世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百八十六話

煙が立ち昇り、瓦礫が散らばる部屋の中。声が響く。

 

「…問題ない奴は声出せー」

「大丈夫でーす」

「同じくー」

「あたしもー」

「ござるー」

「良し、全員大丈夫だな」

 

そう言葉にし何事も無かったように埃を払うレフィーヤ。視線を走らせれば、無傷な仲間たちの姿が見える。石像の頭部が爆発したというのに、何故なのかと言えば。単純にレフィーヤが防いだからだ。爆発したのとほぼ同時に、頭部を氷で包むことで。

 

衝撃で少し氷の破片が飛び散ったが、それでも爆発を躱したり防いだりするよりは容易だった故に無傷。それだけの事だ。

 

「自爆しましたね」

「したな」

「体の方はもう動いてないね。頭が動かしてたって事かな」

「やっぱり大きな人工物は爆発するものなのね。エヴィーちゃんの言う通りだったわ。次からもっと気を付けないと」

「気を付ける事に関しては同意でござるが。エヴィー殿がまた変な事を言って居たのでござるか」

 

なんて会話をしながら、一応、石像の体をさらに砕く。

 

「この位で大丈夫ですかね?」

「まぁ、粉微塵が一番だが流石にそこまですると時間が掛かるしな。別に良いだろう」

「それじゃあ」

「目的の物を見に行くとするかね」

 

その言葉を待っていたとレフィーヤは祭壇らしきものへ向かって歩き出す。勿論、罠などと言った類が無いかを警戒、確認する事は怠らない。

 

そうして辿り着いたそこには、やはりと言うべきだろう。見覚えのある物が存在した。

 

「やっぱり石板ですね」

「そうだね……しかし紫色、で良いのかなこれ?」

「そう見えますけど、それがどうかしましたか?」

「緑に赤だったから、青か黄色かなって思ってたんだけど」

「あぁ、何となく分かるようなそうでない様な」

「いやまぁ、そうでなければいけない訳でも無いけどさぁ、なんかこうしっくりこないというか」

 

言っても仕方ない事だけどねと、ハインリヒは肩を竦める。

 

「で、手紙に書いてあったものはこれの事…で良いのかな?」

「だと私は思いますよ。これ以外それっぽいの在りませんし」

 

隠し部屋とか道とか、そう言ったものが在ったなら話は別だが。

 

「取り合えず、これを持ち帰る事にしましょうか。違ったとしても詳しく書かなかったのが悪いんですし」

「まぁ、これ以外だったとしたらじゃあ何なんだよって話だしね」

「文句が出る前に疑問が湧きますね」

 

なんて言いながら罠が仕掛けられていないかを確認してから石板を祭壇から慎重に取り外す。

 

「これで三枚目ですね」

「だね。あと一枚で揃う事に成るのか」

「なんかこう、楽しみですね」

「そうだね」

 

四枚揃うと何が起こるのか。それが良くない事なのか、良い事なのかは分からないが。そんな事を気にしていたら冒険者などやってられないので取り合えず気にしない事にしたレフィーヤは石板を鞄に仕舞いつつ、壁画を眺めているローウェンに語り掛ける。

 

「こっちは良いですよ」

「ん? あぁ、そうか」

「で、ローウェンさんの方は何か分かりましたか?」

「興味深いのは在るな」

 

言って、ローウェンは指差す。その先へとレフィーヤは視線を向けると。

 

「あれは、顔? ですか」

「で、その周りに四つの何かを持ってる人らしきものが描かれてるな」

「四つって事は石板ですかね?」

「多分な」

 

絵をよく見る。顔を囲う様に石板と思われるものを持つ四人、いや四つの種族かも知れない。そうだと分かる特徴が描かれてるし、耳とか。

 

「しかし顔ですか……もしかしてあれって巨人ですか?」

「まぁ、断言は出来んがな」

「ですよね」

 

さてだとすると石板は巨人とどのような関係が在るのかと考える。と、不意にローウェンが軽く首を傾げてから、指を絵に向けてからゆっくりと動かし、レフィーヤに手を差し出した。

 

「…レフィーヤ、地図を出してくれ」

「地図ですか? それはここのですか?」

「いや、もっと広いのだな」

「分かりました」

 

懐から自作の世界地図を取り出して渡すレフィーヤ。それを受け取るとローウェンは広げ視線を走らせる。

 

「……あぁ、成程」

「何か分かりましたか?」

「四枚目の石板が在りそうな場所と巨人が眠ってそうな場所がな」

「…断言は?」

「出来ん」

「因みに、それは」

「地図とあの絵を見比べれば分かるぞ」

 

そう言いながらローウェンは地図を軽く畳んでからレフィーヤに返す。それを受け取って広げて視線を走らせてから絵を見る。見比べればと言うからには何かしらの関係が在るのだろう。ならばと石板が在った場所に視線を向けて。気が付く。

 

「…割と重なりますね。位置が」

「大体だけどな」

「まぁ、絵にしろこの地図にしろ完全とは言い難いですからね」

 

そう丁度、三枚の石板が在った場所と、絵に描かれている三枚の石板と思われるものとが重なるのだ。先程言ったように完全にとは言い難いが、それでも偶然と言うには出来過ぎている位だ。

 

そして、もしもこの絵が位置を表しているのだとすれば。レフィーヤはそう思い、指を走らせる。

 

「ここ等へんに四枚目が在るって事ですかね」

「恐らくな、そして」

「この中心に、巨人がって事ですか」

 

正しいかどうかは、当然だが分からない。そうであると断言出来はしない。けれど、行動するには十分だ。次の向かう先が決まったと言えるだろう。

 

しかし、そうだとするなら。そう思いながら地図を撫でて、言葉にする。

 

「この前の洞窟。見当はずれでしたね」

 

位置がほぼ逆だった前回の洞窟。まぁ、間違っていたとしても色々と発見できたのだから気にする様な事では無い・・・無いのだが。

 

「…取り合えず、帰るか」

「………そうですね」

 

それでも、ゆっくり休みたい気分なレフィーヤなのだった。

 

 

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