世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第二百三十五話

パラパラと、ヘスティアから渡された星喰らいに関する資料に目を通す。酷く顔を顰め乍ら。

 

「これ、如何しましょう」

 

と、思わず言葉が零れた。ヘスティアから渡された資料に記されていたことが、頭を抱えたくなるような事だったからだ。そして彼女は頭を抱えはしていないが呻いてはいた。

 

「如何したそんなに呻いて」

「あ、ローウェンさん」

 

如何もと言いながら、彼女は部屋に入ってきたローウェンを見る。

 

「何か用ですか?」

「あぁ、用と言うか確認だな。どの程度まで準備は済んだ?」

「あとはもうそこに並べてあるのを仕舞うだけですよ」

 

言いながら、ほらとレフィーヤが軽く指差した方を彼が見ると。言って居た通り、そこには冒険に必要な物が並んでいた。勿論、食料や食料などと言った基本的に時間が経つと使えなくなるものは含まれていないがそれ以外のものは全て確認済みであると彼女は言う。その言葉に、ローウェンはそうかと言いながら何気なく並べてある荷物に近づき、其の内の一つである印石を手に取った。

 

「…これ、割れているみたいだがそれでも大丈夫なのか?」

「え、本当ですかそれ?」

 

椅子から立ち上がり彼に近づく。そしてほれと手渡された印石を確認する。すると確かに、かなり小さくはあるがひび割れていた。

 

「うわぁ、本当だ。何が原因…あぁ、成程深く掘りすぎたのか。と言う事はこれだけ…なんて考えるのは拙いですし、取り合えず印石は全部再確認しないとですねこれ。しかし、やっぱり掘るんじゃなくて筆か何かで書いた方が、いやでもあれはちょっとでも消えるとそれだけで使えなくなるし。うーん」

「で、改めて訊くがどの程度まで準備は済んだんだ?」

「ローウェンさんのお陰でまだまだ全然って状態に成りました。今まさに」

「其れは良かった。俺に感謝しても良いんだぞ?」

「えぇ本当に。ありがとうございます」

 

ひび割れているだけ、等とは口が裂けても言えない。確かに完全に二つに割れてしまいでもしなければ一応使えるが、何時そうなるか分からない事に変わりなく。そしてそれがもしもいざと言う時に起こったならばそれは致命的だ。一応、出発前にする確認の時に気が付くことが出来ただろうが。やはり、速い方が良い事に変わりない。

 

「あぁ、成程そう言う事か」

「はい?」

 

さて材料はあったかなとレフィーヤが思って居るとそんな事をローウェンが零す。一体何のことかと視線を彼に向けると、彼の手の中に星喰らいに関する資料が在った。そう言えば一番最初に資料を見たのは彼だったなと今更レフィーヤは思い出した。

 

「まぁそうだよな。これ見たら唸りたくもなるよな」

「と言う事はローウェンさんもですか?」

「いや唸りはしなかった。が、まじかとは言ったな」

「ですよね」

 

と言いながら確認をしつつ頭の片隅で先程まで見ていた資料の内容を思い出す。それを簡単に、分かり易く言葉で表すならば。

 

強いからやばい。

 

これだけである。ムスペルの時の様に環境が牙をむくでも無く、オーバーロードの様に超越的頭脳と肉体を持つでも無く、フォレストセルの様な不死性を有するでもなく、原初の闇の如く瘴気をばら撒く訳でも無く、昏き禍の如く巨大と言う訳でも無い。

 

光で出来た剣を高速で移動しながら振り回す。これだけでも相当であるがそこに周囲に異常をばら撒く音を発したり、自己回復すらする。もうやばいと言う他ないのだ。そこに加えて喰らった存在の能力だか特性だかを取り込むことが出来るかも知れないとまで書かれている。

 

勿論、単純に強い敵と戦った事はある。オーバーロードの居城に居たジャガーノートなどがそうだと言えるだろう。が、同程度であると考えるべきでは当然無い。何せ相手は星を滅ぼしそして喰らう様な事が出来るという存在なのだ、最低でもオーバーロードや昏き禍などと言った超級の存在であると考えるべきだろう。

 

そんな少ない情報だけでも強大で在り、実際はもっと凄まじいのだろう星喰らいと言う存在を思い浮かべ、レフィーヤは言葉を零し呻きながら思ったのだ。

 

如何すれば、勝てるだろうかと。

 

勿論、勝てないかもしれないとは思った。と言うか勝てる見込みは現状ほぼ皆無だろう、実際に行ってみたら思って居た以上に弱っていたとか、そんな奇跡じみた事が起こらない限りはほぼ確実に負けるとレフィーヤは思った。

 

だがそれは其れとして諦める訳がないし、そんな事を理由に世界樹に向かわないなどと言う選択をするわけがない。相手が強くて勝てそうにないからなどと言う理由で冒険を止めて居たらそもそも冒険者などと名乗ってなどいないのだから。

 

まぁ、何時も乍ら自分は本当にどうしようもない程に馬鹿だなとはレフィーヤは思ったが。

 

さてと、確認を終えた印石を置き別の物を手に取りながらレフィーヤは問う。

 

「で、ローウェンさんは何か思いつきましたか? 星喰らいに関してのあれこれは」

「いや全然」

「……一つもですか? ローウェンさんにしては珍しいと言いますか」

「とは言ってもそもそも情報が古すぎて判断のしようがないだろう」

「あ、それ言っちゃいます?」

「言うだろう、と言うかそう考えるだろう普通。てか合ってたにしても喰ったものの能力とかを再現とかができるんだとしたらそれこそ当てはまらんだろう」

「あぁ、まぁそうですよねー」

「まぁそれでもあらかじめある程度知る事が出来たのはありがたいがな」

「で、結局どうする積りなんですか?」

「いつも通り」

「いつも通り、と言う事は…あれですか」

「あれだな」

 

そう、あれだ。詰まり、今考えても仕方が無いからどんな状況に対応できるように準備を万端にして油断なくゆく。と言う事だ。本当に、いつも通りの事をするだけ。

 

結局、冒険者は最終的にそこに行く着く。出来る事をするだけだと。

 

 

 

 

「…と言うかお前、印石の不備に気が付いてなかったのって」

「言わないでくださいよ。分かってますから」

「星喰らいの対策だとかを考えてて見落としたよなお前」

「だから言わなくても分かってるって言ってるじゃないですか!」

 

本当に、いつもどおりが一番だとレフィーヤは思うのだった。

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