「と言う感じでした」
「うむぅ……」
レフィーヤの言葉を聞いて、ヘスティアは唸る、眉間に皴を寄せながら。数日前よりも目の下の隈が濃くなっている彼女は如何したものかと頭を抱えた。
「なんか…ある意味で一番判断に困るね、これ」
「まぁ、だろうな」
「新しいと言えば新しいけど、いやこの場合はどうなんだろう。適当な言葉が浮かばない」
「だが迷宮である事には変わりないぞ?」
「だから悩んでるんだよ……下に続く道が在ったていうのが問題なんだよなぁ」
「何処まで続いてるのかは分からないけどな」
「途中で途切れてましたっていうなら良いんだけどね。あぁ、その場合でも面倒な事に成りかねない。本当に面倒くさい」
乱暴に頭を掻きむしり、酷く重いため息を一つ。そして、疲れていると主張する顔をローウェンとその横に立っていたレフィーヤを見て。
「まぁ、そこら辺はまた今度って事で。取り合えず報酬だね」
はいこれと差し出された其れを受け取り、確認するレフィーヤ。それに間違いがないことを確認するとローウェンを見て頷いてみせた。
「大丈夫です」
「そうか。じゃあこれ以上居ても意味ないだろうからさっさと帰るか」
「そうしましょう。神ヘスティアも忙しいでしょうし」
「ははは。なんか悪いね」
「お気になさらず。と言っても気にするなら本格的に迷宮探索をすることに成ったらその依頼は真っ先に私達にお願いしますね」
「ちゃっかりというかがっつりだね。でもまぁ分かったよ。出来れば、って付くけどね」
「それで十分だ」
そう言って、ギルドから出る二人。何気なく、レフィーヤはローウェンを見る。
「それでこれからどうしますか?」
「俺は宿に帰る積りだ。銃弾の整理したいしな。レフィーヤは如何する?」
「私は、そうですね。少し街を散策してから帰りますよ。夕食までには帰りますので」
「そうか。それじゃあな」
「はい」
と、ローウェンと別れてレフィーヤは街を歩きゆく。機嫌良さげに鼻歌なんて響かせながら。さて如何し様かと考えながら行き交う人々を躱しながら歩く。
取り合えず、消耗した物を買っておいて、其の後は如何し様かと思いながらなにか良いものは無いだろうかと見渡す。未だに建てている途中と言った様子の建物が目立つが、それでも随分と進んだものだと別に意味が在る訳では無いが少し嬉しくなる。
さてどんなものが出来るのだろうかと思いはせる。見つかった迷宮といい、楽しみが多いものだと笑みが浮かび。
「……ん?」
ふと、脇道に意識が向く。少し薄暗い様に思えるその道に、何かが在ると冒険者としての勘が言っている。だが同時にそこに踏み込めば後悔する事に成るような気もレフィーヤはしていた。
が、ここで見に行かないのはそれこそ後悔することに成るだろうと思いレフィーヤは迷いなく踏み込み。道に転がって寝ている人を見つけた。
いやそれだけならいい。別に珍しいものでも何でもない。寝ていた人物がキチガイに見つかって転がされるまでが一纏めで最近よく見る光景だ。だが、その人物が問題だった。
思わずと言った様に手で顔を覆い、その人物の名を呟いた。
「何やってるんですかベートさん」
そう間違いなくロキファミリアが誇る高位冒険者の一人で在るベート・ローガその人が、脇道に転がり寝ていたのだ。深くため息を吐き、近づく。そして濃い酒の匂いに顔を顰める。見れば酒瓶が転がっていた、当然中身は残っていない。匂いの濃さから、飲んだのは一本だけと言う事は無いだろう。其れこそ酔いつぶれるほど飲んだに違いない。
罵倒紛いの言葉を叩きつけられた事をが在るだけに思う所は在る。が、いやだからこそか、そのような醜態としか言いようのない姿をレフィーヤは見たくはなかった。だからロキファミリアの元を訪れた際もはっきり言って酷い状態だった彼らに話しかけなかったのだが。
さてと、このままの状態で放置するわけにもいかないとレフィーヤは近づいて手を伸ばして、背負う。思って居たとおりの重さに少し態勢を崩しそうになるが、倒れる事無く歩き出そうとして、ふとこの光景も十分醜態なのではと思えてならない。寧ろ、道で寝ているよりよっぽどなのではと思って居ると、ベートが微かに呻き、動く。
「……てめぇ、は」
「あ、起きましたか」
「レフィーヤ、か?」
「はい、レフィーヤ・ウィリディスですよー」
確認するように零された声に返す。酒を飲んだ故か憶えている声とは違うが、不機嫌そうであるところは変わらずだった。そして彼は、今自分がどの様な状態なのかを理解すると眉間に皴を寄せ、舌打ち。
「……おい、降ろせ」
「分かりました」
「あ?――――――――いてぇ?!」
手を放し、勢いよく落ちてベートは頭を打つ。とてもいい音が響き、彼は悶える。何をするのかとレフィーヤを睨みながら。
「すみませんベートさん、わざとです」
「わざとなのかよッ!」
ふざけるなと言葉にしてさらに強く彼は睨みつけ。再び舌打ちを響かせて立ち上がり、歩き出した。酷く覚束無い足取りで。
「ベートさん」
「うるせぇ」
そう、短く呟くだけで彼はそれ以上は口にしようとはしなかった。その言葉は、その姿はまるで。いや、いいやこれ以上は駄目だとレフィーヤは首を振る。それ以上は考えるだけでも駄目だ。けど、それでもレフィーヤは彼のそんな姿を見たくはなくて。
「だから、気絶させて連れてきちゃいました」
「どうしてそうなったのでござる?」
「その場の勢い………ですかね」
「えぇー……?」
なんて会話をしている二人の視線の先には、白目を向いて倒れているベートの姿が在った。