世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第二百三十三話

何時もの宿の何時もの部屋。

 

そこにある何時もの椅子に座りながら、レフィーヤは在るものを弄っていた。それは、ウラノスの依頼の報酬。其の内の一つである機械仕掛けのペンダント。彼と同じで何処かかの超越者を思わせるそれは、きっと凄い性能を秘めているのだろう。

 

だから彼女は思う。秘めていないで出てきて欲しいと。

 

「まさかただのペンダントだったり?」

 

なんて、独り言を呟いてからそれは無いなと軽く肩を竦める。本当にただのペンダントでしかないならば、時折酷く濁ったような連続する音、雑音が零れる事もないのだから。

 

とはいっても、結局はそれがどの様な物で在るのか分からない事に変わりはない訳で。はぁ…っと溜息をついて文字通りお手上げだと腕を伸ばす様に振り上げて軽く揺らす。勿論、手の中のペンダントを落とさない様に気を付け乍ら。

 

「これあれですかね。変態たちに預ければ分かるものなんですかね」

 

なんて言葉を口にしながら扉へと視線を向けて。

 

「そこの所どうなんですか?」

「ふむ。止めておくべきだろうな」

 

ですよねと、レフィーヤは零し。するりと扉をすり抜ける様にして部屋へと足を踏み入れたフード姿の少女、アルコンは言葉を続ける。

 

「確かに、彼らの技術や知識は称賛に値する領域では在るがそれは彼らには荷が重いだろう。精々、解体した上で良く分からないという事が分かる程度のものだろう」

「そうですか。で、貴女ならこれどんなのか分かりますか?」

「ふむ。しっかりと見れば」

「じゃあはい」

 

と、彼女が言い終わる前にペンダントを投げ渡すレフィーヤ。一切の躊躇の無い其の行動に彼女は驚くことなくペンダントを掴み取る。そして手の中でクルクルと回しながら暫く眺め弄り、ふむと頷いた。

 

「成程」

「あ、分かりましたか?」

「あぁ、しかし…そうだな」

 

またしても、ふむと呟きながら何かを考えるアルコン。一体如何したのかと軽くレフィーヤは首を傾げ、しかし何か言うことなく、考えがまとまるのを待つ。

 

「…まず、間違いない事はこれがかの超越者によって作り出されたもので在ると言う事だ」

「やっぱりですか」

 

そこに驚きは無い。こんなものを作れるのはレフィーヤが知っている中では彼しか、オーバーロードしかいなかったから。これで彼以外が作り出したものだったとしたなら驚く処だ。あと、しいて言うならばアルコンすら彼の事を超越者と呼んでいる事に少し驚いた事位だろうか。

 

「そしてこれの機能は彼が収集したあらゆる情報を閲覧することが出来ると言う物…だと、思われる。恐らくは、だが」

「断言はしないんですね」

 

無言で頷くアルコン。機能自体は凄まじいの一言で表すほか無い物なのだとレフィーヤも分かった。しかし、何故断言しないのだろうかと言う疑問は当然、生まれる。流石の彼女でもオーバーロードの作ったものを完全に把握する事は出来なかったと言う事なのだろうかと思い。

 

「どうやら、情報を引き出せない状態の様だ。実際に使い確認する事が出来ないからこそそうだとは断言は出来ない」

「あぁ、そう言う理由ですか…原因は分かりますか?」

「それも、恐らくでしか無いが。可能性としてはこれが私にも分からない部分で不調が出ているのか。若しくはそもそもが情報を保管している場所そのものに何かあったか。それとも単純に距離が離れすぎている所為か」

「なんかどれも在り得そうですね」

 

 

ペンダント事態、かなり古い物の様に思えるし。距離が離れすぎているというのも理由としては頷けるものだ。そして何より、ある意味大本と言える場所に何かが在ったかどうかで言えば可能性などと言うどころでは無く、そこで盛大に暴れたから何かしら不具合が在っても何も可笑しくは無い。

 

そして、もしも暴れたのが理由、原因だとしたらただの自業自得ともいえるのでは、とレフィーヤは一瞬浮かんだ考えを頭から追い出した。考えてもしょうがないし。

 

「まぁ、取り合えずこのペンダントは今の所ただの装飾品でしか無いって事ですか?」

「ただのと言うには、聊か強固では在るが…そう言えるだろう」

「強固、ですか。それって大切な物だから壊れない様にって事ですかね」

「恐らく。私はかの超越者では無い故、断言は出来ないが」

「それはまぁ、そうでしょうね」

 

当然の言葉に、其れはそうだと頷いて見せるレフィーヤ。まぁ取り合えず疑問は晴れたとアルコンから手渡されたペンダントを軽く眺めてから、改めて彼女を見る。

 

本題に入る為に。

 

「それで、何か用が在ってここに来たんですよね? それともただ単に知り合いに会いに来ただけとか?」

 

それは其れで嬉しくはあるとレフィーヤは思う。そこまで気安い関係になれたというのはそれなりに喜ばしい事だから。そうでは無いと分かり切っているが。

 

彼女は、何時もの様にふむと言葉を零す。少し考える様に。

 

「何の用でかと言えば依頼が在るからここに来た」

 

だが、と彼女は言葉を口にする。

 

「私では無い。依頼を、助けを求めているのは。私はただその声を聴き、そして君たちに届けに来ただけだ。私の知る、私の尤も信頼する事の出来る冒険者である君たちの元に」

「アルコンさんじゃないって…じゃあ誰が?」

 

問いかけに、彼女は答える。

 

 

 

「世界樹からの、依頼だ」

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