「いやぁ、非情に面倒な事に成りそうでワクワクが止まらんな!!」
「あれを見ての感想がそれですか」
「でも実際面白そうだろう?」
流石にそれはと、かすみ屋の一室に敷かれた布団に寝転がっているローウェンを見ながら思う。そう、流石に巨大な琥珀の中に在ったものを、D.O.Eを見てそんな風に思う事は出来そうなかった。
第四迷宮の最下層、其処から帰還する途中、ローウェンは語った。最下層の怪物と琥珀の関係を。まだ、推測の域でしかないがと口にしたが、しかし。在り得ない事では無いとも。
「まぁ、詳しい事はサラ教授とか代表殿が考えるだろうから。俺達はダラダラしてようぜー…て感じで行こう」
「良いんですか其れで?」
「良いんだよ。俺達働き過ぎじゃね?って思わなくも無いし?だから次が来るまではお休みって事だ」
「次・・・・ですか」
「そ、もしもまた迷宮調査する場合は俺達がやる事に成るだろうからな。と言うか俺達以外がやる事に成ったらたたきん”ッ!!……ちょっと相談して譲ってもらう事に成るだろうしな」
「叩きのめすって言おうとしませんでしたか?」
「そう聞えたか。なら言い直すとしよう。俺達以外がミッションを請け負うものなら叩きのめしてでも奪い取る!!」
「そっち?!」
そう言うのは普通言い訳の方では無いのかと、本音の方を口にするのはどうなのかと。というかやっぱり叩きのめす積りだったのかと。実際にやりそうなローウェンに、レフィーヤは少しだけ戦慄した。
「あぁー……あ、そう言えば貴方が倒したD.O.Eって前に街を襲ったのと違うみたいなことを言ってましたけど」
話題を変える様に、疑問に思っていた事を口にする。
「ん、その事か。確かに、俺が聞いてたのは鹿みたいなやつでは無かったな」
「なら、他にも居るって事ですよね?」
大丈夫なのだろうかと、問い掛けようとして。気にする事では無いと言いたげにローウェンは手を振る。
「キチガイ共がヒャッハァーしながら第四迷宮に突っ込んでったらしいから他にD.O.Eが居たとしても大丈夫だろう」
「あ、そうですか」
なら大丈夫だなと、思ってしまった。一人でD.O.Eを嬲る事の出来るキチガイにキチガイと呼ばれる様な冒険者だ。きっと、そうきっとそのキチガイ達も一人でD.O.Eを苛め抜く実力があるのだろう。そもそも、勝てない様な実力の者を其処に送るとも考え辛いし。
「まぁ、と言う訳でやる事無いから休暇な休暇。俺寝るからお休み」
「あ、はい。おやすみなさい」
「お前もしっかり休めよー」
そう言って、ピクリとも動かなくなるローウェン。正直に言って生きているのかと疑問に思う程微動だにしていない。一応と確認すると、寝息はちゃんとある。詰り寝ているだけ。寝るのが早いなと思いながら。さて、休暇だと言われてどうしようかと考えて。
「特に思いつかなかった訳でして」
「ほへえへっはほほほほひひははへへほはふは」
「あの、飲み込んでから喋ってください」
「はほ……んぐ、それで拙者の所に来た訳でござるか」
「はい」
飲み込まずに喋らなきゃいけない決まりでもあるのだろうかと思いながら、レフィーヤは彼女の、ゴザルニの言葉に頷いた。そう、言った通りだ。休暇、休み。さて如何しようかと考えては見たものの、此れと言ってやりたい事は思い至らず、なら普通に休むかと部屋に戻ったものの眠れず、そう言えばまだ昼だったと思い出し、ならばと外に出て、街をふらついていたら彼女を見つけて今に至ると言う訳だ。
途中、子供の波に攫われるハインリヒを見つけたが蛇足なので笑顔で見なかった事にした。ゴザルニは爆笑していたが。
「しかし、休みに何をしたらいいのか分からないとは。また困った悩みでござるな」
「それは……はい」
オラリオに居た時はそうでは無かった。鍛錬してるアイズさんを眺めたり、決死の覚悟でアイズさんを誘って買い物に出たり、じゃが丸くんなる食べ物を幸せそうに食べるアイズさんを見たりって……あれ?
「アイズさん関係しか……無い?!」
「そのアイズさんが誰なのかは分からないけれど碌な事では無いと察したでござる」
否定、出来なかった。傍から見れば間違いなくストーカーの其れだったから。でも、仕方ないじゃいないか。アイズさんって尊いんだもん!!神様だってせやなって強く頷いてくれることだろう。まぁ、同類と思われたくはないが。
「ぬん。詰りあれでござるか。その、アイズさんが居ないからどうやって休暇を過ごせばいいのか分からなくなってしまったと」
「それは、そう……何でしょうか?」
いや、多分そうなのだろう。自分でも如何かと思う理由だ。オラリオに戻ったら少しは自重しようと思うレフィーヤ。その腕を、掴むゴザルニ。
「え?」
「なら取りあえず、拙者と一緒に食事にいくでござる」
「は?」
「休みに知り合いと食事に行くなんてよくある事でござろう?」
「それは、そうですけど」
「だから一緒に食事を楽しむでござる……吐くまで」
「吐くまで?!」
其れは嫌だと首を振るも、引き摺られる様に連れて行かれるレフィーヤ。
「尤も、好きなだけ食べられるというのはある意味幸福な事なのだろうと私は思ったのだった」
「え、誰ですかあの人?」
「ござ?あぁ、カースメーカーのポシェ殿でござるな。幸せな人を見るのが好きで不幸そうな人を見ると呪い殺してでも幸せにしようとする何とも捻くれたキチガイでござる」
「えぇ……?」
「貴女にキチガイと言われたくはないけれど、でもうん私も暇だから付いて行く」
「では三人で吐くまで食べるでござるー」
「いえ、其処まで食べたくは無いんですけど?あの、ちょっとー?」
引き摺られていくレフィーヤ。その後、琥珀軒のテーブルで死んだように倒れ伏している姿が目撃されたという。