レフィーヤは疑問に思って居た。
そもそもどうしてレベルやステータスが低下するなんて事が起こったのかと。それを知る為にレフィーヤは神の元へと向かって居た。
が、しかし問題が在った。
どうしてそうなったのかと言う理由が分からないかもしれないと言う事だ。超越存在と呼ばれている神々だが、別に全知でも全能でもない様だし。まぁ答えられそうな人物、というか存在をレフィーヤは二人程知っているのだが。
一人はアルコン。彼女ならばとレフィーヤは思って居る。とはいえ、知らないかもしれないのは変わらない、がそれでも手掛かりに成る様な事を知っていても可笑しくはない。まぁ、アルコンに訊く為にはまず彼女の事を探して見つけなくてはいけないのだが。
そしてもう一人は今向かって居る場所に居るヘスティア。現在のオラリオで唯一、しっかりと過去というか昏き禍の事を憶えていた人物、いや神物だ。さらに言えばアリアドネの糸で出来たリボンを持ってたり、神と呼ばれると何とも言えない表情を浮かべる大変面白い神。尤も彼女に関しても知っているかもしれない程度だと言う事ととても忙しい事が問題だ。
これと言った理由が無ければ会えないかもしれない位、仕事が山と化している。其れこそ彼女の死因は過労死に成るだろうと思わせるほどだ。いや逆にそれを防ぐために積極的に合わせてくれたり、はしないだろう。そこまで余裕ないだろうし。
そんな訳で、もう少し落ち着いてからならばともかく、今のとても処でなく忙しいヘスティアに会う為には相応の理由が必要なので。
「其れで…連れてきたのか」
「はい」
「せやで」
ロキファミリアの主神で在るロキと共にギルドに訪れたレフィーヤだった。幾ら忙しくても神が訪ねて来たとなれば対応しなければいけないだろうと思った故の行動だ。勿論、ロキも乗り気だった。やはりと言うか、理由を知らなかったから。
「いやまぁ、何時来ても良い様にはしてたけどさ。そっかぁ、君が連れてきたのかぁ」
「なんやドちび、不満でも在るんかいな?」
「別にぃ? ただ君達ってそうやって何かきっかけが無ければ来れない様な奴だったんだって思っただけだよ」
「えらい棘が在る言い方やな」
「まぁ、このヘタレが! って思ってたからね」
「なんという事ですか、ヘタレだったんですかこのヘタレ!!」
「なんでレフィーヤにまで罵られてるんうち?」
「ヘタレだからだよ」
「ヘタレだからですよ」
「…うち、泣いてもええ?」
「駄目に決まってるでしょう」
「駄目なんかい!?」
えぇー! と驚きの声を上げるロキから視線を外し、ヘスティアを見る。
「それで、何時来ても良い様になんて言うって事は、知っているんですか?」
「レベルダウンの原因の事かい?」
「えぇ」
「っと、せや。はよ教え、序でに妙に力が入らない事に関してもな」
「急かさなくても教えるよ全く。まぁ、原因は昏き禍けどね」
「あぁ、やっぱりですか」
「タイミング的にそうやろな」
「で、どうしてそうなったかと言うとだね、断言が出来る訳では無いんだけど。多分、昏き禍が恐怖心を糧として居る事が関係あると思うんだ」
「恐怖心、ですか」
「そうだ。奴に対して恐怖するとそれを昏き禍は食らい力を増すんだ」
「で、それと恩恵とがどないな関係が在るっていうんや」
「僕たちは見た目は人だけど根本はエネルギーに意志が宿っただけの存在だ。そして恩恵はそんな僕たちの命、いや体かな? そう言っても良いエネルギーを少しだけ貸し与える事で成り立っているんだ。影響が出ない範囲でね。それを踏まえた上で考えれば分かる事だよ」
その言葉にレフィーヤは考え。すぐに答えに辿り着いた。
「…恐怖心と一緒にエネルギーも一緒に奪われたと言う事ですか?」
「うん、そう言う事だ。と言ってもさっき言った通り断言できることじゃないけどね。しっかりと確認するには誰かが犠牲にならなくちゃいけなかったし。そもそも、そんな事をしたら昏き禍が強くなっちゃうからね」
「まぁそれは仕方がない事では在るというのは分かりますが。えっと、詰まりレベルが低下する様な事態が発生したのは」
「単純に、レベルを維持できるだけのエネルギーが無いからだね」
それが、本当だとしら。
「…どうしようもないですね」
「時間しか解決してくれない問題だからねぇ」
「妙に力が入らないのってそういう事かい」
その話を広めないのも分かるというものだ。
「まぁ、そう言う理由もあって冒険者の引き起こす問題の四割くらいは如何し様かって頭を抱える羽目に成ってるんだよね」
「あぁー、レベルダウンが原因やったとすると……せやなぁ」
「まぁ、仕事の大半は自称神である君達が押し付けてきた奴なんだけどね」
「いやうちは割かしちゃんとやってるやろ」
「ちゃんと……はっ!」
「鼻で笑われた」
「ちゃんとって言いたいんだったら道端でセクハラをするのをやめてからにして欲しいものだね。苦情が凄いんだよ苦情が! と言うか何でうちに来るんだよ君の所で処理しろよ!!」
「いや、それは、あれやから。うちのおかんがその、あれやん」
「そんな事僕が知るか!!」
なんて事を言い合う二人。それを聞きながらレフィーヤはふと、思いついた事が一つ。それがうまくいったならと想像し、思わず笑みを浮かべた。
「まぁ、神様が色々としでかして居る事に関しては置いておくとして。私としても冒険者の問題はなんとかしたいんですよね。同業者が問題を起こすと私達にも結構影響が出てしまいますし」
「あぁー、そうだね。でも」
「どうしようもないのは分かってますよ。何度もいってますし。あぁ、こう何かあればいいんですけどね。迷宮みたいなのとか」
「……ん? レフィーヤ君?」
「まぁ、確かにそうやな。迷宮、ダンジョンが残ってればそれに意識を向けさせる事も出来たやろな。言うても仕方ない事やけど」
「そうです。でも思っちゃうでしょう? あったらなぁって」
「せやなぁ」
「え、いや、レフィーヤ君?………あ、あぁー。そう言う事か、そう言う事かいレフィーヤ君」
「えぇはい」
「は?」
如何いう事なのかと首を傾げるロキを横目に、ヘスティアはレフィーヤが如何いう意図でそう言葉にしたのかを察し、呻く様に声を零す。
「いや、まぁうん。それが一番手っ取り早いと言えばそうなんだろうけどさ。あぁー……うん、もうちょっと時間が欲しいかな。しっかり話合わないといけないし……うん、せめて三日くらい」
「別に急かすつもりは在りませんよ。其の所為で報酬が用意できないなんて事に成ったら大変ですし。私達もちゃんと話をする必要が在りますからね。まぁ分かり切ってますけど」
「そこら辺はちゃんとしてるんだよねっていうか毟り取る積りなのかい君は。いやまぁ、そうなるだろうけど……取り合えず、うん、そう言う事で」
「はい、期待して待ってますね」
「そうかい……はぁ、まだ一日経ってないよね。君たちが報告してから。しかも今度って言ったはずなんだけど」
「そうですね」
「……ははッ」
乾いた笑みを浮かべ、さて如何し様かと考え始めるヘスティアを見てレフィーヤは満面の笑みを浮かべていた。これからの事を考えて、胸躍らせながら。
「……いやどういう事やねん」
そして首を傾げるばかりなロキの声が、響いたという