世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第百九十四話

狼煙を上げる。レフィーヤが作った氷で出来た足場の上で、壊れたり溶けたりしない様にし乍ら少し工夫して分かり易いように色を付けたそれを。

 

「……まさか自分から肩車をされに行くことに成るとは思ってなかったよ」

「そうしなかったら誰かは落ちてたけどな」

「分かってるよ」

「それにしてもレフィーヤちゃんは本当に何でもできるわよね」

「私がと言うよりは氷がなんにでも利用できるんですよ。いや本当に、氷って最高ですよね。氷万歳。ロキ様よりも氷を信仰したい」

「そのロキと言う人物が、いや神でござるか? とにかく泣いてそうでござるな」

 

そうだろうなとレフィーヤも思う。うち氷以下かいな?! なんて叫んでいる姿が容易に想像できる。

 

「……あ、来た」

 

そう言葉にしたのはコバックに肩車されている表情が死に絶えそうになっているハインリヒ。彼は空を見ながら指差す。その先にはゆっくりと向かってくる気球艇。

 

気球艇は其のまま彼らのほぼ真上で止まり、そして縄梯子を投げおろす。

 

「やっぱりもしもの時の備えは大切だな」

「で、ござるな」

 

なんて言いながら縄梯子を駆け上がるローウェンとゴザルニ。相変わらずすごい動きするなと思いながら、普通に縄梯子を登っていくコバックとハインリヒを見ながら思い。その二人を登り切ったのを確認してからレフィーヤは揺れていた縄梯子を掴み。

 

レビテーションを行使して一気に跳ね上がり気球艇に縄梯子ごと乗り込んだ。

 

「おかえりー」

「ただいまでーす」

「変な乗り方しないでもらえますか?」

 

変なとは失礼なと思いながらも普通でない乗り方である事は自覚していたので言葉にはしないレフィーヤ。縄梯子を綺麗に纏めてから、言葉にする。

 

「で、地面を巨人が突き破って出て言った筈ですが、どうなりましたか?」

「見た方が速いですよ」

「ならそうしますね」

 

縄梯子を邪魔にならない場所に置いてから外を見渡す。積りで目を向けたのだが。

 

「お、おぉぅ」

 

変な声が零れた。しかしそれも仕方ない事だ。何せ、巨人が歩いていたのだから。一歩踏み出すごとに山を潰し平原を窪ませ、大地に崖を生み出しながら。ちょっと、規模が可笑しい。

 

「いやまぁ、顔を見ただけでも大きいとは思いましたけど・・・・もう巨人どころじゃ無いですよねあれ」

「だとしても巨人としか言いようが無いけどな。世界樹と比べられる程の大きさなのは流石に…こう、反応に困るが」

「比べる…どっちの方が大きいのかしらね?」

「いやそんな訊かれても困るんだが」

「夜空を見上げながらあの星とあの星はどっちの方が遠いのかなんて訊くのと同じ様なものだしね」

「今、気にすべき事はその世界樹の如き巨人が歩いて居る事でござるしな」

 

その通りだと思うレフィーヤ。そしてそんな会話をしながら動き回っている彼らに向かってリリルカは問いかける。

 

「で、如何しますか?」

「全速力で追え」

「そう言うと思ってましたよ。という訳で面舵…いや取り舵? とにかくいっぱーい!!」

 

やれやれと肩を竦めてからやけくそ気味にリリルカは叫んで舵輪を回す。

 

「良し、準備出来たよ」

「と言うかこれを三日で作った、信じられないでござるな。流石変態とと言った処でござるか」

「正確には作っている途中だったものを完成させたっていうのが正しいみたいですけどね」

 

それでも、凄い事なのだがとすぐにでも使える様に準備されたそれを。大砲を撫で、そう言えばと思い言葉にする。

 

「これってちゃんと使えるんですよね?」

「使えるぞ。試して見たし」

「それって一発撃っただけですよね」

「一発撃てば分かるだろ。音と、弾が飛んでく様子を見れば」

「…ガンナーなら?」

「ガンナーなら」

「相変わらずガンナーの敷居がとんでもなく高い」

 

いや知っているガンナーは確かにみんな出来そうだけど。まぁ、全員キチガイだし人外も含まれるのだが。思い出してみて、全く参考に成らないとレフィーヤは思った。

 

「で、一番重要な事ですけど。これってあれに効くんですか?」

「まぁ、効かんだろうな」

「あ、やっぱりですか」

「其れはそうだろう。大きさが違いすぎるだろう」

「ですよねぇー」

 

と、言いながら軽く杖を撫でるレフィーヤ。正直、あそこまで大きいと印術も効くか分からない。いや、一つだけ確実に効くと言えるものが在るが、どうにも命中率が悪い。威力が威力だけに下手すると巻き込まれるし。

 

それでもと若しかしたらと杖を構えて、止めた。幾ら距離が在るから巻き込まれる必要が無いと言ってもその所為で唯でさえ当たりにくい術が命中する訳がない。ただの環境破壊に成ってしまう。それは流石に望むところでは無いなと横目で彼女を見つつ思う。

 

「取り合えず近づくまで待つしか在りませんね」

「そうだな。流石にこの距離だと大砲も届かないしな。届かなければ当たりようがない」

「こう、人外ガンナーのパワー的な何かで飛距離と威力を上げたりとかは?」

「人外パワーとかは知らんが方法がない訳では無い」

「え、そうなんですか?」

「大砲と砲弾にお前の印術を施す」

「成程、其れなら確かに行けるかもしれませんね」

「だろう?」

 

まぁ、それをするには圧倒的に時間が足りない訳だが。あと、それに大砲自体が耐えられるかも分からないというのが問題だ。結局の所、出来る事が限られている現状に、それでもと思いながらその僅かな出来る事をやる事にしたレフィーヤは。

 

静かに、崩れ落ち完全に姿を消した廃都を見つめるアスフィから視線を外した。

 

 

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