世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第二十八話

第四迷宮に足を踏み入れた四人を待ち受けていたのは、痛い程の静寂と吐き気を催す程の敵意。レフィーヤは思わず口を押え、コバックとハインリヒでさえ緊張が滲み出ている。のだが。

 

ローウェンだけが、鼻歌を歌いながら平然と進んで行く。

 

ってちょっと待って。なんでそんな平然としているのかと。其れが気に成って仕方が無いレフィーヤ。D.O.Eと言う未知のモンスターが何時現れるのか分からないのに。なんでと。だから警戒しながらも訊いてみる事にした。

 

「そんな風にどんどん進んで大丈夫なんですか?」

「D.O.Eが何時現れるか分からないのに……て、意味で訊いてるなら大丈夫と答えよう」

「…なんでそんなはっきり」

「理由はあってな、今見せられるぞ」

 

ほらと、片手間のように通路から現れた軍隊バチを撃ち抜きながら見せる様に差し出した。それは黄色の光を湛えた円形の不思議な物体だった。

 

「なんですかこれ?」

「D.O.Eは特殊なモンスターであると分かっているのだからならば何かしらの方法で探す事が出来るのではないかと言う考えから開発されたD.O.Eの接近を色で知る事の出来るアイテム。D.O.Eレーダーだ!!」

「…そうですか」

 

レフィーヤは反応に困った。

 

便利であるのはそうだろう。確かに、そんな物が在るならどんどん進む事も出来るだろう。何せ、近くに居ないと分かるのだから。けれど、けれどだ。其れ以上に思った事が一つあり、口から出る言葉である。

 

「そんな物がある事を何で教えてくれなかったんですか?」

「いや、D.O.Eってよく分からんモンスターだって何度も言ってるだろ?」

「そうですね」

「つまりは、だ」

 

言葉を区切り、ふらりと現れた森ウサギの頭部を一瞥もくれず撃ち抜きながら言った。

 

「よく分からん方法でよく分からん内に目の前に現れるかもしれないだろう?」

「それは無いでしょう、流石に」

「よく分からん事態に巻き込まれたのかよく分からんが気が付いたら第一迷宮に居たお前が言うのかそれ?」

「すみませんでした」

 

其れを言われてはお終いだ。言い返せない、だって下手したらD.O.E等よりもよっぽど摩訶不思議なのだから。若しかしたら世界一不思議な存在かも知れないレフィーヤだった。

 

けれど、それで黙るのは彼女だけ。他の二人が何とか言ってくれるかもしれないと視線を向ける。

 

「あぁー…在り得なくも無いわね」

「ま、そう言うの関係なしに。其れがちゃんと機能してるのかどうか実際に僕たちが試した訳じゃ無いから警戒するのは当然だと思うけどね」

 

何故か頷き納得するコバックと真面目に語るハインリヒ。おい、ハインリヒは兎も角コバックは何故納得してるのか。納得する要素在るのか。在るなら教えてくれと口を開く。

 

「なんでコバックさんは納得してるんですか?」

「いや、だってね。実際、ローウェンちゃんが言ったようなことが出来る物を知ってる訳だしねぇ?」

「あれか」

「そう、あれよ」

「なんですかあれって?」

 

「「アリアドネの糸」」

 

「んぬぅッ」

 

変な声が出たが気にする事が出来なかった。そう確かにそうだ。レフィーヤよりもよく分からない謎アイテム筆頭、アリアドネの糸。其れを出されたら、いや、それがある事を知っていたら若しもを考えないのは可笑しいだろうと。そう思えてしまう。未だに、なんであんな風に端っこを持って投げるだけで無事に帰れるのか分かってないらしい。なんでだろう、不思議だね。

 

まぁ、何にせよ。

 

「別に言わなかった理由では無いですよね」

「ぶっちゃけるとハインリヒが言った通りなんだよな。これ、ちゃんと言われた通りの機能あるか分からんし」

「…こう、試すとかしなかったんですか?」

「と言うか、それも含めてのミッションみたいな感じだしな。まぁ実際迷宮に入って、説明された通りみたいだったし、なら教えても良いかと……お、階段じゃん」

 

ま、普通の事だなと。呟きながらトノサマカエルを撃ち抜いてから降りていく。其れを見て確かにと思いながら。同時に。だから何で見もせずに撃ち抜けるんだ、と急所を撃ち抜かれて即死したトノサマカエルをチラリと見てから。続く様に階段を降りた。

 

 

 

その、直後だった。

 

 

 

歩みが止まる。唯、何処からともなく感じた何かの圧に心が敗北した気がした。気が付けば膝から崩れ落ちようとしており、慌ててハインリヒが受け止める。そんな彼の表情も、酷く硬かった様に思える。コバックはと、少しだが息が荒くなっている事を自覚しながらも視線を巡らせて、臨戦態勢の彼を目にした。やはり、此れはレフィーヤは気のせいと言う訳では無い様だ。ローウェンはと、探せば。

 

「ほぉ――――本当にD.O.Eが―――――近くに来ると――――赤くなるんだな……このパン美味いな」

 

パン食べてた。

 

「ていやいやいや、なんでこんな状況でパン食べてるんですかというかよく食べられますね!?」

「え、腹減った状態ではははいはふ……ん、無いだろう?」

「飲み込んでから喋ってください……取りあえずキチガイって凄いって事にしておきます」

「遠慮が無くなって来たな。俺に似てきたな!!」

「ゲパァッ?!」

「しっかりしてレフィーヤちゃん、傷はまだ浅いわ!!」

「ローウェン、苦しんでいる仲間に止めを刺そうとするのは良くない」

 

「解せぬ」

 

確実に何かが、D.O.Eが近づいて来て居るだろうに。空気がすっかり緩んでしまっている。よく言えば緊張が解けたとでも言えばよいだろうか。何にせよ、先程まで死にそうだったレフィーヤは、別の意味で死に掛けたが問題なさそうだ。

 

だから、ローウェンは彼女から視線を外し前を見る。そこから現れたそれに向かって。

 

「じゃあ、やりますかね」

 

銃を、構えた。

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