疲れた、そう呟きながら倒れる様に地面に寝転がるレフィーヤ。背中に石かなにかが刺さって若干痛いが。気にしない。そんな事よりも疲れた眠い。でも寝れない。なんでか、とても気分が良いからだ。遠慮なく印術をぶっ放したからだろうか。
「あ、もう終ったのか」
よく聞く声。確認するまでも無いが一応はと、顔を動かして見る。其処に居たのは、やっぱりローウェンだった。彼はよいしょと呟きながら、ゴトリと何か重そうなものを置いていた。
「それはなんでござるか?」
「大砲」
はてと首を傾げて問い掛けたゴザルニに、何でも無いかのようにローウェンは答えて。彼女は固まった。大砲、レフィーヤは聞いたことが無いが、ゴザルニが固まる様な何かなのだろう。其れこそ、普通使える様な物では無いとか。
「え……え?大砲? なんで大砲でござる?」
「いや、D.O.Eが現れたって言ってたからな。八つ当たり的な意味ぶち込もうかと思って埃被ってたこれを引っ張り出した……んだが、やっぱり止めとくべきだったかね」
「いやなんで大砲でござるか? というか、うてるのでござるかこれ?」
「ガンナーの嗜みだ。誰だって撃てる」
「貴方と同じ様な恰好した人が全力で首振ってますけど?」
ほらと、寝転んだまま指差す。ローウェンが視線を向けると、其処には確かに全力で否定する様に首を振るガンナーの少女の姿が。其れをみて、ふっと息を吐いてから肩を竦めて。
――――――ゴリッ
「撃てるよな?」
「えぅ、あ、撃て…ます」
「よろしい」
「脅しましたね」
「脅したでござるな」
そんな二人の言葉に、ローウェンはふっと笑みを浮かべて。
「いや、こいつはまじで撃てるからな? しかしもそれを主要武器にしてるキチガイだから」
「敵を木端微塵にするのって最高に気持ちがいいですよ?」
よいしょと背中からローウェンの持っていた物よりも少し厳つい大砲を取り出す少女。言っている事が物騒すぎる。というか、ならさっきのは茶番なのかと。それにしても。
「ガンナーってキチガイしか居ないんですか?」
「態々、大砲を持ち歩けるように改良してまで使ってる時点でキチガイでござるからなぁ。否定できぬでござる」
「解せぬ」
「駄目ですローウェン。めげちゃ駄目! もっとみんなに浪漫を分からせるべきですッ!!」
「いやでも大砲をメインに使ってるお前はまじでキチガイの極みだと俺も思うわ」
「憶えてろ下さい畜生――――――ッ!!」
うぉおおー、っと叫びながらどこかに去って行く少女。そう言えば彼女は誰だったのだろうかと、ローウェンを見る。
「あ、あいつはクルミって言ってな。趣味が大砲で敵を粉々にする事と大砲本体で叩き潰す事とか言うキチガイを通り越して完全に危ない奴だ。敵味方関係なく撃ち込んでくるから迷宮で遭遇したら気を付けろよ?」
「分かりました、気を付けます」
「そこまでのキチガイはあまり見ないでござるな……近くに居るでござるが」
「俺の事言ってんの?」
「に、ござる」
「飲み物飲みやすい様に喉に穴開けてやろうか?」
「申し訳ないでござる」
またふざけてる、何て思いながら見上げていると。ふいに、ローウェンがレフィーヤを見てそう言えばと呟いた。
「お前あれだな」
「なんですか?」
「一日持たなかったな」
「んぐぅっ?!」
そう言えばそうだった。今朝、もう無理だとか。冒険できない戦えない。そんな事をローウェンに向かって言っていたのだ。言って於いて此れだ。無理とは一体何だったのか。其処で思い出す。結局、あの時ローウェンが言っていた事は何だったのかと。
「あれどういう意味だったんですか?」
「あ、あれ?……あぁ、あれか。あれなぁ、え、分からない?」
「はい」
「考えれば直ぐ分かる事なんだがな」
「でも分かりません」
そっかぁ、なんて呟きながら頭部を掻く彼は、レフィーヤを見ながら言った。
「お前さ、冒険者が冒険をする事を諦められると思うか?」
「無理でしょう」
冒険を諦める様なのは冒険者とは言え無いと。思わず即答してしまい、吹き出す様に笑う。同時に納得する。あぁ、成程確かにと。彼は、見抜いていたという事か。無理だなんだと言って於きながら。欠片も冒険する事を諦められていなかった事に。
「時にレフィーヤ、俺は興味深い事を聞いたのだよ」
「と、言いますと?」
「今回、街を襲ったD.O.E。それは第五迷宮から現れたそうで」
「ほうほう」
「なんでも、それが現れる前に、一階層に作られた砦を別のD.O.Eが破壊してしまった所為らしい」
「成程」
「そしてその破壊D.O.Eは…蟷螂の様な姿だったそうだ」
「……へぇ」
「興味深いだろう?」
えぇとても、と呟く。詰りは今回の出来事はその蟷螂の所為。前回の迷宮探索が失敗したのも蟷螂の所為。要するに全部蟷螂の所為。
「いやぁ……許せんよなぁ」
「許せませんね」
「放置できないよなぁー?」
「できませんね」
「と言う訳で、行けるか?」
「当然でしょう」
宜しいと、彼は笑いながら言った。其れを見ながらレフィーヤは立ち上がる。直ぐに向かう、何て事はしない。流石に。唯単に、いい加減ちゃんとした場所で休みたいと思っただけだ。其れに、やる事も在る。
「取り敢えず、コバックさんに謝らないといけませんね」
「土下座は止めとけよ? あれ結構困るから」
「本当ですか? 分かりました」
「じゃあ困らせたい時にだけやる事にします」
「そうしとけ」