世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百九十一話

「……いやぁ、何と言いますか」

 

今まで以上に力強く、そして速く空を突き進む気球艇。なんでここまで性能が上がっているのかは変態たちの専門用語という謎の言語が脳内を犯してきた所為で印術が利用されていると言う事以外は分からない。もう少し時間に余裕があればある程度自力で調べられるのだが。

 

まぁ、速くなったのなら其れで良いじゃないかとレフィーヤは思いながら横に居るローウェンに向かって話しかける。

 

「思っていたより変わってませんね。見た目以外は」

「変に弄られなかったのは良かったと言うべきだろ」

「中の構造が全く違ったら困るどころじゃ無かったでしょうしね」

「そうしたら出発が遅れてたかもな」

「ですよね」

 

案外、そこら辺を考えていたのかもしれない。大工房を破壊された事に対して変態たちは怒り心頭と言った様子だったし。少しでも早くボコボコにしてくれと言う事なのだろうか。

 

「だからと言って舵輪までパルゥム専用のままっていうのはどうかと思いますけどね。いえ、お陰で動かせてるリリが言えた事では在りませんけど」

「そうですか。所で動かしてみた感じどうですか?」

「そうですね。かなりいい感じですよ。まぁ、良すぎて少し気を遣いますけどね」

「まぁ、そこら辺は仕方ない事ですよ。慣れるしかありませんし」

 

新しいというのはどうしても前のものと比べてしまうのだから。幾ら良いものであったとしても慣れというものが在るし。

 

「取り合えず問題は無いと言う事ですか」

「そうなりますね」

 

と、頷いて見せたリリルカ。其れならば良いと、見張りをしているローウェンの横から動き。今回もまた景色を眺めているアスフィに近づいて語り掛ける。

 

「それで、アスフィさんは本当に良かったんですか?」

「……えぇ、はい」

「そうですか」

「寧ろ、それは私の方が訊きたい事なのですが」

「なら今から降りますか? かなり熱い地面との抱擁が出来ますよ。あ、でもアスフィさんはあの靴を持ってるから大丈夫なのか。なら何の憂いもなく降りられますね」

「いえ降りませんから」

 

そっかぁ、気の抜けた声を零しつつ彼女と同じように景色を眺めてみる。と、暫くしてから彼女は小さく言葉を零した。

 

「…本当に良いんですか?」

「そう言ったじゃないですか、私も。ローウェンさん達だって」

「でも、何も訊いてきませんでしたよね」

「訊いて欲しいなら今からでも訊きますよ? 其れはもう容赦なく傷口を抉る様にネチネチと」

「それは、嫌ですね」

 

自分だってそんな事やりたくないとレフィーヤは思う。やるならもっとバッサリといく方が好みなのだからと。陰湿なやり方はなんというか、やっていていら立ちを憶えるし。

 

「まぁ、そう言う訳で無理に聞き出そうなんて趣味の悪い事をする積りは無いので」

「また、何かしでかすかもしれないのにですか?」

「その時はそうですね。もう仕方ないからヘルメスごと、こう巻き込む感じで大印術をぶち込む感じで」

「それ、私死にませんか?」

「大丈夫ですよ、直撃しなければ」

「直撃すれば?」

「死にます、多分」

「多分?」

「高レベルの冒険者に叩き込んだ事なんてありませんし」

 

いやまぁ、そんな経験あったら拙いのだが。だが実際どうなのだろうか。印術の威力と高レベル冒険者の耐久力、一体何方が上なのか。実に浪漫溢れる疑問である。

 

「まぁ取り合えずそれは実際にやってみないと分からない事ですし置いておくとして」

「出来れば起きてほしくない事ですね」

「其れに関しては同意します」

 

寧ろ望んでそんな事をしたらキチガイでは無くただの狂人である。危ない人である。まぁ、機会が訪れたら迷いなくやるだろうけど。だって気に成るし。

 

「……ヘルメス様は」

 

なんて考えているレフィーヤに、アスフィの呟きが届く。

 

「何をする積りなのでしょうかね」

「分かりませんよ」

 

爆破して、盗み出して、犠牲にしようとして。そこまでして何故、なんて事は分かりはしない。其れこそ直接、問いただしでもしなければだ。

 

「何なら訊いてみますか? 本人、いえ本神に」

「ついていって、ですか?」

「えぇ……いえまぁ流石にちゃんと話し合ってじゃないといけませんけどね」

「やらかすかもしれないのにですか?」

「その話はさっきしたでしょう」

「…気球艇の守りは如何するんですか」

「其れに関しては、リリルカさんの気合で何とかしてもらうと言う事で」

「さりげなく無茶ぶりしないでくれませんかー?」

 

なんてリリルカの声が聞こえる。流石に無茶だったか、なら如何し様かと考えていると。

 

「流石にという訳では在りませんが、止めておきます」

「…ふむ」

 

アスフィを見る。気が付いてるか分からない、分からないが。彼女は微かに震えていた。其れは何故なのかは、言うのは良い事とは言い難いだろう。だからレフィーヤは見なかった事にした。

 

「まぁ、そう言うなら」

「申し訳ありません」

「謝る事では無いでしょう」

 

行くか行かないかを決めるのは彼女自身が決める事なのだから。とやかく言う事では無い。

 

「それじゃあリリルカさんと気球艇の事を頼みますよ」

「はい」

 

そう言葉にしながら頷くアスフィ。それを見て、少し思うところは在るが仕方ないかと肩を竦めながらレフィーヤは思い。

 

「まぁ、私たちの向かってる場所が間違ってたら色々と台無しなんですけどね!!」

「それを今言いますか?」

 

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