食堂の一角、そこで出かけていたまだ帰ってきていないコバック以外の全員が揃っていた。
「あぁー……どう判断すればいいのか困るなこれは」
「ですよね」
そうフィン・ディナムという名が記された手紙を読んで呟くローウェンにその通りだとレフィーヤは頷く。だから、さてどうしようかと考えようとした時に、丁度コバックが帰ってきた。驚いたような表情を浮かべながら。
「……どういう状況なのよ、これ?」
「あ、コバックさん。お帰りなさい」
「ただいま、で何か在ったのかしら?」
「手紙が来たんですよ」
「手紙? 誰に?」
「私に」
「なら何でこんなみんな集まって首を傾げてるのよ」
「読めば分かるぞ」
「読めばって…良いの?」
「どうぞ、その方が絶対に楽ですし」
「なら失礼するわね」
と、差し出された手紙に視線を走らせるコバック。そして暫くしてから読み終わったのか手紙から視線を外し。微妙な表情を浮かべる。
「……どうなのよこれ」
「まぁ、そうなりますよね」
そう言いながら、テーブルの上に置かれた手紙を改めて読む。そこに書かれているのはいってしまえば依頼の様なものだったのだ。
内容は、遥か昔にパルゥムが造り出したという遺跡の探索をして欲しいとの事だ。なんでも、太古の人々が造り上げた何かの所為で行くことの出来ない最奥にて守られている物があるらしく、出来る事ならそれを見つけて取ってきて欲しいとの事。遺跡内に在ると言っても、もはや風化していく一方の場所に放置も同然の状態であるよりはその方が良いだろうからとの事。ご丁寧に大まかな遺跡の位置まで描いてある。
が、はっきり言って滅茶苦茶怪しい。
「こんな事する人では無かったと思うんですけどねぇ」
「お前が憶えてるフィン・ディナムはどんな奴なんだ?」
「そうですね。少なくとも、団長という立場からそうホイホイ動き回れる人では在りませんでしたけど、こんな風に依頼を手紙で伝えるなんて事はしませんね。誰かしらにでも頼んで伝えさせると思いますよ?」
例えば、同じくロキファミリア所属のティオネ・ヒリュテとか。彼女ならばフィン・ディナムという人物の頼みなら割と何でも嬉々として熟しそうだから。何故なのかは、無粋だから言わないけれど。
「そもそも。あの人がその手の事を他の人に任せるとも思えませんし。こういう事は自分でする人の筈ですよ、私の記憶が正しければですけど」
「成程ね」
「まぁだからと言ってこれは偽物だぁー……なんて馬鹿みたいな事は言いませんけど」
「本物だとも言わないんだろう?」
「判断できませんからねぇ」
それをする方法が無い訳では無いが。ただオラリオに居るだろうフィン・ディナムに直接訊きに行けばいい、それだけで答えが分かる。気球艇で移動すればあっという間に到着できるのだから手間では無い。無いのだが。
「でも、あんまり関係ないですよねぇ」
「だな」
「何がですか?」
「これを書いて送って来たのがフィン・ディナムとかいう人物で在るかどうかだよ。ぶっちゃけどっちでもいいが」
「いえ、明らかに重要じゃないですか」
「そうでもないですよ? 偽物だろうとそうでなかろうと結局行くんですから」
「……何処に?」
「これに書かれてる遺跡にですよ。何言ってるんですか」
地図を取り出し、手紙に記されている位置とを照らし合わせながら視線を走らせそう答える。するとアスフィは、いや彼女だけではなくリリルカもまた顔を引きつらせる。
「あの、もしもそれが偽物だった場合はどうなるのかって考えないんですか?」
「勿論考えますよ」
「例えば?」
「分かり易いのは罠ですかね。遺跡のある程度奥まで行ったらこれを書いて送ってきた人、まぁその場合人たちに成るでしょうけど。に襲われるなんて事も在り得るでしょうね」
「危ないですよね、それ。絶対」
「でしょうね、命の危機でしょうね。いやぁ本当に……クワクしますね!!」
そう言葉にした瞬間、キチガイを見る様な視線を向けるアスフィ。尤も、そんなものには慣れ切っているレフィーヤには一切効きはしないのだが。
「まぁ、罠でなく単純にこの神殿の奥で守られてるものが欲しいだけっていう可能性もあるけどね。自分では取りに行けないから」
「案外本当に、えっと……フィン・ディナムという人が書いたとか」
「そうですね。書いてある内容自体はおかしな事では無いですからね」
これを本当にあの団長が書いたのかと疑わしい事を除けば、在り得ない事では無い。
「まぁ、最終的に重要なのはここに書かれてる事が本当かどうかなんだけどな」
「…それって遺跡が在るかどうかって事ですよね?」
「その通りだリリルカ・アーデ」
「なんでフルネーム?」
それは正しい事を言ったからだとレフィーヤは思う。思うだけで口にはしないが、面倒だし。
「まぁ、いくら今懐に余裕が在ると言っても無駄遣い出来るほどでは無いからな。出来る限り調べてからだろうな行くのは」
「じゃあいつも通りですね。私また城に行ってきますよ」
「あ、それならあたしも」
「コバックさんはちょっと」
「何でよ」
「分かり切ってるだろ」
「拙者は如何するでござるかなぁ」
「あ、僕の手伝いしてもらっていいかな?」
「ぬん、承ったでござる」
「じゃあこれとこれとを買ってきて欲しいんだけど」
「ねぇ、何であたし拒否されたのよ」
「……こんなに怪しいのに、本当に行くんですね」
『寧ろ行かないとでも?』
声が重なる。思わずレフィーヤはサムズアップすると、彼らもまたしていた。心が通じ合っている。そして、そんな様子を見たアスフィは小さく呟いた。
「ですよね」