「詰まり攻撃はすり抜けたのではなく、単純に当たらなかったというだけなのでござるか」
「大体そんな感じだろうな。そうでなければ一方的に攻撃される訳ないしな」
「でもまぁ、すり抜けたと思っても仕方ないですよこれじゃあ」
そう、言って手の中に在る魔石を見る。目を凝らすという程では無いが注意して見なければ分からない程小さなそれを。これを狙って攻撃するのは相当難しいだろうなとレフィーヤは思う。まぁ、ローウェンは除くが。
「で、増える事に関してはどうやってだと思いますか?」
「知らん」
「ですよね」
「流石にそれはな。一番最初に出てきたモンスターを見てみない事にはな。どうにも、それ以外は増えないとか言ってたしな」
「聞いた話なら、ですけどね」
「やらなかっただけという可能性もあるでござるからなぁ」
おこなってこなかった出来ないのだと考えるのは余りに危険だ。出来ると考えておいた方が良いだろう。
「しかし、魔石のモンスターもまた面倒なのが居るんだな」
「私も吃驚しましたよ」
「と言う事はオラリオの迷宮にはこれと同じようなモンスターは居なかったと言う事でござるか?」
「知ってる範囲では、ですけどね」
「どこまで続いているのかも分かってない……と言う事に成ってるらしいな」
「えぇ、そう言う事に成っていますね」
「隠してる可能性が無きにしも非ずという奴でござるからなぁ」
「まぁ、本当に知られてない可能性の方が高いといえば高いんですけどね」
神と名乗ってる割に色々とあれだしと、思い出しながらレフィーヤは思う。と、何やらコーロが何とも言えない表情で見つめていることに気が付く。
「如何したんですか?」
「いや、これから戦いに赴くというのに変わらないのだなと、そう思っただけだ」
「油断も慢心もしてませんよ?」
「それは先程の動きを見れば分かる」
「先程……あぁ、あの会話しながらモンスターをローウェンさんが撃ち抜いた時の事ですか」
「そうだ」
「流石に彼はちょっと別物というか。会話しながら見向きもせずに急所を撃ち抜くのは私にはできませんよ」
「拙者もでござるな」
「見ないで攻撃が出来ない訳では無いけどな」
「そうですね」
出来るとかなり楽なのだとレフィーヤは頷く。相手が勝手に奇襲が成功すると思ってくれるからかとても当たり易く成るので便利なのでよくやるのだ、見ずに攻撃を。
「……冒険者というのは皆そうなのか? 聞いた話と随分違うが」
「どうなんでしょうね? まぁ、私達みたいなのはオラリオでは異端でしょうね」
恩恵を得ていないし。寧ろ冒険者として認められないかもしれない。
「ところで、聞いた話というのはどういう事ですか? 誰かあの村に訪れるんですか?」
「あぁ、時々であるが巨躯の男が聖地を見に来るのだ。其のついでにという訳では無いが外の様子などを訪ねるのだ」
「成程」
それで問題なく共通語を話せたのかとレフィーヤは納得する。自分たちが最初で無かったのは少しどころでなく残念だが、言葉が通じたので幸いとしておこう。悔しいがそう言う事にしておこう。
「しかし、そうか。話に聞く冒険者とは汝らは違うのか」
「ですね」
まぁ、自分達みたいな冒険者が基本となったらそれこそアスラーガである。一日十人は吊るされている冒険者を見る事に成るあの魔境の如くなるのは必然となるだろう。まぁ、今拠点にしているラキア王国は絶賛そこに向かって爆走中なのだが。
「ところで、良かったのか?」
「何がだ?」
「コバック殿とハインリヒ殿を置いてきてだ。油断も慢心もしていないのは分かったが、単純に戦力が少なすぎるのではないだろうか? 我を含めても四人。我らが束に成って敵わなかった影にたったこれだけで勝てるとはおもえない」
「其れに関しては大丈夫だ」
「……何か策が在るのか?」
「まぁ、策と言う程のものでは無いんですけどね」
情報が少なすぎて余り細かい策を考えてもしょうがないというのもあって、とても単純な物に成ったのだとレフィーヤは語る。
「そ、そうか」
「で、なんであの二人を置いてきたかといえばハインリヒは治療してコバックはもしもの時の為にって事だな」
「そうか……感謝する」
「必要ない。ぶっちゃけ人が多くても邪魔なだけっていうのもあったしな」
「はっきり言うな」
さらに言うとゴザルニも別に来る必要が無かったりするが、村に居てもこれといってやる事が無いという理由でついてきたのだ。
と、コーロの足が止まる。そして彼女の視線の先に在るのは、何かを囲う様に存在する壁と一つの門。その先が、彼女の言っていた聖地なのだろう。
「……良いのか?」
「それはどういう意味でだ」
「これは、我らの問題だというのに、汝らに託してしまって」
「自責の念ってやつか」
「……あぁ」
「なら気にするな」
「どうせ、は? とか声零すことに成るだろうしな」
「何故だ」
「あ、このコートを着といてくださいね」
「何故だ」
コートを手渡され、そう零された声を聞き流しながら、門を開く。目に移り込むのは大量の影が揺らめき蠢く光景。そしてその中心にまるでドレスを纏っているかのような一回り大きな影が一つ。
それは女王の如く影を侍らせながら、ゆっくりと彼らに向かって視線を向けて。
「吹雪の大印術」
一瞬にして、氷像と化した。