世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百八十五話

揺らぐ、巨大な石像が降り立ち大地そのものが揺らいでいると錯覚する程。回る、石像の頭部が、上半身が、拳が音を立てて回り。

 

氷塊を叩きつける。

 

轟音が響く。極めて重く硬いそれを受けた石像は蹈鞴を踏む。が、それだけだ。倒れる事無くすぐに態勢を整えるだろう。だから畳み掛ける。

 

タタンッと軽やかにゴザルニは走る。倒れぬようにと支えている右足に刃を振るう。そして音。彼女は顔を顰め乍ら床を砕きながら膝を付く石像から距離を取る。

 

「あのもどきや狼よりも硬いでござるな」

「みたいだな」

 

そう言いながら構え直すゴザルニに対して、銃弾を放ちつつローウェンは同意する。そして彼もまた、音を立てて弾かれる銃弾を見て顔を顰めていた。

 

「関節を使って回転してるせいか当たっても弾かれるな。もう少しタイミングを考えなければいけないな」

「タイミングが合えば弾かれないんですか?」

「そうだな」

 

あぁ、彼は相変わらずだなと思いながら炎や雷、氷を放ちどれが一番効くのかを調べる。

 

「これといって効くのは在りませんね。これなら氷叩き込んだ方良いか。という訳なので!」

「了解でござる、破片に気を付けるでござるよ」

 

気軽に答えながらゴザルニが態勢を整えた石像に再び接近する。音を響かせながら回り、視線を彼女に向け腕を大きく振りかぶり、勢いよく突き出す。其れは特別なものでは無いただの殴打。しかしだからこそ脅威と言えるそれは。銃声が響き、腕で炸裂。勢いよく軌道を変えゴザルニの脇に突き刺さり再び揺るがす。

 

「おっと、これは好都合でござるな」

 

嬉し気にゴザルニは言葉にすると同時に方向転換、少し戻ると床から引き抜こうとされている石像の腕に足を掛け、一気に駆け上がる。

 

「では取り合えずッ?!」

 

頭部に向かって刃を振るおうとしていたゴザルニが言葉を止め、勢いよく飛ぶ。その直後、石像が回る。上半身が勢いよく回る。彼女の事を振り落とそうとするための行動にしては攻撃的すぎる、いや違う。それは間違いなく攻撃だ。

 

もはや小さな竜巻となった石像は留まる事無く回る、回る、石像は動き回る。角度を変え、床を削り砕きながら誰をと狙うことなく乱雑に両腕を上半身と共に振るう。

 

「近づけそうに在りませんねこれは」

「そうだな」

 

飛び散る、それだけで脅威と成る破片を避け防ぎながら呟き、術を放つ。真っすぐ石像に向かったそれは、しかし竜巻に砕かれて消える。

 

これでは近づけない処か攻撃も当たらないなと、平然と弾丸を弾かれる事無く叩き込んでいくローウェンを見ながら、さて如何したものかと考えて。攻撃で無ければ良いのかと術を行使する。

 

造り出すのは氷の柱、場所は動き回っている石像の足の下。タイミングを見計らって、一気に押し上げる。

 

態勢を崩す石像。しかしそれでもと足に力を込めて柱を踏み砕く。動きを止める事が出来たのは一瞬のみ。だがその一瞬があれが二人程潜り込むには十分と言える。

 

「せーので」

「ござる」

 

軽く音を立てながら飛ぶのはゴザルニとハインリヒ。二人は勢いよく氷の柱を踏み砕いたばかりの足に向かって刃を、そして槌を振るう。

 

衝撃、そして音。振るわれた刃が傷を刻み、叩きつけられた槌がへし折る。

 

片足を失った石像は立って居る事が出来ずに崩れ落ち、回転を維持することが出来ずに止まり、倒れぬようにと手をつく。その場所を予測して氷を利用して角度を作り容赦なく滑らせて転倒させる。

 

動きを止めた石像に殺到する印術と弾丸が削り砕き、貫く。そして振るわれる刃が切り刻む。

 

音が響き、頭部が回る回る。そして変わるのは面と色。青く染まったその面と、それはまるで連動していると主張しているかのように石像の体にも青い光を灯し。

 

だからどうしたと氷塊が石像を叩き潰し行動を封じる。

 

若しかしたら、その色に意味が在るのかもしれない。例えば、青という色から想像するに、氷や水などと言ったものに耐性が出来ているかもしれない。が、だからと言って氷の重さまでは軽減は出来なかったようで、氷塊の下で足掻き、何とか這い出ようとしている。その動きもローウェンの放つ銃弾が阻害している。

 

石像の流れは断った。あとは出来る限り蹂躙するのみ。

 

氷塊に当たって壊れてしまわない様に術を放ちさらに石像を削る。目まぐるしく回る頭部。やはりあの動きには意味が在るのだろうと思いながら、それが正しいかは分からないが、それでも出来る限りタイミングを計り、術を選びながら叩き込む。

 

石像の動きが鈍っていく。限界が近いのだろう。だが油断はしない。最後の瞬間まで何をしてくるのか分からないからだ。そうして、視線を走らせ。動けない状態で何かをしてくるかもしれないと警戒する。

 

如何すればいいのかと迷っているかの様に石像の頭部が回る、回って回って回って。ゴトリッと音を立てて落ちた。

 

「―――――――は?」

 

想定の斜め上の事態に思わず気の抜けた声が零れるレフィーヤ。だが、目の前で落ちた頭部が壊れてそうなった訳では無いとレフィーヤは理解して。

 

その直後、光を放ち頭部が爆発した。

 

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