世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第二十七話

「さてと」

 

音を立てて手を叩くローウェン。そんな彼が、いいや彼等、ギルド・フロンティアが居るのは第四迷宮・逢魔の樹海前。風に揺られる葉の音と香りが心地よい場に立っていた。

 

「と言う訳で、ミッション・第四迷宮の最下層を調査せよ。張り切っていくぞー」

「おー……と、言いたいんですけど。どういう事ですか?」

「そのままの意味だぞ?」

「いえ、そうじゃ無くてもっと詳しく説明してほしいのですけど」

「詳しくねー……うーん。剛腕の石灰魔人居ただろう?」

「居ましたね」

 

忘れる訳が無い。あれだけ恐ろしく、そして呆気なく終わった、終わってしまった怪物の事を。

 

「紅蓮の魚蜥蜴いたじゃん?」

「居ましたね」

 

少し前に、怪物よりも尚恐ろしい冒険者が居るのだと思い知らされたそれは。何と言うか忘れようが無いだろう。

 

「で、その二体とも最下層に居たじゃん?」

「……詰り、第四迷宮の最下層にもそれが居るのではないかと思われるから調査をする様に、って事ですか?」

「正解」

「なら最初からそう言ってくださいよ」

「でも間違ってなかっただろう?」

 

言葉に詰まる、その通りだからだ。でも、もう少しちゃんと言ってくれてもいい気がする。のだが、そう言えばちゃんと考えれば分かる事だと返されそうだ。直ぐに想像できたから間違いない。

 

「でだ、もしも最下層に居るならばそいつの退治。居なくても、琥珀が無いかどうかを調べる。そう言うミッションだ」

「成程……いえ、なんで琥珀なんですか?」

「………」

「なんで黙るんですか?」

 

「いや、お前が話を聞いて無かったと分かったからどうしてくれようかと考えてた」

「なんで?!」

 

何を聞いていなかったというのか。何処かで話を聞き逃していたのだろうか?

 

彼の言い方からしてとても重要な事なのだったのだろう。しかし、一体何時?

 

「まぁ、レフィーヤが話を聞いていなかったとしても取り敢えず今は良いか。そんな事は後だ。もっと重要な事がある」

「重要な事?」

 

それ何だろうか。疑問に思う、同じ様になんで他の二人は黙っているのだろうかとも。いや、本当に何で?

 

チラリと、横目で見る。

 

見えたのは、真剣な表情を浮かべる二人。昨日、ふざけていた時の顔とは明らかに違う。これは自分の方が可笑しいのかも知れないと思えてしまう。

 

まぁ、後で聞いて見たら。レフィーヤが訊いてくれるみたいだから黙っていただけらしいが。

 

何せよ疑問に思った、気に成ってしまったから。彼女は問い掛けた。

 

「それで、重要な事って何ですか?」

「この迷宮にはD.O.Eが発生する……との事だ」

「D.O.E?」

 

何だそれは?

 

そんな疑問が浮かび。けれど、これまでに程表情が引き締まっている事に気が付いた。或は、先の二体の怪物と相対した時以上かもしれない。

 

「レフィーヤが知らんのは仕方ないとして。二人はどの位知ってる?」

「そう言うのが居るって言うのは聞いてたわ。確か、一年前にアスラーガの街に大打撃を与えたモンスターだとか」

「知ってるって程じゃないけどね。あれでしょ?何で倒せたのかが全く分からなかったって言う」

「あら、そうなの?」

「そうらしいよ」

 

ここで問い掛けられたから口を開く二人。互いにしている事を言い。しかし、其処で止まる。たいして知っている訳では無い様だ。

 

「うん。大体そんな感じと言うか、それだけなんだよな」

「はい?」

「現状におけるD.O.Eに関する情報。いや、後職業は関係ないとか言われてたような気がするな」

「それは……えっと、どういう?」

「詰り、よく分からんと言う事だ!!」

「大丈夫なんですかそれ?」

 

いや、言って於いて何だが大丈夫では無いだろう。寧ろ何を持ってそれで大丈夫だと言うのか。そう思い、けれど。

 

「居ると分かっていて倒せるとも分かってる。これで十分だろう」

 

そう、彼は言った。其れ以上は必要無いとでもいう様に。

 

「ただまぁ、そうだな」

 

呟く様に、銃を軽く撫でながら彼は続けて口にする。

 

「行き成りそれと戦えとは言わんよ。と言うか戦うな」

「え?」

「ちょっと、それどういう事よ」

「出会ったら逃げろ…と言う事かな?」

 

「いや、俺がやるから」

 

「……それこそ、大丈夫なんですか?」

 

ほぼ、未知の敵と言ってもよいだろうD.O.Eと言うモンスター。其れを相手に、ローウェンは一人で相対すると言っている。それは、如何しようも無い程、無謀な行為に思えてならない。それは、他の二人も同じようで顔を顰めている。

 

「……レフィーヤちゃんの言う通りよ。流石に其れは危険すぎるんじゃないかしら?」

「金は大丈夫なの?」

 

心配する様に言葉にするコバックと、少し違う事を口にするハインリヒ。確かにそうだ。何時も帳面とにらめっこしてるローウェンだ。未知の敵と相対して……その、幾ら割引してもらったとはいえ、金銭面的に大丈夫なのかと。

 

ローウェンは、ふっと笑みを浮かべて。背負っているリュックサックを軽く叩いた。

 

「今回の代表殿は太っ腹でな。銃弾の費用を肩代わりしてくれたんだよ」

 

だから遠慮無しでいけると。楽し気に口にする。若しかしてだが、金銭的に気にしなくていいから戦いたいと言っているのだろうか?

 

……十分あり得る気がする。

 

「あぁ、そうそう。一応言って於くが別にお前達が力不足だからとかそう言う事じゃ無いからな?」

 

念を押す様に、彼は三人を見ながらそう言った。別に、そんな事は思っていない。と言うか、もしも彼がそんな事を思ってたなら直ぐに口にしてるだろう。うん、してる事だろう。

 

「なら何でですか?」

「好きなだけ銃弾ばら撒けるから」

「えぇー……?」

「ただ、それだけじゃないぞ?」

 

「ここらで、初心者と中堅冒険者であるお前達三人にちゃんと見せておこうかと思ってな」

 

彼は、三人を見ながら笑みを浮かべて口にする。

 

「最上位の冒険者、その本気を・・・な」

 

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