くるりと杖を回しながら、何気なく思う。
「流石に強引過ぎましたかね」
「依頼の話が?」
「えぇ、はい」
「まぁ確かに少しどうかと思う所は在るな。だが敢えて言うとあれだな、良くやった」
「其れほどでも」
在ると思います、なんて思いながら杖を握り直し、仲間達を見る。それぞれがそれぞれ、準備万端で。だからローウェンも頷いて見せた。
彼らは笑顔で迷宮に足を踏み入れた。
地図を見て、辺りを見渡してまた地図を見て。ふっと一息入れてから改めて見渡してから一言レフィーヤは呟いた。
「ここは違うみたいですね」
「違う? なにが」
「アスラーガ近くに在った迷宮とはって事ですよ」
「あぁー…そうだね、構造とか変わってないしね」
「えぇ、其の事が少し残念なような、そうでない様なって感じなんですよね。まぁ、あれと同じだったら困った事に成ってたでしょうけどね」
主に恩恵持ちのオラリオの迷宮に潜っていた冒険者たちが。何だこれはと困惑する事間違いなしだろう。レフィーヤがそうだった様に。
まぁ現在のレフィーヤはまたあの良く分からない不思議な迷宮に挑みたいと思って居たりするのだが。
「まぁ取り合えず地図が嵩張る様な事に成らずに済みそうで良かったと思っておきます」
「アルカディアの四階層みたいなあれか」
「あの忌々しい階層の事を思い出させないでくださいよ」
「あれ、レフィーヤ未だにあそこの事を引きずってたのかい?」
「ハインリヒさんがハイ・ラガードの四階層の事を未だに引きずってるのと同じですよ」
「そうか、なら仕方ないね」
と、同意するように頷いたハインリヒの表情はその時の事を思い出してか、当然の様に死に絶えていた。多分、自分もそんな感じなのだろうなと、レフィーヤは思った。
「まぁ、其れは置いておくとして。何処まで続いてると思いますか?」
「そうだな。個人的にはかなり深くまでと思ってるぞ」
「ほほぉー……勘ですか?」
「正解」
と、何でもないかのように口にするローウェン。だが実際その通りに成りそうなのが彼の凄い所。伊達に人外と呼ばれてはいない。まぁ、これで凄く浅かったら全力弄り倒しながら笑い飛ばすつもりなレフィーヤだったりする。
なんて思いながら上から落ちてきたモンスターを杖で殴り飛ばしてから術を叩き込み。言葉にする。
「そう言えば依頼の事なんですけど」
「あぁ、迷宮が何処まで続いているのか調べて来いってやつだろう」
「其れの、かなり深くまで続いている様なら目印に成る何かを見つけてきて欲しいってやつですけど。目印ってあれですよね。樹海磁軸で良いだろうって成ったじゃないですか」
「あればだがな」
「そう、其れに関してなんですけど。樹海磁軸以外に目印に成る様なものって、在りますかね?」
「知らん。其れこそ、話した通りその時に成って見て考えるしかないだろう」
「まぁ、そうなんですけど」
そう言葉にしながら息を吐く。
「やっぱり強引に事を進めたのが良くなかったんですかね。そうでなければこう、ふわって感じの依頼には……いえ、そう変わりは無かったかも知れませんね」
「だろうな。見つかったばかりの迷宮なんてそんなものだしな」
「ですよね。なんかこう、情報が殆どないというか、或いは当てにできない感じがして」
「楽しいだろう?」
「それはもう、凄く」
アスラーガの第五、第六迷宮を思い出すなとレフィーヤは思う。何とも言えない手探りをしている感覚が堪らないのだとレフィーヤは笑顔を浮かべる。まぁ、訪れる度に構造が変わるアスラーガ付近の迷宮とは少し感覚としては違うのだが。楽しい事に変わりはない。
「まぁ、でもちゃんと依頼を熟せるかどうかって思いはしますけどね」
「其れに関しては開き直するか無いだろう。無かったら無かったって報告するしかないんだし」
「……それもそうですね」
あぁ、確かにと頷きながら悩む事では無かったなとレフィーヤは思う。
「と言う事は後はもう冒険を楽しむだけですね!」
「そうだな」
ふっと笑みを浮かべながら下へ続く道を下りていくローウェンとそれに付いていく彼ら。さてと、この下はどうなっているのだろうかと余裕を持ちながら警戒しつつ降り。
「取り合えず変わらないみたいだな」
迷宮の二階部分は一階とそう変わらず、洞窟を思わせる場所のままだった。
「やっぱり前のオラリオの迷宮と変わらず、って考えるのは早計ですよね」
「まぁ、モンスターとか罠とかがどうなってるのか分からないしな」
「そう言えば前の迷宮にはこう、殺意に塗れた罠って在った覚えが無いんですよね。私が知らないだけかも知れませんけど」
「迷宮の悪意とかいう奴か。まぁ、だがそれに関しては昏き禍が恐怖心を食らうとかいうのを考えるとそうだとしても納得できるけどな」
「……詰まり、じわじわとなぶって少しづつ食らって居たと?」
「かも知れないってだけだがな」
「性格が悪いですね昏き禍」
「お前には言われたくないだろうがな」
「ローウェンさんにもでしょうけどね」
「違いないな」
「全くですね」
自分の性格が良いとは欠片も思って居ない二人。ある意味、イイ性格しているともいえるが。なんて、思った直後に歩みを止める。レフィーヤだけでなく、全員ががだ。それは気が付いたから、今までの敵よりも強大な何かが居る事に。
「……F.O.E、って感じのなにかが居ますね」
「だな。凄い主張してるな。此処に居るぞって感じで」
「まぁいるかもしれないとは思ってたけどね」
「で、ござるな。しかし、一気に迷宮らしくなった気がするでござるな」
「確かにそうね。今までのにも居たものね」
だが、彼らは取り乱さない。先程と変わりなく余裕を持ちながらも油断なく武器を構え。進んだ先に居るだろうそれに向かって歩み、見る。
そして、そこに居たのは…蟻だった。