世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百九十二話

カツリッと音が響く。これと言って意識してい訳でも無い事と音の無いその場所で在った事とが重なったからこそ思って居た以上に大きく響く。反射的に杖を構え辺りを見渡す。敵意を持つものの姿は見えず、また向かってくる気配も無いのを確認してからレフィーヤは構えを解き、改めて見渡す。

 

嘗て栄華を極めたのだろうそこは、もはやそうであったという過去に思いをはせる事しかできない廃都を。

 

「……何もなかったという事態は避けられましたね」

「だからと言ってここに巨人とかヘルメスが居るとは限らないけどな」

「そう何ですよね。大まかにここ等辺じゃないか程度でしかありませんでしたしね」

 

此処には廃都しかない。なんて事になったらまた探し直しだ。ただでさえ時間が経過してるのだからヘルメスが巨人を起こしてしまうかもしれない。別にだからどうしたと言ってしまえなくも無いが、単純に彼の思い通りに成るのが気に入らないので阻止したいとレフィーヤは個人的に思って居た。冒険の邪魔をしといて思い通りに成ると思うなと。

 

「まぁ、其の為にまずは探さないと何ですけどね」

「どうしたのいきなり」

「いえ、ただヘルメスをボコボコにする為に気合を入れなおしただけですので」

「そっか。っと、また広い場所に出たね」

 

そう言葉にするハインリヒの視線の先には広場。気球艇から見た景色と照らし合わせると、かなり中央に近い場所の筈。

 

「何かあるとしたら何か目立つ建物か」

「中央付近、ですよね」

「まぁ、細かい所を見て回ってたら時間が幾らあっても足りないしね。結構此処広いし」

「ですね。あぁ、もっとゆっくり見て回りたかった」

「それは僕も同じだよ」

「俺もだな」

「あたしもぉ」

「拙者も同じくでござるな」

 

どうやらまたも心が一つに成ったようだ。

 

「あぁー……何か在りましたかぁ?」

「いや、とくには」

「噴水だったかもしれない何かならあるわよ」

「これと言って隠し道的なのも無いね」

「と言うか隠せそうな場所が無いでござるな」

「同じように、ヘルメスのものだと思える様な痕跡も在りませんしね」

「まぁ、空飛べるなら降りて都の中を歩いて向かうなんて事はしないよな。そうする必要性でもない限りは」

「だろうね、少なくとも直前までは降りないだろうね」

 

そうなると見つけるのはかなり難しいのではと思って居ると、ポツリと小さくコバックが言葉を零す。

 

「そう言えば、巨人ってどの位大きいのかしらね」

「え? いや、巨人っていう位だし。かなり大きいんじゃないかな?」

「伝承と言うかではオラリオの下に居るあれを封じ込めたみたいに語られてましたし。それ位は在るのでは?」

「まぁ、オラリオのもかも知れないでしかないがな。まぁ、そう考えておくのが妥当だろうな」

「その割には、其れらしいのは気球艇に乗っている時に見ても無かったでござるがな」

「それは単純にここ等辺では無いか、或いは隠されてるかのどちらかだろ」

「そうだね。で、其の巨人と言われるほどのが隠されてると、と言うか隠せるとしたら……下?」

「オラリオと同じ感じでですか」

「まぁだろうな」

 

言ってみれば当然の事だった。巨人なんかが見てわかる様ならばもっと周知されていても可笑しくは無いのだから。幾ら神々の大半がオラリオにしか興味がないとはいえ、放置するとは思えない。それを考えれば見つからない場所、先程ハインリヒが言ったように下、さらに言えば地面の下にと言うのが妥当だろう。間違って居なければ。

 

と、事まで考えてふと思った事が一つ。

 

「…もしもここが巨人の眠ってる場所だったとして、その場合地面の下に居る可能性が高い訳ですよね」

「そうだな」

「で、それをヘルメスが起こそうとしてるわけですよね」

「推測が正しければだけどな」

「で、もしもヘルメスが巨人を起こしたとして、それが動いたとしたら」

「あぁー……まぁ、今経ってる場所が無事である保証は無いな」

 

考えてみる。もしもヘルメスが起こした巨人が今経っている場所、詰まり廃都の真下で眠っていたら。それが起きて、外に向かって這い上がって来たとする。まぁ間違いなくここは崩れ落ちる事だろう。そしてそれに巻き込まれれば、流石に死ぬ。耐久度などと言う都合の良いものは武具にはあれど体には無いのだ、恩恵もちと違って。

 

「…もっと急ぐべきですかね」

「どこにだよ」

「巨人の所とかですかね?」

「どこか分からないのにか」

 

その通りだ。急いだ方が良いのではなんて言ったが、そもそも何処に向かってだという話に成ってしまう。せめてという訳では無いが、何か分かり易く。ここに巨人が存在するか、ヘルメスが居るというのが分かればいいのだがと思い。

 

 

「なんか、其れっぽいというかこれって明らかにそうだよな」

「です、ね」

 

 

それっぽいのを見つけてしまった、割とあっさり。

 

「……在るな、階段が」

「周りが凄い壊れてて見辛いですけど、在りますね」

「うん、壊れてからそこまで時間が経っているって感じでは無いね。最近かな? 詳しくは分からないけど」

「じゃあ、ここかしらね?」

「其れにしてはあからさま過ぎはしないでござるか?」

「惑わすためにって可能性は、まぁ在り得る。が、違うだろうな」

「まぁ、単純に隠しようが無いですしね、これ」

 

良いながら見る。気球艇から見えた巨大な建造物が在ったであろう場所の一角に在る床が大きく窪む様に崩れているのを。

 

「……下に降りる為に道を作ったら連鎖的に崩れたとかかしら?」

「普通に開けたらこうなったって可能性もありますよ」

「かなりの月日が経過してるようだしな」

「まぁ、何にせよ。こんな事に成っちゃ隠しようがないよね。そんな事をしようとしたら時間と材料と技術が必要に成るし」

「直してまで隠すくらいならさっさと先に進んで起こすでござるな、拙者なら」

「だろうな」

 

さてと、地下深くまで続いているのだろう階段を見て。其れじゃあとローウェンは言葉を口にする。

 

「行くか。居るかどうか、正しかったのかどうかを確かめにな」

 

 

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