世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百八十八話

「相変わらずここは狂気で溢れてますね」

 

そう呟きながらレフィーヤは奇声を上げながら転げまわっていたり斧を振り回してたり翼みたいなのが生えた靴を履きながら凄い勢いで吹っ飛んでいく人達の横を抜けながら大工房を進む。

 

「あ、すみません。エヴィーさんは何処に居ますか?」

「おう、エヴィーなら何時もの場所だぞ」

「何時ものと言う事は気球艇の所ですか。分かりました、ありがとうございます」

「良いって事よぉー」

 

と笑いながらサムズアップし、ボールの様に蹴り転がされていく男性に頭を下げてから、その何時もの場所へと向かう。

 

「―――――あっ」

「ん?」

 

と、其の途中。何か声が聞こえそちらを向くと、何かを背負っているアスフィが居た。まぁ、彼女が大工房に居るのは別に可笑しな事では無い、話を聞いた限りでは彼女もまた技術者なのだから。

 

おかしいのはレフィーヤが振り返った瞬間、視線を逸らした事位だ。

 

ふむと、頷きながらレフィーヤは何気なくアスフィの前に立ち、見つめる。これと言って意味が在る訳では無いがそれでも見つめ、そして問いかける。

 

「……その背負ってるものは何ですか?」

「…私の作った道具ですが」

「そうでしたか、成程……運ぶのでしたら手伝いますが?」

「いえ、結構です。自分のものくらいは自分で運びますので」

「分かりました。じゃあ気を付けてくださいね。足元とかに」

「転ばない様にって事ですか。えぇ、十分に気を付けますぅ?!」

 

言いながら歩き出したアスフィが勢いよくひっくり返る。注意するように言ったばかりなのに転ぶとは、もっと注意すべきでは無いだろうかとレフィーヤは、彼女の足元に何故か在った氷を踏み砕いてから、近づいて。

 

アスフィが背負っていた物から転がり出た石板を手に取る。

 

「へぇ、驚きましたよ。これってアスフィさんが作ったものだったんですかぁ。凄いですねぇ、色々と教わりたいですよ本当にぃ」

 

と、石板を軽く揺らしながら言葉にしアスフィを見る。何故か、そう何故か酷く汗を流している彼女を。

 

「……で、なんでこれを持って行こうとしてたんですか? しかも三枚全部」

「そ、れは」

 

「俺が頼んだからだよ」

 

声が響く。聞き覚えのある声だ。だからレフィーヤは露骨に顔を顰め乍ら声の発した人物、いや神物を見る。

 

「まぁ、そんな事だろうと思ってましたよ。神ヘルメス」

「やっぱり分かっていたか」

「寧ろ分からないとでも思いましたか?」

「いいや、それは無いだろうね」

 

笑いながらそう言うヘルメスは、其のまま手を伸ばす。

 

「で、出来ればだけどそれを渡してくれないだろうか?」

「お断りします」

「だよねー」

 

と、伸ばした手を軽く揺らしながらなら如何し様かと視線を巡らせ、ため息。

 

「あぁ、アスフィがもっとうまくやってくれればこんなことに成らなかったんだけどなぁ」

「な! わ、私の所為ですか?!」

「いや、ハデス・ヘルムを使って姿を隠して居ればこうも簡単に気が付かれることは無かっただろう?」

「其れを! 新しく作ったものを含めて! 持って行ったのは! 貴方でしょう!!」

「おっと、そう言えばそうだった」

 

なんて言いながらヘルメスは手を動かし。両腕とも凍り付いた。

 

「て、ちょっと?! まさかのなんだが。え、いきなり?」

 

確認するように視線をレフィーヤに向けるヘルメス。対しレフィーヤはと言えば手に持っていた杖で肩を叩きつつ、鼻で笑う。

 

「窃盗するように命じた犯罪者が何を喚きますか」

「ぐッ! 確かにそう言われると言い返せないというか真っ当な事をしている様に思える!!」

「真っ当な行いですからね。という訳で追加入りまぁす」

「あぁ、待って待って待って足は駄目だ転ぶ転ぶころぶへぇ?!」

 

顔から盛大に床に倒れ込むヘルメス。それを見てか周りから変態が集まり彼の事を弄り始めるのを見ながら、何故と疑問に思った事を考える。

 

そもそも、今アスフィに石板を盗ませようとしたのか。いや、ヘルメスが石板を求めていたのだとすれば盗ませようとしたのはおかしな事では無い。それが、四枚中の三枚しかないと言う事を考えなければだ。普通、という訳では無いが、そう言ったことをさせるなら全部集まってからでは無いのかと。其れなのに今盗ませようとした理由を考えて。

 

「……神ヘルメス」

「な、なんだい?! ちょ、やめて。ペンキで色を付けようとしないでくれ!」

「四枚目の石板、持ってるでしょう?」

 

変態たちの動きが止まる。立ち上がって埃を掃っていたアスフィもだ。そして、ヘルメスはと言えば、目を細めて笑う。

 

「良く分かったね」

「そうだとしても可笑しくないですからね。最初の石板みたいに守られていない状態なら野生のモンスターに気を付ければ手に入れる事自体は出来るでしょうからね。アスフィさんが作った道具を貴方が持って居たらなもっと簡単でしょうし」

「本当に良く分かったねそこまで、まぁその通りだよ」

「…持って行ったのて嫌がらせじゃなかったんですね」

 

意外そうにヘルメスの事を見るアスフィ。流石にその言い方はどうなのだろうと口に出さずレフィーヤは彼を見続けて。

 

「で、アスフィさんに盗ませようとした意味は何ですか」

「あぁ、それに関しては俺は俺でやっておきたいことが在ったからだよ。まぁ、アスフィが思ったよりも早く見つかった所為で中途半端だけどね」

「へぇ、其れって時間稼ぎしている様に見えるのと関係ありますよね」

「あ、そこ気が付くのかい? 怖いなぁ。やっぱり間違いでは無かったかな」

「早く喋らないと氷で落ち潰しますよ」

 

と、綺麗な箱型の氷を作り出すレフィーヤ。それを見て、怖い怖いと言いながらヘルメスは笑う。

 

「怖いな。もう少し穏便な脅し方は出来ないのかな?」

「脅しに穏便も何も無いでしょう」

「其れもそうだね……所でレフィーヤ・ウィリディス、一つ訊いても良いかな?」

「なんですか。さっさと話してくれません?」

 

急かすレフィーヤの言葉に、ヘルメスは変わらず笑みを浮かべ。そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「爆発オチって知ってるかい?」

 

大工房が爆炎に飲み込まれた。

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