世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

42 / 241
第四十二話

「では帰るとしようか」

 

そう言って、放心しているノココを引きずる様にして帰っていく四人を見送り、ギルド・フロンティア一行は第五迷宮の奥へと足を進める。

 

アイスシザーズ?どの様な行動をしてくるのか知っている上に来ると分かっていたんだから瞬殺できない方が可笑しい。冒険者にとって危険なのは強い敵では無い、不意打ちと未知こそ敵である。

 

「よく見えん」

 

詰り暗く、前が良く見えなく成っている現状はとても危険と言う事だ。其れは夜になったからでは無く、単純にそうなる程に深い場所を進んでいるという事だ。

 

「でも、本当にこれは困りますね」

「お陰でモンスターの発見が遅れてしまうぞ全く」

「それでも変わらず急所を撃ち抜くんですね」

 

直ぐ近くにまで近づかなければよく見えないのに、命中率が変わらないローウェン。変わったのは発見が少し遅れた程度だ。尤も視線を向ける事無く撃ち抜いているから完全に誤差でしかないが。

 

「本当に、どんな腕してるんですか」

「ガンナーならば当てて当然だ。寧ろガンナーは当てない方が難しい、仲間に的な意味で」

「そっち?」

 

いやそうだけども、確かに誤射しないというのは動き回っているのだから難しいだろうけれども。レフィーヤ自身、誤射無くやっていけているのは他の三人の腕がいいからであると分かっている。まぁ、それでもローウェンの技術はずば抜けているが。

 

そんな彼がイノシシを撃ち抜くのを見ながらふと、思う。どうやってあそこまでの技術を得たのだろうと。問いかけはしない。した所で努力したからとか、そんな感じのとても単純な答えが返ってきそうだと思ったからだ。

 

後にふとした瞬間に問い掛けた処、その方が楽そうだから練習したと返ってきた。やはり人外か。

 

「それにしても深いわねこの迷宮」

「そうでなければ面白く無いと思うが?」

「ローウェンは冒険と言うだけで弾けるよね。もっと自重しない?」

「モンスターを全部俺が片づけてない時点で自重してる」

「出来るんですか?」

「弾を残す事を考えなければ。詰り最下層辺りでは俺は足手まといになるという事だがな」

 

駄目じゃん。そう思ったレフィーヤは悪くなく。だから自重してるのかとも思ったが、それは当然の事で。冒険がしたくてしたくて、若しも出来なければ暴走しそうなローウェンが、その辺りを考えていない訳が無い……よくよく考えれば何が起こるのか分からないのが冒険で。其れをしているのに弾を使い切らずに居られる何て事が出来る。これて相当の人外技なのでは?

 

帳面と睨めっこするのが秘訣なのだろうかと、ローウェンを見る。

 

「なんだ」

 

問い掛ける様に彼は言う。いえ、と小さく呟いて視線を彼から外した。別にそんな事は無いなと思いながら。帳面と睨めっこするだけで出来る様に成るなら世の中人外で溢れている事に……いや結構居たな人外。知ってるだけでも五人以上いる。なんだこれ世紀末かと、いや世紀末って何だ?

 

何故か思考を横切って行った謎の言葉に首を傾げながら氷爆カズラを燃やす。灰に成っていく其れを見ながら、最近あまり意識せずに動ける様になったなと、しみじみと思う。これ、オラリオでもとても強い部類に入るのではないだろうか・・・いや、そうでも無いか。ボコられる姿しか想像できないレフィーヤ。まだ練度が足りない。

 

そして非常に悔しいが負けるイメージが出来ないローウェンは本当に人外だと思う。いや勝てても居ないけど。気が付いてないだけで恩恵得て居たりしないのかな彼はと、未だに疑っているレフィーヤだった。

 

息を吐く。

 

白く染まる其れを見ながら、色々と脱線が過ぎるたなと思う。忘れてはいないが迷宮の中。余り考え込み過ぎるのは危険だろう。

 

「あとどの位ですかね?」

「何とも言えんな。経験則的にはそろそろだが…不思議の迷宮が不思議過ぎてそう言うのをぶっちぎって相当深くまで続いてる可能性が在るしな」

「いや流石にそれは」

「想定出来なかったなら兎も角、想定しないのは馬鹿と愚か者だけだぞ。まぁ、馬鹿の中には勘で行動してるタイプが居るから何とも言えんが……愚か者にはなりたくないだろう?」

「肝に銘じておきます」

 

しかし困った。何時最下層に辿り着くのか分からないというのは思っていた以上に辛い。体力的に、という意味でだ。精神的には非常に楽しんでいるのだが、流石に疲れてくる。迷宮深くだというのに吹雪いている事も一因だろう。そうで無ければもう少し余裕が在る。出来れば休憩したいところだが。

 

 

『――――――――――――ッ!!』

 

身構える。何処からか響いた声、咆哮。まるで存在を主張する様に響く其れは、下からの響く。薄暗い中、若しかしたらと探せば、下へと続く階段。あぁ、詰りこれはそう言う事だろう。ローウェンはゆっくりと三人を見る。

 

「という事でだ。分かっているだろうがこの下は……あぁー、今いるのは十八階だよな」

「そう、詰り次は十九」

「ありがと、そんな訳で十九階が最下層だと馬鹿が教えてくれた」

「なんで吼えちゃったのかしらね?」

「それはもう、馬鹿だからじゃないですか?」

「俺最強とでも思ってるんだろう」

 

ふっと、息を吐く。

 

「慢心は無いな?」

「馬鹿だとしても未知である事に変わり無いしね」

「余裕は在るか?」

「少し休めば体力的にも万全です」

「なら、休憩を挟んだ上で」

「突撃ね」

「準備万端……とはガンナー故に如何したって言えんが」

 

 

「ま、下に居る馬鹿に冒険者ってものを教えてやるとしようか」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。