世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百七十三話

かつて、彼の地に空より現われた昏き神は世界に多くの禍を齎した。

 

数多の命を呑み、その恐怖を糧とした神は。

 

しかし、楽園を守護せんとする巨人と相対し。

 

深き深き地の底へと封じられた。

 

巨人は奪われた地に命を与え、眠りについた。

 

生まれ出た新たなる命は。

 

深き深き地の底へと続く穴に蓋をした。

 

 

 

 

 

「やっぱり昏き禍の神ってオラリオの迷宮のあれですよねぇ」

 

なんて、レフィーヤは呟きながら気球艇の上から辺りを眺める。そう、どう考えても。などとは言う積りは無いが。高確率でそうなのだろうと思って居る。他に当てはまりそうな場所ないし、今の所はだが。

 

そして、そうだったとするならば。それを巨大な穴に封じたとかいう巨人も存在するわけで。レフィーヤ的には、其の巨人もかなりあれな存在で在る気がしていた。

 

今までの経験的な意味で。

 

まぁ、だからと言ってそうだと決めつける積りは無いレフィーヤは、さてと切り替える様に体を解す様に動かしてから視線をぐったりしながら何かを呟いているアスフィに向けた。一体、何を呟いているのかと思い少し近づいてみると。

 

「おかしい、モンスターがこんなに強いなんておかしい。あれ、ここ外? ダンジョンとそんなに変わらないけど……外? 外ってなんだっけ? ダンジョンの中が強くて外も強くて…あれ?」

 

どうやら思考が迷子に成ってしまって帰って来れていない様だ。しかし下手に弄っても駄目だろうなと触れないで置くことにしたレフィーヤは其のまま横を通り過ぎて、操縦しているリリルカの横に座る。

 

「何の用ですか?」

「いえ、見張りもローウェンさん達がしてるのでとても暇だったので。これと言って意味も無くここに座ってます。色々と話しかけるかもしれませんが反応してくれると嬉しいです」

「じゃあ超適当に返します」

「キチガイへの対処がちゃんと出来てますね」

「嫌でもかかわる事に成りますからね」

「それは良かった」

 

自分でキチガイとかいうのか、なんて返さない当たり本当に慣れてきたのだなとレフィーヤは思う。まぁ、だからどうしたと操縦の邪魔にならない程度に喋りだす。

 

「いやぁ、今回もとても良い冒険が出来ましたよ」

「そうですか」

「初めての場所に訪れて、そこで耳にしたことの無い話に耳を傾ける。未知に挑む事や強敵と戦う事とはまた違った良さが在りますよね」

「そうですね」

「住んでた人たちと交渉して木材をもらえる様にしましたし。ちゃんと依頼を達成したから帰れば報酬が貰える。冒険出来る上にお金まで貰えるって最高じゃないですか?」

「そうですね」

「まぁ、お金は一瞬で吹っ飛んでいくんですけどね」

「辛い」

「ですねぇ」

 

今回は特にハインリヒが辛い。かなりの量の薬を使ってしまったから材料やらなにやらと色々と入用に成るだろうから。かなり金が吹っ飛んでいくだろうなと思う。まぁ、仕方ない事だけれど。冒険は金が掛かるものなのだから。

 

「…もしかしてですけど」

「なんですか?」

「冒険するときは何時も何かしらの依頼を受けているんですか?」

「そうですよ。当たり前じゃないですか」

「そこはオラリオを変わらず、世知辛いのですね」

「まぁ、私なんてまだましな方なんですけどね」

 

ローウェンなんかと比べると、だけれど。彼の表情が死に絶える度に術者で良かったと思うのだ。基本的に金を使わないし。

 

「そう言えばあれは?」

「あれ?」

「あの赤い」

「あぁ、石板ですか」

「それです。結局あれ何なんですか?」

「さぁ? ただ祭壇に祭られていた、そしてあの森に住んでいる人たちが守っていた物という事位しか分かりませんでしたし。これと言って説明が出来ないですね」

「……守られていた物なのに持って来たんですか?」

「渡されたんですよ」

 

今回は運よく無事だったが。もしも再びあの影が姿を現したなら守り通す事は難しいからという理由で渡されたのだ。断じて奪ったわけでは無い。冒険者は基本的に強盗では無いのだ。なお、絶対ではない。

 

「でもこれに関して分かったこともありますね」

「なんですか?」

「これは全部で四つあると言う事ですよ」

「四つですか」

「えぇ、詰まりあと二つあると言う事ですね。変態どものおもちゃが」

「え?」

「あ、知りませんでしたか。最初に見つけた緑色の石板は変態たちに預けられて調べられているんですよ」

「それ大丈夫なんですか?」

「さぁ? 壊さなければ其れで良いといっては置きましたから取りあえずは大丈夫だと思いますけど」

 

まぁ、見るからに重要な物なのだから言わなくても壊さない様に気を遣っているだろうけど。複数在ると知ったらどうなるか分からないので言っておいて正解だったのだろう。四枚在るなら一枚や二枚は壊しても大丈夫だな、なんて言いだしかねないし。

 

全く変態は困ったものだと息を吐いてから何気なく視線をリリルカに向けてから、言葉にする。

 

「そう言えばなんだかんだでしっかり返してくれてますけど、操縦は大丈夫なんですか」

「…………」

「あ、黙った」

 

どうやら集中する様だ。流石にこれ以上話しかけるのはやめておいた方が良いだろうと、立ち上がってから景色を見る。暫くはそれを楽しむかと思いながら。

 

 

 

 

 

「外が内で内が外でモンスターがモンスターじゃなくて魔石無くてあって……あれぇ?」

「あ、まだ戻ってきて無かったんですね」

 

結局彼女が正気に戻るのは帰ってからだったという。

 

 

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