いや、と短く答えてからそう言えばと。
「たしか此処って、七階層以上が発生した事無かったよな?」
「ん? あぁ、そう言えばそうだね」
「其れが如何したのよ?」
「っで、今居るのが」
「……六階層ですね」
そう言う事かと、レフィーヤは気が付き。同時にもう一つ気が付く。何か、音がする事に。モンスターが近づいて来る音よりも、もっと重い音が。それは巨大な何かが大地を踏み締めている様な。
「此処に来るまで、怪物と言える様な奴は居なかったわよね」
「って事は……あぁ、そういう」
「だろうねぇ」
「じゃあやっぱりこの音って」
「下の方から響いてる感じだから。まぁ、間違いないと思って良いだろうな」
言いながら、音に近づく様に歩みを進める。しばらくすれば下へと続く階段が在り。そして音は、振動を伴って伝わってきている。レフィーヤは思わず息を呑み。
「じゃあ、行きますか」
それでも、進み行くと彼等と共に。
レフィーヤは足を踏み出した。