世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第二十話

唐突にローウェンが呟いた。

 

「そう言えばそろそろ半年か」

「何がですか?」

「俺がアスラーガに来て半年経つって事だよ。これ言わなくちゃ分らん事かレフィーヤ?」

「すみません」

「いや謝る事じゃ無いだろう」

 

言って、彼は弾の整理を始める。それを見ながら、レフィーヤもまた思い、呟いた。

 

「……もう一週間か」

 

第二迷宮であの魔人を、後に成って剛腕の石灰魔人と言う其の儘な名前が付けられた怪物を討伐してから、それだけの時間が過ぎた。

 

それをもう一週間というのか、まだ一週間と言うべきかレフィーヤには分からなかった。

 

そんな長いようで短くも感じる一週間。レフィーヤ、いやギルド・フロンティアは第二迷宮に何度か赴いた。それは、またあの石灰魔人が現れるかもしれないからと依頼を受けたからだ。尤も、最初の一体以来は現れていないから、そろそろ良いだろうと終わったのが・・・昨日の夜だ。

 

「金が貰える上に連携の修練に成ると、良い事尽くしな依頼だったな!! 所長から弾も値引きするからって言質とったし」

 

言いながら弾を買いに行ったローウェンはあれ、モンスターかなと思う程邪悪な笑顔を浮かべていたのだった。

 

買い込んだのであろう弾の整理に没頭するローウェンから視線を外して窓から世界樹を眺める。遠いが、しかし相変わらず凄い存在感を醸し出している。

 

息を吐く。 

 

依頼を終えたばかりだからと言って今日は迷宮には行かないとローウェンは言っていた。休むのは大事だと。しかし、しかしだ。

 

レフィーヤは思った。やる事が無いと。

 

いいや、印術の訓練だとか。或は、買い物だとかそう言った出来る事はあるのだが。まぁ、思い付くモノは全部行ってしまったのだ。もう少し訓練してこようかなと考えて、いやこれ以上は疲れるだけで身にならないと言われたんだったと思い出す。だからこうして自室に戻るのもなんだったからローウェンの部屋に来たんだったと。けれど、本当にやることが無くて。

 

駄目になりそうだと感じ、立ち上がる。

 

「出かけてきますね」

「ちゃんと気晴らしに成ると良いな」

 

更にと告げられた言葉を聞いて、レフィーヤは外へ向かって歩いて行った。

 

 

 

随分慣れた物だとアスラーガの街を歩きながら眺める。

 

オラリオ程では無いが、それでも十分すぎる活気にあふれていた。そこで一週間だ。大半は迷宮でモンスターと戯れていたりしたが、それでも一週間この街に居るのだ。慣れもするだろう。唯、慣れる事の出来ない事も在る訳で。

 

「あ! みみながのおねーちゃんだ!」

「ほんとだ、きょうもみみなげーよな!!」

「どうしておみみながいの?」

「どうでもいいからみみさわらせおらー!!」

 

そう色々と声を重ねながらワラワラとレフィーヤに群がって来たのは子供たち。何故か分からないが、酷くなつかれたのか、見付けると直ぐにこの様に集まって来るようになったのだ。いや、其れはいい。別にレフィーヤは子供が嫌いと言う訳では無い。無い、のだが。

 

「なぁなぁみみながおねーちゃん!!」

「ちがうよみみながじゃなくてれふーあだよ、れふーあおねーちゃん」

「あれ?、ぐりふぃすじゃなかったっけ?」

「どっちでもいいからみみさわらせろおらー!!」

 

「うん、レフィーヤ・ウィリディスだからね」

 

こう、反応に困る名前の間違い方をされるのだ。まぁ、子供だから仕方ないと言えなくもないが。あと耳を触りたいからって登ろうとしないで苦しいからとレフィーヤは思った。と、其の時だ。子供の一人が何かに気が付いたように指差して。

 

「さらせんせー!!」

「なぬぅ?!、ほんとだ!!」

「さらおねーちゃんはなしきかせてぇー!」

「みみぃぃいいいいいいいいい!!!!!」

 

叫ぶ様に掛けていく子供が向かうのは一人の女性、迷宮を研究しているというサラ・シュタインと言う学者だ。そう言えば話した事無かったなと思い、レフィーヤは近づく。あと、叫ばないでほしい。ある意味モンスターより怖いから。

 

「こんにちは」

「あら?、こんにちは。貴女は……確かギルド・フロンティアの」

「レフィーヤ、レフィーヤ・ウィリディスです」

「そう、話すのは初めてですよね。迷宮考古学者のサラ・シュタインです」

 

言いながら握手交わし。そして急いでるからと申し訳なさそうに子供たちに謝った。えぇーっと不満気に言った子供たちは、けれど仕方ないと歩いて行った。 随分と聞き分けの良い子供たちだ。なお、恐怖を感じさせるほど耳に執着していた子は、女の子に引き摺られていった。強い。

 

と、急ぎ何処かに行こうとするサラ。ふと、どの様な用事なのか疑問に思ったレフィーヤ。

 

「これから何処かに?」

「ええ、迷宮の調査と、クエストを出しに」

「クエストですか?」

 

クエスト、詰まりは依頼だ。何だろうか。迷宮に行くようだから護衛を探す為にと言うのが妥当か。いや、クエストを出した後、直ぐに向かう様子だから其れとは少し違うのかも知れない。 

 

「ええ、何時だったか第一迷宮の人工壁が壊れてしまったそうなので。其の修繕と実験を兼ねての砦建設の手伝いを冒険者に頼もうかとおもいま」

「そのクエスト、ぜひ受けさせて下さい!!!」

「え? あ、じゃあ、よろしくお願いします」

「任せて下さい!!」

 

思わず叫んでいた。何というかもう、運命を感じたレフィーヤだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少しして。

 

「今日、休みだって言ったよな?」

「すみませんでした!!」

「うん、別に謝らなくても良いけどさ。せめて俺とかに相談してから決める様にしような」

 

そんな会話と土下座する少女が目撃されたとかなんとか。

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