世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第四十三話

最下層。それは、彼等の眼前に降り立つ様に現れた。青い炎を揺らめかせながら纏う白虎。彼等を睨みつける様に見た白虎は、大きく息を吸い。

 

「せんせー」

「よっこいっしょっと」

 

火球と弾丸を叩き込まれる。小さく悲鳴を上げて、距離を取る様に下がる白虎。其れを見ながら、はてとレフィーヤは僅かに首を傾げ、動きながら呟いた。

 

「炎纏って居る割に結構通った感じがしますね」

「体温を高く保つための物でしかないとか、そんな所じゃないか?よく分からんが。此処はそうでも無いが上は寒いし」

「成程」

 

白虎は飛び掛かる様にレフィーヤに迫る、動いているとは言え会話しているから隙だらけだと判断したのだろう。あえてそうしているのだ気が付かずに。

 

「せい―――やっと!!」

 

ハインリヒのフルスイング。極めて重い其の一撃が白虎の側面に叩き込まれる。飛び掛かる様に動いて居た為か、踏ん張る事など出来ずに、小さな彼が巨大な怪物を吹き飛ばすというアンバランスな光景を見る事に成った。

 

それでも直ぐに体勢を整える様に立ち上がる白虎は、しかしその足取りはおぼつかない。余程先程の一撃が効いているのだろう。だからと言って手を緩めるような事はせずに、攻め立てる様に氷槍と雷撃が飛ぶ。しかし。

 

「これは効かない、と」

 

氷槍は白虎の纏う炎が溶かし、雷撃は効いている様子は無い。ならば必然的に、放つのは火に限定される。其れにしたって、見た目よりは通ると言うだけで弱点と言う程では無いのだが。

 

まぁ、倒れるまで続ければいいかと、火球を二つ放つ。

 

白虎に向かうそれは、しかし駆ける様に動いたために一発は外れてしまう。いや、それよりも問題は白虎が動き続けている事か。

 

走って、走って。駆けて、駆けて。決して広いとは言い難い最下層を白虎は縦横無尽に駆けまわる。こうも動かれてはレフィーヤは火球を当てる事など出来ず。

 

「動きすぎ」

 

しかしローウェンは其れでも当てていく。悍ましい程の精度でそう動くのだと知っていたかの様に、放たれた弾丸が白虎の前足の関節を撃ち抜く。

 

堪らず、悲鳴を上げながら崩れ落ちる白虎、駆けまわっている最中に撃ち抜かれた故か、滑る様に転がり壁に激突する。

 

その様を見て、あぁ終わったなと思いながらも。レフィーヤは爆炎を放つ。激しく燃え盛る炎は、白虎の纏う青い炎すら飲み込んで火力を増し焼いていく。

 

響き渡る悲鳴。ここにきて漸く白虎は気が付いた。足を撃ち抜かれ動けず、その身を焼かれて命を零しながら漸く気が付く。彼等には勝てないのだと。しかし、あぁ、しかしだ。それはあまりに遅すぎた。

燃え盛る炎に焼かれながら白虎が見たのは、槌を振りかぶるハインリヒの姿だった。

 

重く鈍い音が最下層に響き渡る。

 

 

 

 

 

頭部にハインリヒの一撃を受け、動かなくなった白虎。若しかしたらまだ、と考えてハインリヒは下がり、変わる様にゆっくりと確認の為に近づくコバックに、問い掛ける様にローウェンは声を掛ける。

 

「どうだ?」

「んー……大丈夫そうね」

「そりゃよかった。しかし、今までで一番楽だったな」

「随分動き回ってたわね。お陰であたしやる事無かったわ」

「久しぶりに大物を叩き潰したなぁ……すっきりした」

「ハインリヒさん?」

 

何やら危ない言葉が聞えて思わずハインリヒを見るレフィーヤ。しかし、彼は視線を彼女に向けようとはせずに、黙々と槌に付いた汚れを拭っていた。少し、危ない表情を浮かべながら。レフィーヤは、見なかった事にした。

 

さて、とローウェンは呟きながら最下層の奥へと向かう。そう言えば最下層の調査がミッションの内容だったなと思い出しながら後に続く。

 

「あぁー…これは、あれだな」

「流れてきてますね」

 

そう、流れて来て、そして流れていく。目の前で、地下水の溜まっている場所に巨大な琥珀が。見れば、D.O.Eらしき影も見える。それが何個もだ。

 

「此処じゃあ無いみたいね」

 

D.O.Eが閉じ込められている琥珀は、氷晶ヶ岳からでは無く、別の何処かから流れてきていると。ここがそうだと思っていたから、当てが外れたという事だ。

 

「でもここ以外に場所なんて無いわよね?」

「いや、一か所あるだろう。というか此処で無いならあそこ以外無いだろう」

「あそこ?」

「……なぁ、コバック。お前は馬鹿だな」

「行き成り罵倒された?!」

 

いや仕方ないだろうと。流石にレフィーヤも分かる。ここ、氷晶ヶ岳から流れてきていた訳では無いのなら。其処より更に奥にある場所からと言う事に成る。そして、その場所は間違いなく。

 

「世界樹…ですね」

「正解。という事だコバック」

「全然わからなかったわ」

「やべぇ、お前どんな思考してんだよ。逆に気に成って来たわ」

「頭を割る気なの!?」

「発想が怖いわ。なんで仲間の頭かち割らないといけないんだよ」

 

そんな会話を聞き、確かに怖いと思いながら。何か無いかと各々が探す。尤も、此れと言ったモノが見つかるとも思っていないが。

 

「あら、何かしらこれ。板?……これ板よね?」

「板?……板だな。唯の板では無いが」

「そうなの?」

「何処を如何見たら唯の板に見えるんだよ此れが」

 

困惑したようなローウェンの声に、如何したのかと近寄り、何かを持っているのに気が付く。はて、何を持っているのだろうかと、覗き込んで見れば。

 

それは、七つの琥珀の嵌め込まれた装飾板だった。

 

 

「……え、これをどう見たら唯の板だって思えるんですか?」

「だよな、明らかに唯の板じゃないよな。琥珀とか嵌め込まれてるし」

「あら、其れ琥珀だったの?」

「気づいて無かったのかよ?!」

「えぇー…?」

 

レフィーヤは、コバックが分からなくなった。

 

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