世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第四十一話

弾丸の補充、完了。盾の新調、完了。薬の調合、完了。ホロンから杖の強だ・・・入手、完了。謝罪もすでに済ませて、土下座もなんの関係の無い時に人目の多い所でやった。詰り、準備完了。

 

故に再びの第五迷宮。

 

「……っあぁ、温かい」

 

で。のんびりとスープを飲んでいた。

 

「いやぁ、ハインリヒさんって料理上手ですねー」

「まぁ、調薬とそこまでの違いは無いからね。其れなりにって感じだよ」

「でも凄いわよ本当に、あたしがやっても何故か炭にしかならないのに」

「それ火力の問題…いや、だけじゃないな」

 

そんな会話をしている彼等が居るのは第五迷宮に造られた砦の中だ。何故、と問われたならば。待っているからだ。何処に居るのかが分からないD.O.Eが現れるのを。

 

「あとどの位ですかね?」

「まだ黄色だな。近づいては来てるがまだ遠いな」

「そうですか……あ、おかわりお願いします」

「はい」

「どうも」

 

暖かなスープを飲みながら、見渡す。見えるのは何時もの三人…だけでは無い。

 

「寒いとポーズの切れが悪くなるな」

「と言うか何でポーズとるのでござるか?」

「趣味だ」

「そうでござるか」

「彼は何時でも幸せそう……うん良い事、実に良い事」

「ポシェ殿もぶれないでござるな」

 

と言っているのはホロンにゴザルニ、そしてポシェの三人。その近くに布の塊の様な状態で寒さに耐えながら震えている人が一人。詰り、今この砦内部には八人の冒険者がいるのだ。

 

「多いですよね」

「そうだな、砦でも無い限りはとてもじゃ無いが碌に戦えたもんじゃない人数だな」

「色んな意味で大丈夫なんですか?」

「対D.O.Eと言う意味では大丈夫だ。其れ以外は知らん。若しかしたら砦が壊れるかもしれんがな」

「大丈夫じゃないですよねそれ」

「だな」

 

まぁ、気にしてはいないが。そもそも、D.O.Eの進行を阻めばその際に壊れてしまうものだ。そうなる事が前提で造られているのだから気にしても仕方ないとも言えるが。

 

何気なく、視線を布に包まった人物に向ける。やはり、震えている。それは寒さ故かそれとも。立ち上がり近づく。

 

「大丈夫ですか?」

「んぇ?!」

 

ビクリと震え、布から顔を出す。それは少女だった。少し見えた彼女の装束は確かダンサーの物で、その……とても寒そうだった。

 

「…寒そうですね」

「とても寒い、あたしは戦う前に凍って死ぬんだ」

「…あの、若し良ければ寒さを何とかしましょうか」

「?!出来るの?」

「まぁ、それなりにですが」

「お願い!!」

 

それじゃあと、言葉を置いてから印術を発動する。前に見た、火球と氷槍の応用。寒さと暑さを防ぐ為の物を彼女に。すると、驚いた様な表情を浮かべて、確かめる様に布を取り払い……また包まる。

 

「やっぱり寒い!!」

「服があれですからね」

 

肌が出てれば寒い事に変わりは無いのだった。其れでもかなりましに成ったのか、布から顔を出したまま少女はレフィーヤに向かって礼を述べる。

 

「ありがとう、お蔭で死なずに済みそうだよ!」

「どういたしまして」

「あ、そう言えば自己紹介がまだだった。あたし、ノココ。ダンサーしてるから宜しく!!」

「レフィーヤ・ウィリディスです。見て分かるでしょうけど、ルーンマスターです」

「そして私はホロン」

「ゴザルニにござる」

「ポシェだよ」

「そっちは知ってるから」

 

何時の間にか、レフィーヤの背後でポーズを決めていた三人。あれ、そう言えばと見渡す、けれど探している人物はいなかった。それを見て、ローウェンが問い掛ける。

 

「どうした?」

「いえ、クルミさんはどうしたのかなって。居るのかと思ってたので」

「簀巻きにして吊るしてきたから居ないぞ」

「なんでそんな事」

「言っただろう、あいつ敵味方関係無いって。というかあいつにとって敵って言うのは目の前に立ってる奴の事だから。連れてきたら大惨事どころの話じゃ無くなるからな」

「なら仕方ないですね」

 

想像以上に危険人物だったクルミ。なんで冒険者してるんだ。冒険したいからか。

 

「え?クルミってガンナーのクルミの事?」

「そうですけど?」

「人外ガンナーフォーの一人である。あのクルミ? え、居るのあのキチガイ?」

「人外ガンナーフォー? なんですかそれ」

「人外じみた行動や技術を保有してるガンナー四人の事だよ」

 

皆の視線が、自然とローウェンへと集まる。最も身近な人外かと言いたくなる技量を誇っているガンナーだからだ。視線をノココに戻し、問い掛ける。

 

「因みに、クルミさん以外の、他三人の名前って知ってますか?」

「知ってるよ。隣町で暴れてるモンスターを狙撃したコルボに、悍ましい程の早打ちに因る連射を得意とするライシュッツ、あと」

 

「九体のモンスターの急所を一発の弾丸で撃ち抜いたとか言うローウェンだね」

 

「だそうですよ人外」

「そんな事してたのね人外」

「僕もびっくりだよ人外」

「そんな事出来るのに拙者の事をキチガイと言ってたのでござるかこの人外」

「少しショックだぞ、人外」

「やはりキチガイだったか、この人外」

 

「まぁ、落ち着け。彼女の言った事は正しくない」

「なら、実際はどうだったんですか?」

「弾丸を弾丸で弾いた上で十六匹、詰り一発で撃ち抜いたのは八匹だ」

「いや増えてる」

 

結果的には増えてる。正しくないってそういう、いや確かにそうだけど違うだろうと。言おうとして、はいと彼は手を叩いた。

 

「おふざけ此処まで、これを見ろ」

 

そう言って、掲げて見せたのはD.O.Eレーダーで。その色は、赤。意味するのは敵が近いという事。緩んでいた空気が引き締まる。

 

「鍋片づけたか?」

「うん」

「武器防具に道具」

「問題なし」

「作戦」

「好きにやれ」

 

「宜しい、ならやるぞ」

 

その言葉の後か前か。砦の底を、突き破る様に現れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アイスシザーズと名付けられた其れを呪縛し切り落とし燃やし尽くす。

 

「は……え?」

 

唖然とした様子のノココは気にせずに、動く事の出来なくなったアイスシザーズに向かって。ローウェンは銃をくるりと回してから突き付けた。

 

「ま、分かってればこんなもんかね」

 

命を、撃ち抜く。

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