世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第二百二十二話

静かだなとレフィーヤは思いながら眼前の男性、神ウラノスを眺める。

 

尤も近場に川が在り、少し離れた所に滝が在るのだから静かと言う状況には程遠いのだが。やはりモンスターの気配、視線が無いと随分と違う。まるで今いる場所が迷宮では無いと錯覚しそうになる程だ。

 

「いや今現在絶賛モンスター達が人類を襲うというお仕事を休業中ならある意味では外よりも安全なのでは?」

「何とち狂った事言ってるんだよお前は」

 

呟きを聞いていたローウェンにそう言われた。若干呆れを滲ませているのは文字通り呆れているから、では無くそうしたら面白そうだからである。詰まりおふざけだ。

 

本当に迷宮の方が安全などと考えている訳が無い。と言うか正直な所完全に安全と言える場所などないだろうなと今更だが思う。現在のオラリオだってすでに三回程度はモンスター達の襲撃にあっているのだから。

 

尤も全盛期ほどでないにしろかなりの数の冒険者が居るのだから問題なく撃退できたのだが。寧ろモンスター達よりも頭がとてもあれな変態たちに因る被害の方が酷かったりするのはが愛嬌だとレフィーヤは思う事にした。

 

なんて下らない事を武器を構えながら考えていると、ウラノスとローウェンがほぼ同時に視線を動かし、同じ方向を見る。

 

何を見ているのか、なんて考えるまでも無く。同じようにレフィーヤも視線を動かし、やっぱり思った通りにそこに居たコバックとゴザルニの姿を見る。

 

戻ってきた二人。そして見知らぬ巨躯の男性で在るウラノスをさり気無く警戒しながら、なんて事も無いように首を傾げながらゴザルニはローウェンに語り掛けた。

 

「どういう状況でござる?」

 

その問いにさてなんと答えるべきかと一瞬考えて、しかし考えが纏まる前に佇んでいたウラノスが呟いた。

 

「…揃ったか」

 

まるで確認するかのようなその一言に、彼らは言葉では無くサッと視線を交らわせる事に因って意思疎通。そして肯定する様にローウェンが頷いて見せた。ウラノスは小さく、そうかと呟くと軋む音を響かせながら歩き始めた。

 

まるで付いて来いと言わんばかりに迷いなくだ。

 

ゆっくりと軋む音を響かせながら歩いていくウラノスの背を見ながらさて如何するかと考える…事無くレフィーヤは、いや彼女だけでなく全員が後を追う様に歩き出す。

 

当然だが罠である事は考えている。相手が神であっても目的を口にしていないのだから十分にあり得るのだから。けれどそれでも彼らは迷いなく付いていくのは罠が在るかも知れないからと歩みを止めては何時までも先に進めないと知っているから。

 

冒険者は時に自ら危険へと飛び込み、それを持てる全てを駆使して踏み越えていく事が必要なのだから。

 

そして今はそうやって行動した方が良いだろうと判断しただけの事。尤も、どちらにせよ進むのだ。違いと言えば案内人が居るか居ないかの違いでしかない。

 

しかしと、レフィーヤは思いながらウラノスを見る。

 

神ウラノス、元ギルド長にして現ギルド長であるヘスティア曰く、ずっと昏き禍を監視し続けていた神物。そしてきっと、自分達が知らない事を知っているだろう存在。

 

同じような事していたアルコンがそうだったしとレフィーヤが考えていると、ローウェンが彼に向かって語り掛けた。

 

「しかしまぁ、見た処では在るが随分と無理している様だが大丈夫か?」

「そう言えばずっと軋む音がしてるしね。何だったら僕が見てあげようか? まぁ、意味ないだろうけど」

 

そう少し前に歩み出て労わる様にハインリヒが口にする。言った通り、本当に意味が無い事だろうがそれでも何もしないよりはマシだろうと。けれど。

 

「そなたらが気にする事では無い」

 

そう一蹴される。ならば仕方ないかとハインリヒは肩を竦めて下がった。ローウェンはローウェンでまぁだろうなと言った様子で軽く首を振った。

 

「ま、こんな場所まで来れるんだから余計なお世話だったのは確かか」

「………」

 

軋む音が響く。ウラノスは語らず歩き続ける。この様子では何故この第三階層に居るのか、或いはどうやってここまで来たのかなどと言った疑問を問いかけても答えてくれそうにないなとレフィーヤは思う。

 

少し方法を変えてみようかなとレフィーヤは思う。例えば煽って見るとか、或いは関係が在りそうなことを意味ありげに口走って見たりとか、なんて考えたのは一瞬だけ。すぐにそれは駄目だなと思いなおす。

 

何時もならしていたかもしれないが今は、彼にはそれはしてはいけない。何故なら彼からは、神ウラノスからあの上帝に、そうあの天の支配者たる超越者オーバーロードに近い何かを感じたのだ。

 

と言っても流石に、上帝と同等などと言う事は無い。彼に比べれば目の前を歩いているウラノスのそれは消えかけの蝋燭の火の様なものだ。

 

尤も、だからと言って警戒しない理由にはならないのだが。なんて当然の事を再確認するレフィーヤの視界に、下へと続く階段が入り込んだ。神ウラノスがそちらへ向かって居る事から目的地は今いる場所よりも下なのだろう。

 

まぁ、今いる階は調べたのだから隠し通路でもない限りは当然の事か、と言うか下の階から少し変では在るがそれらしい気配がするからやはりと言った様子で迷いなく、そして彼等に一切配慮する事無く無言で降りていくウラノスを追って、彼らもまた階段を下りていく。

 

 

 

そして。

 

「………なにこれ?」

 

下りた直後に彼らが目にしたのは、巨大な何かとしか言いようのないモノだった。

 

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