世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百八十七話

転がる。

 

「あの洞窟はですね。結構自信が在ったんですよ」

「はぁ」

 

ベットの上で転がる。

 

「まぁ、実際大発見が在った訳で」

「そうですね」

 

宿屋の一室に在るベットの上で転がる。

 

「でも、石板とは何の関係も無かったかも知れない訳ですよ。詰まりなんて言いたいかといえばですね」

 

ベットの上で毛布にくるまって転がっていたレフィーヤが止まり、リリルカを見ながら言葉にする。

 

「かなりショックだったわけですよ」

「だからどうしたと言わせてもらいますね」

「随分辛辣になりましたね。私、嬉しいですよ」

「レフィーヤ様は変態だったのですか?」

「キチガイで在るかも知れませんけど変態では無いと思いますよ」

「キチガイでは在るんですか」

「仲間をヒャッハーって叫びながら嬉々として吊るしたり引きずり回す様な人物がキチガイでないと?」

「間違いなくキチガイですね」

「でしょう?」

 

まぁ、流石に理由もなくそんな事はしないが。理由なしにしたらキチガイでは無くただの危ない人である。いや一般人的には理由が在ったとしても吊るしたり引きずり回すのは十分危ない人扱いなのだけれど。

 

「で、何時まで毛布の中に居るんですか?」

「この羞恥が消え失せるまでですよ……いやまぁはっきり言ってそこまで気にしてませんけど」

「じゃあ何でくるまってるんですか?」

「気分ですけど」

「あ、そうですか」

 

寝て起きた時点でもう気になどしていなかったのだ。まぁ、其のあとも何となくで気にして落ち込んでますよ的な空気を出していたけど。結局引っ掛かったのはアスフィだけだった。目の前に居るリリルカはさほど気にしていた様子も無かったし。

 

「で、そこの所どうなんですか?」

「何がですか」

「私が落ち込んでいたのを見てなにか思うところありましたか?」

「キチガイにも人の心ってあるんだなって思ってました」

「問いに刃を返すとは」

 

本当に逞しくなってと、小動物の様に震えていた過去のリリルカを思い出して涙が零れる。普通なら嘆く処だがレフィーヤは心の底から喜んでいるのだった。

 

「おめでとうございますリリルカさん。貴女もまたキチガイへの第一歩を踏み出しましたよ」

「全力で後戻りしたいんですけど」

「残念ながら道ではなく崖に向かっての一歩なので、あとは転げ落ちるだけですよ」

「成程、これが絶望ですか。知りたくも無い事を知ってしまった気分です」

「まぁ、最初は私も同じ様な感じでしたし。すぐ開き直れますよ」

「死力を尽くしてしがみついてやりますよ」

 

と言って居るが、吊るされた冒険者を見て何時もの事かと呟き、変態の奇声に全く動じなくなった時点で手遅れなきがしなくもないレフィーヤ。まぁ、言わないけど。別に面白そうだからなんて理由では断じてない。

 

誰だって通る道なのだ。微笑みを浮かべながら見守るとしようと、優しい視線をリリルカに向ける。

 

「その目を止めてくれませんか? 林檎叩きつけますよ?」

「食べ物を粗末にするのはどうかと思いますけど」

「…それもそうですね」

 

と、手に持った林檎をテーブルの上に置いて、林檎が乗っていた皿をちらりと見てから。

 

「お皿はいりますか」

「壊れたら自腹ですよ?」

「其れは良くないですね。無駄な出費は控えるべきですし」

 

どうやら何かを叩きつけるのは諦めたようだ。金は大事だから当然だが。まぁ、一線を越えちゃった人たちなら平然と壊さなければ大丈夫と絶妙な力加減で叩き込んでくるのだが。リリルカはそこまで到達するのは何時に成るだろうか。

 

「今、何か嫌な事を考えませんでしたか?」

「別に考えてませんよ」

「…本当ですか?」

「えぇ」

 

本当の事だ。レフィーヤは自分にとって嫌な事など全く考えていないのだから。なんて思いながら、紙の束を見ながら唸るリリルカを見る。

 

「なんですか其れ」

「前にハインリヒ様に書いて貰った気球艇の関する事を纏めた物です。読み返してるんですよ」

「へぇ」

 

随分と熱心な事だ。状態から見て相当な回数読んでいるだろう。基本を忘れないのは良い事だとレフィーヤは頷きながらベットの上から降りる。

 

「もう良いのですか?」

「えぇ、飽きましたし」

「そうですか。其れで何処に出かけるのですか?」

「ちょっと工房まで」

「巣窟までですか?」

 

言い方。何故通称の方を口にするのか。いや、其の方が印象深いからだろうけど。

 

「何か用事でもあるんですか?」

「そうですね。しいて言えば話をしにですかね。色々と参考に成る事が多いですし」

「変態ばかりなのにですか?」

「だからですよ。技術や発想は凄いですからねあの人たちは」

 

その分、被害も凄いのだが。其れに関しては変態を自重なしで動かしている代償の様なものだから諦める他ない。なんて思いながら、サッと出かける準備をして扉の開き。

 

「ではちょっと行ってきます」

「行ってらっしゃいです」

 

そう言って、外に出た。

 

 

 

 

直後に戻る。

 

「いや、此処私の部屋なんですけど」

「え、居ちゃ駄目なんですか?」

「自分の部屋で読んでくださいよ。若しくは食堂」

「レフィーヤ様の部屋が一番居心地良いのですが」

「勝ち取りましたからね」

「そうですか…で、駄目なんですか?」

「…帰ってくるまでいてくれるなら良いですよ?」

「やったー」

 

なんて声を零すリリルカに、仕方ないかと肩を竦めてから改めてそこに出た。

 

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