世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第四十六話

第五迷宮の最下層で見つかった装飾板、それに嵌め込まれていた琥珀は。迷宮の位置を示した物であったそうだ。

 

そして、その示された場所に。第六迷宮、迅雷風列渓谷を突き進む。目的は、恐らくこの最下層の地下水だまりからいく事が出来るだろう、世界樹の麓。そこへ、辿り着く事。まさか、何となしに考えた目的の一つの達成が手に届くところまで来るとは、少し感慨深いものだとレフィーヤは思い、それ以上に、世界樹を間近で見られるかもしれないと興奮していた。

 

だから、一寸進むのが速くても仕方のない事。そして問題も無い。

 

何故なら皆、進むのが速いから。何だかんだで、全員楽しみなのだ。だって世界樹。オラリオに於ける神か、若しくはバベル等といったものに近いのだから。何も感じないのは可笑しいだろう。あのローウェンだって。

 

「………」

 

無言で、しかし何かを堪える様に笑顔を浮かべながら向かって来るフクロウを射ち落しているのだから…いや、何時もの事か。

 

と、落ちていくフクロウを見てそう言えばと疑問に思う。

 

「ここ…壁無いですけど、どうなっているんでしょうか?」

 

そう、壁が無いのだ。道、部屋など地面は確りあるのに縁まで行くと下が丸見え。真っ直ぐ見ればずっと向こうまで見えるなんて状態。これ、どうやって迷宮自体を支えているのだろうか。今までの迷宮の中で一番謎、いや不思議な迷宮だ。如何なのだろうかと、ローウェンを見ると。

 

凄く…苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。

 

「お前、俺が考えない様にしてた事を聞いて来るなよ」

「と言う事は」

「分かる訳ないだろう。あぁー……あれだ、浮いてでも居るんじゃないか? それで納得しとけ」

 

かなり雑な答えだが、正しいものなど分からないのだから取り敢えず、言われた通り納得する。尤も、其れを知る事を諦めた訳では無いが。探究心は冒険者たる者持っていなければね!!

 

「んー、あらー」

「どうした馬鹿? まるでコバックみたいに呆けて」

「馬鹿とあたしの名前逆じゃないかしら?」

「間違ってはいない」

「だね」

「否定はできないですね」

「ちょっとあたしに対して辛辣過ぎない?」

「ならもう少し馬鹿と言いたくなるような行動を控えろ」

 

あの装飾板を捨てようとしていたと言う事実は未だに信じられない。まぁ、未遂で在ったし吊るされたのだから済んだ話だが。

 

「で、何か気に成る事でも在るのか?」

「それねぇ、なんか……ねぇ?」

「言えよ」

「モンスター、少なくないかしら」

 

その言葉につられた様に辺りを見渡す。壁が無い為に大変、見やすいこの第六迷宮。だが、しかしコバックの言う通りだ。よく見えるからこそ、モンスターの少なさが目立つ。偶に、フクロウが飛んでくる位で、後は進んでいて偶々出くわした程度のもの。攻略としては楽で、調査としては今一で、冒険としては物足りない感じだ。

 

「第五迷宮の時と同じ……って感じでは無いですよね」

「あそこ程ギラギラした感じないものね」

「ギラギラって……いえ分かりますけど」

 

コバックの表現に首を傾げながらも同意する。何というか、息を潜めて隠れて居るのは変わらないのだが、如何も必死と言うか。出くわしたモンスターにしても、襲ってくるのだがまるで錯乱しているかのようで。

 

まるで、何かを恐れている様で。

 

「……これ詰り」

「まぁ、十中八九居るだろうなD.O.E」

「やっぱりですか」

「まぁ、それにしたって少し過剰すぎる気がするけどな」

 

そんあローウェンの言葉もその通りだとレフィーヤは思った。D.O.Eが現れるから、それを恐れている。けれど、それは第五迷宮も同じな訳で。一体、なんの違いがあると言うのか。

 

「何にせよだ。必要以上に気にしても失敗に繋がり兼ねないからな。取りあえず忘れず、警戒しておく位が良いだろう」

「そうね。考えても分からないんじゃ仕方ないものね」

「と言う訳で行くぞー」

 

そう言いながら、フクロウに銃口を向ける彼は。しかし驚く事に成る。フクロウが逃げたのだ。

 

「……逃げたな」

「逃げましたね」

「やだ、ローウェンちゃんったらついにモンスターに逃げられる領域に行っちゃったの?ちょっと不憫」

「コバック、お前若しかして吊るされたくて言ってるのか?」

「なんで?!」

「精神を逆なでするの好きだな」

「え、魚が出るってどういう事?」

「いやどんな聞き間違え方してんの」

 

逆に気に成る様な間違い方をするコバック。本当に如何為っているのだろうかと。まぁ、今考える事では無いかと。考えるべきなのは、如何してフクロウが逃げたのかだ。まさか本当にローウェンが恐ろしくて逃げた訳ではあるまいし。逃げなくてはいけない様な何かが近づいていると考えるのが妥当だ。詰りは。

 

「近づいて来てるって事か」

「ローウェンさん、レーダーは?」

「赤いぞ」

「なら其れかしらね」

 

D.O.Eが近づいて来て居る。其れが分かれば自然と空気が張り詰めると言うモノ。何時、出くわしてもいい様に、警戒しながらしかしどの様にでも動けるように余裕を持って進んで行く彼等。

 

 

 

 

 

 

直後、弾かれる様に散開する。それは感覚、背筋を走る悪寒とでもいうべき其れが、考える前に彼等を動かしていた。

 

そして、その行動が間違いで無いと天井を破壊して現れた其れが証明した。

 

「……此れはちょっと洒落に成らないんじゃないか?」

 

そう言ったローウェンの表情はしかし、酷く硬いものだった。確かにと、同意する様に頷きたいが、目の前のそれから、巨大な恐鳥から目を離す事が出来ない。

 

恐鳥は、埃を掃う様に翼をばさりと羽ばたかせる。其れだけ巻き起こる風に態勢を崩しそうになるのを抑える。その見開かれた瞳が、彼等を捉えて。

 

『アァアアアアアアアアアアアアアアアアアア―――――――――――っ!!』

 

咆哮、翼を動かしふわりと宙に舞い。

 

 

それは、恐鳥は稲妻の如く彼等に襲い掛かった!!

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