世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第三十四話

第五迷宮、氷晶ヶ岳。真冬にも拘らず真夏の如き暑さに悩まされるアスラーガや他迷宮と違い、此処だけは変わらず氷に閉ざされており。詰りは一言で云うと。

 

「くっそ寒いな!!」

 

其れに尽きる。暖かそうな恰好をしているローウェンや、同じく温かい上に印術の応用で寒さを遮れるように成っているレフィーヤは兎も角。ハインリヒとコバックは少し震えている。其れでも問題なく動いているのは流石の一言であるが。あと、特徴と言うにはに少し違うだろうが。

 

「強くなってるなモンスター」

 

と、突進してきた大イノシシの頭部を二発の弾丸で撃ち抜いて仕留めたローウェンが呟く。いや、今までと変わらず

やっておいて何を言っているのかと思って、違う事に気が付く。二発、そう二発だ。モンスターを仕留めるのに彼が撃った弾の数。今までは一発だったのに。小さいようで、大きな違い。

 

「でも本当に、強いわね。気を抜くと抜かれそうになるわ」

「要するに何時も通りなら問題ないと」

「そう言う事」

 

他のモンスターの処理を終えたコバックとハインリヒが続く様に口を開く。やはり、彼等も同じように思って居た様だ。

 

「でも、なんで此処まで強いのかしらね?」

「環境故では?」

「あぁ、此処まで寒ければそれに耐えられるように強くなりますよね」

 

下手なモンスターでは寒さにやられてしまいそうな第五迷宮。結果的に生き残ったのは強いモンスターだけだった。十分あり得る事だった。

 

「ま、それが正解だろうと間違いだろうとモンスターが強い事に変わりないけどな。後、レフィーヤはもっと燃やせるか?」

「いやもっとと言われましても」

 

既に結構な数を火球で燃やしている。其れなのに更にやれというのかと。でも言いたい事は分かる。レフィーヤ以外ではここのモンスターを倒すのに時間が掛かってしまうのだ。強さもそうだが、それ以上に寒さで。ローウェンはほぼ変わらず戦って見せているが、しかし倒すのに必要な数が増えた為に余り使いすぎると持たないのだろう。

 

「まぁ、出来る限りって感じですかね」

「そうかい、じゃあ無理が無い程度にだな。と言う訳で俺が一発ぶち込んで動き止めるから頼むわ」

「分かりました」

 

と、爆発カズラに似た、言うなれば氷爆カズラを火球で燃やして頷く。其れはもう念入りに。爆発されたら溜まった物では無い。其れをされて酷い目に在った訳だし。ダメージよりも寒さ的に。

 

と、吐息を白く染めながらローウェンが辺りを見渡す。何かを探す様に。

 

「如何かした?」

「いや、静かだなぁ……と」

「騒がしい位だと思うけど」

 

ハインリヒの問い掛けに、そう答えたローウェン。思わずと言った様に返した彼の言う通りだと思う。ふらふらとモンスターが現れては戦闘しを繰り返して。静か、とは言い難い。なのに、ローウェンは静かだという。其れが意味するのは。

 

「やだねぇ、殺気やら敵意やらを隠すのが得意な敵って。あぁーやだやだ」

 

何処に居るのか分かり辛いと、現れた跳獣の足を撃ち抜きながら呟いた。そう言う事かと止めを刺しながら思う。確かに、そう言う考えてみれば、静かだ。今までで一番と言って良い。尤も他の迷宮ではモンスター達は隠そうなどという積りが皆無であったように思えるが。

 

だがそんな事は如何でも良い、重要なのはモンスターがそう言った物を隠そうとしている事だ。

 

「確かにそうね。ローウェンちゃん程気にしてはいなかったけど、言われてみれば」

「と言うか、今まで戦ってきたモンスターも僕たちが移動してるから遭遇している……って感じだね」

「まぁ、動いているんですから其れは仕方が無いですよ。問題は」

「何で隠しているのかよね」

 

そう、何故隠しているのか。或は潜んでいると言ってもいい。其れを行う理由は。

 

「ま、狩りか逃げかの何方かだろうな」

「狩りか……逃げる為、ですか」

「こんな環境だからな、餌に恵まれないからそうやって息を潜めて居るって言うのが理由としてあるだろう」

「成程ね、なら逃げっているのは」

「分かった上で訊いてるな?まぁ良いけど。絶対に勝てない相手をやり過ごす為にだよ。というか、それ以外あるか?」

 

警戒しながら問い掛ける様に言葉にするローウェンに、首を振る。其れ以外は思いつかないと。ならと更に考える。狩りならばすぐだ、襲い掛かってきているのがこれ以上ない証明だろう。ならば、逃げる為に潜んでいるとするならば。一体何から?

 

此れも分かり切っている。

 

「…完全に居るな、D.O.E」

「やっぱり、ですか」

「D.O.Eレーダー反応してるしな。ほら真っ赤」

「早く言ってくださいよ」

「お前、取り出すのどんだけ面倒なのか分かってる?戦闘がきっちり終わって一息つかないと出せたもんじゃないぞ。この第五迷宮ではだけど」

 

其れを言われると言い返せない。皆、邪魔にならない程度にとはいえ着込んでいる。懐に入れてあるそれが何時もよりも取り出しずらいのは仕方のない事だ。戦闘中なら尚の事だ。そして彼等の事を餌と認識したモンスター達が引っ切り無しに襲い掛かっている為に、確認する暇が無かったのだろう。

 

それでももっと早く言ってほしかった。真っ赤って次の階層で遭遇しかねないじゃないかと。レフィーヤは発見した階段を見ながら思う。

 

「ま、元より警戒してたんだ。居ると分かっただけ重畳って事で……いくぞ」

 

言って見渡し、問題無いと頷き返されたのを見て階段に向かい。

 

 

 

 

 

其れを破壊して現れたなにかに吹き飛ばされた。

 

 

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