世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百七十八話

「よいしょっと」

 

掛け声とともに放たれた氷槍が鱗を貫き砕く。さてこれで幾つの鱗を砕いただろうかと思いながら、ちゃんと処理できているかを確認する。

 

「そう言えばこれって何かに利用できたりしませんかね?」

「料理とかには使えそうでござるな」

「そこはせめて耐寒用と、そういったのを言いましょうよゴザルニさん」

 

まぁ彼女らしいと言えばらしいのだろうが。しかし、言う事も一理あるだろう。態々火を起こさなくても物が焼けるかもしれないのだから。そうなったらかなり便利なのではないだろうか。

 

「……試して見る価値はあるかもしれませんね」

「で、ござろう? 取り合えず、一枚ほど壊さずに確保を」

「あれをですか?」

「…無理でござろうか?」

「ちょっと処でなく難しいですね」

 

割と壊れやすいと言う事と大きさ的な問題もあるしと付け加える様に言葉にしながらそこら辺に散らばっている欠片を一つ手に取る。

 

「取り合えずこれが使えるかどうかを試すところからですかね」

「詰まり燃やしてみるという事でござるな」

「まぁ、そうなると今までとそう変わりませんけどね」

 

燃料として利用出来るならそれはそれで使い勝手が良さそうではあるが。程度にもよるけれど。

 

「じゃあ頼むでござるよ」

「え、今ですか? 今ここでですか?」

「駄目でござろうか」

「流石にモンスターに何時襲われるかも分からない場所でそう言ったことはやりたくないですかね」

「ぬん、その通りでござるな。ならば仕方なしでござる」

「まぁ、これを持ち帰るとしたら試すのは私では無いですけどね」

「ぬん?……あぁ、彼らでござるか」

「えぇ、あの人達は変態ですけど、いえだからこそ腕が良いですからね」

 

燃料に成らなくても何かしらを作り出してしまいそうな高位冒険者とはまた違った凄みを感じるのだ、あの変態たちからは。

 

「変態たちがはしゃぐ姿が目に浮かびますね」

「城が吹き飛ぶ光景もでござるな」

 

まぁその通りだろうなと頷く。これを持ち帰った結果、またラキアが酷い事に成るだろうが、しかしそれはそれと言う事で。気にする事では無い。冒険者は変態を押さえる為に存在する訳では無いのだから。そうレフィーヤは思いながら周辺に在る手ごろな欠片を集めてしまう。

 

「この位ですかね」

「レフィーヤ殿」

「なんですか?」

「一回で良いから壊れていないもので調理してみるというのは?」

「ハインリヒさんに提案してみては? ごはん食べられなくなっても知りませんけど」

「……ぬぅ」

「滅茶苦茶悩んでますね」

 

何故そこまで悩むのかと疑問に思い、問いかけてみると。

 

「あれで作った料理はおいしいか気に成ったのでござる」

「いつも通りですねゴザルニさんは」

 

そのブレなさ、見習いたいものだとレフィーヤは思う。と、何やら鈍い音が響き、何事かと視線を響いた方へと向けると。

 

「…なんですか其れ?」

 

ローウェンとハインリヒが、何か硬そうな物を弄っていた。岩の様なものに一瞬見えたが、どうやら違う様で。ならばそれは何のなのかと問い掛けたら、ローウェンがこう返した。

 

「亀の甲羅、と思われるものだな」

「甲羅ですか。まぁ確かにそれらしいと言えばらしいですけど……居ましたっけ、亀?」

「居なかったね、これにしたってそこら辺に転がってるのを見つけただけだし」

「ですか」

 

見るに、かなりの大きさの甲羅だ。しかも所々何かに砕かれたような跡が見える事から、本当はもっと大きいのかもしれない。そんな巨大な亀が居たならば、忘れる筈がない処か戦闘に成らない訳がない。

 

「…結構、経ってるように見えますね」

「そうだね。骨も探せば見つかるかも知れないかな」

「それは取り合えずおいておくとして、レフィーヤ」

「終わってますよ。見える範囲ではですけど」

 

ほらと軽く指差すのは先程まで鱗を壊して回っていた広間の様な場所。幾つもの欠片が散乱しているのが見え、それを集めて回っているゴザルニの姿もまた目に映る。

 

「…なんであいつはあれを集めてるんだ?」

「なんか、あれを使った料理を食べてみたいとか」

「え、あの鱗を食べるの? 流石にそれを使った料理はパッとは思いつかないかなぁ」

「そうでは無く、道具として利用した場合らしいですよ…多分」

 

そんな感じの事言ってたし、いや心の中までは分からないから断言は出来ないが。でもそう思ってそうだなとレフィーヤはゴザルニを見る。

 

「しかしあれだな。居ないな」

「そうだねぇ」

「確かに居ませんでしたね。鱗の持ち主」

「いける場所はここまで、何だよね?」

「私が地図を描き間違えてなければですけど」

 

と、地図を取り出して広げてみる。二人もまた覗き込む様に視線を走らせる。

 

「…うん、憶えてる範囲では間違いはないね」

「ですよね」

「と言う事は、此処が最奥であると言う事か。或いは、あの壁画の時とは逆かだな」

「逆?……あぁ、成程。通れた場所が何らかの理由で通れなくなった、と言う事ですか」

「そう言う事だ。其れならまぁ、あの鱗の奴がいなかったりするのも説明が付くだろ」

「単純に、此処を住処にしてたけど…そうだね、落石とかが在って、それが原因で移動したのか。若しくは其れの所為で外に出られず閉じ込められているか」

「です、か」

 

と言う事は、今まで壊してきたのはかなり前からそこに在るという事に成るか。或いは前の住処の様子を見に来た際のものなのか。まぁ、状態から見るに後者である可能性の方が高いが。どちらにせよ今いないならそれは其れで良いだろう。確かに気に成りはするが、それだけの為に待つという訳には流石にいかないし。

 

「どうしますか?」

「そうだな……戻るか」

「まぁ、それが妥当かね。無理するような時でもないし」

「せめてどこ等へんが道だったのかとかが分かればまた違ったんだがな」

「流石にそこまで詳しいのは在りませんでしたからね、資料にも」

 

まぁ、在ったとしても何処まで参考に出来るかは分からなかっただろうが。

 

「なら、帰ると言う事で良いか」

「私は其れで良いですよ」

「僕も」

「という訳だが、ゴザルニとコバックはぁ?」

「あたしは其れで良いわよぉ」

「同じくでござるぅ」

 

と、ローウェンの問いに見張りをしていたコバックは同意し、ゴザルニは大量の欠片を鞄に詰め込みながら答えた。流石に多すぎではと思わなくも無いが、それでもまぁ、戦いに支障が出ない範囲の様なので気にせず、通ってきた道を引き返す。

 

一応だが、確認しながら。やっぱりというかそれらしいものは見つけられなかったが。

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