世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第二十六話

一歩前に足を踏み出す。

 

それは誰にでも出来る事で、しかし実際に出来るものは少ない事。果たし、レフィーヤは其れが出来ているか、分からなかった。

 

「ので、如何なのか訊きに来ました」

「訊かれても困るわよ」

 

鎧を磨きながらコバックはそう返す。その通りだろうと思う。行き成りそんな事を訊かれても困るのは当然だろうと。けれど、それでも気に成ってしまうのだ。

 

「いえ、コバックさんは如何思っているのかを言ってくれるだけでいいんです」

「って言われてもねぇ」

 

うーん、と悩む様に唸る。何と言えば良いのか考えて、考えて。そして。

 

「それ、あたしよりもローウェンちゃんに聞くべき事よね?」

 

一番最初にあったんでしょう?と、そんな言葉が返ってきた。その通りと思うが、同時に如何なのだろうとも考える。

 

「いえそこまで、知り合ってからの時間に違いはありませんよ?」

 

たったの一日。それだけの違いしかない……のだが。

 

「でも、そう言うの関係なしに。的確に言ってくれそうよね彼って」

「それは、分かります」

「偶に同じ生き物なのか疑いたくなる時あるよね。彼に限らず最上位に位置する冒険者は」

「あ、お帰りなさいハインリヒちゃん。今日は捕まらなかったのね?」

「全力で逃げてきたからね」

 

言いながら、それでも疲れを感じさせるハインリヒ。彼の言っていた事、それはレフィーヤも同意見だ。正直、何度も思った事だから ローウェンだけでなく、恐らく同じ様な領域だろうホロンやゴザルニ、後ゴザルニとかゴザルニは、同じ生き物とは思えない。仁王立ちしたまま滑って去って行ったり水面に立ってたり。

 

あれ、二人と比べるとローウェンはそれ程でも無い?

 

「錯乱している様だから言わせて貰うよ? 見る事無く動くモンスターの急所を撃ち抜くとか普通出来ないから」

「――――――――はッ?! 確かに!!」

 

言われて、よくよく考えればその通りだ。なんで出来るんだあんな事。

 

訊けば答えてくれるだろうか……いや、訊いたところで技術の一言が返って来るだけだろう。確証が在る訳では無いが凄く想像に容易い。と、そこまで考えてレフィーヤはハッとする。

 

「そういえば何の話してたんでしたっけ?」

「それ貴女が言うの?」

「ん?トップクラスの奴らがどれ程人として大切な物を投げ捨てているのかと言う話じゃなかったのか?」

「違いますよ」

 

投げ捨てている事に関しては否定しない。だってそう思ってるし。

 

「レフィーヤちゃんは前に一歩踏み出せてるかどうか、其れをあたしに訊いて来たんでしょう?」

「……あ、そう言えばそうでした」

「レフィーヤちゃん大丈夫?」

 

心配する様に、声を掛けられる。自分でも大丈夫だろうかと思うから、詰り大丈夫でないという事だ。

 

「ま、直ぐに忘れるって事はそれ程気にしていないって事だろう」

「あらローウェンちゃん」

「御帰りー。何処行ってたの?」

「ちょっと代表殿とお話にな」

「またミッション?」

「そうともいう。いやぁ……楽しくて良いね!!」

 

心底楽しそうに笑う。ミッションは大体、緊急事態で在ったり。誰かの命が掛かっていたりするものだ。それを楽しいで済ませるとは。やっぱり一寸あれな気がする。

 

まぁ、其れは其れとしてと取りあえず問い掛けることにしたレフィーヤは口を開く。

 

「因みに、貴方は如何思いますか?」

「前に進めているか如何か的なあれか?」

「……まぁ、大体そんな感じの」

「そうだな。逆にもしも進めて無いと思ってるならお前の中で一歩前に出る事に対しての難易度が高すぎてドン引きする」

「なんで?!」

 

其処までの事なのかと。一歩前に出るのはとても難しい事じゃ無いかと。

 

「お前の中では、冒険者に成るのは一歩に含まれないのか?」

 

そう考えたのに、一言で潰された。

 

あぁ、嗚呼そうだろう。そうだったのだと思い出した。それがどれ程勇気が必要で在るのかを。オラリオでもアスラーガでも変わらずだ。それが一歩と言わないならば、確かに彼の言う通りだ。難易度が高すぎる。

 

「はいじゃあ下らない思考は放り出して話するぞー」

「下らないは流石に言い過ぎじゃ無いかしら?」

「馬鹿野郎、その程度の事を放り捨てられなければ高位冒険者にはなれんぞ。この馬鹿野郎。この馬鹿野郎!!」

「三回も言う事無いじゃない?!」

 

「でも武器や防具を全部整備に出したりしてましたよね?」

 

「それは申し訳ないと思ってるわよ?!というか、え? レフィーヤちゃんも責めるの?! ハインリヒちゃん助けて!!」

「僕、子供たちに連れ去られるのを笑顔で見送った事恨んでるから」

「それ今言うの?!」

「おい、コバックおい」

 

ここにきてまさかの事実。思い出して見ればそうだ。連れ去られていった、そう言ったのだからその場面を見ていても可笑しくないだろう。

 

「判決は?」

「有罪、吊るすぞ」

「待ってお願い?!」

「・・・仕方ない。言いたい事が在るなら聞いてやろう」

「ありがとう!」

 

「と言う訳でコバックが話してる間にカースメーカー呼んで来いレフィーヤ」

 

「分かりました」

「申し訳ございませんでしたッ!!!」

 

コバックに因る渾身の土下座。精一杯の謝罪の意が込められたそれを見てローウェンは微笑み。

 

「其処まで言うなら……カースメーカーは勘弁してやろう」

「あ、ですよね」

 

コバックを吊るしたため、ミッションに関わる話は翌日に持ち越されましたとさ。

 

 

 

 

 

「あ、もう一つ聞いて良いですか?」

「何だ?」

「如何やったらモンスターをちゃんと倒せますか?」

「死ぬまで攻撃を叩き込め」

「……其れだけ?」

「其れだけ」

 

其れだけらしい。

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