世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第五十話

レフィーヤは唖然していた。

 

 

それはアスラーガに帰還してミッション達成を報告した時の事。第六迷宮の先、世界樹の麓に在ったものを説明した。琥珀色の森、其処に在ったD.O.Eを閉じ込めた幾つもの琥珀。最早誰も居ない村、其処に在った石碑に記された、鎮守の民と言う言葉。分かった事を代表で在るマガンとサラ教授に報告して。

 

そして、教授より語られたのは神籬と焔人、その盟約の物語。正しくそれは神話と言うにふさわしいものであった。

 

まじか。話を聞いたレフィーヤの頭に最初に浮かんだ言葉がそれだ。ある意味でアスラーガに居る人たちの誰よりも神話、いや神と言うものを知っている彼女は、だからこそ困惑して。

 

あそこって神話に語られる様な場所だったの?! と。

 

そう思わずにいられなかった。というか余りに話の規模が凄すぎて訳が分からない。更に言えばそんな所に辿り着いていた事に対しての興奮と満足感とか、先に其れを知りたかったなと言う残念に思う気持ちとそんな神話が在るなら読んでおけばよかったと言う後悔と。もう、レフィーヤの心の中は混沌の極みである。

 

其処に追い打ちをかける様に突然のダーナ社長である。

 

何とかして直接調査できないかとサラ教授が悩んでいた時に現れたその人は言った。なんでも迅雷風列峡谷を超えて世界樹の麓まで行く事の出来る新型気球艇が完成し、無事に運行が出来る状態に在るとか何とか。

 

おい、ちょっと待てと。そんな物を作っていて、しかもちょっと待っていればそれに乗って世界樹まで行けていたと言う事か?

 

いや、飽く迄ミッションは第六迷宮の調査も兼ねていたからそれではいけないのだが。でも釈然としないレフィーヤ。他の二人も同じような表情をしている。まぁ、ローウェンだけは便利そうだなと呟いただけだが。彼はあれだから、調査や世界樹まで辿り着くのは自力でこそとか考えているだろう。

 

レフィーヤ自身、そんなの面白く無いと思ってしまっている所が在る訳だし。

 

さて、そんな訳で世界樹まで第六迷宮を走破する必要も無く行くことが出来る様になったためか、今からでも世界樹の麓に向かいたいと発言したサラ教授。其れはいい、当然の発言と言えるだろう。だが何故マガンとギルド長が同行する事に成ったのか、まるで分からない。代表でしょう貴方は、ギルド長でしょう貴方は。要するに街の偉い人でしょう貴方たちは。なにさらっと危険が何処に潜んでいるのか分からない場所に行こうとしているのかと。というか、二人同時に出て街は大丈夫なのかと。

 

あぁ……いやまぁ、何か在っても冒険者がさらりと解決してしまいそうではあるが。

 

二人に関しては、ローウェンが別に良いと言ったために同行する事に成った。のだが、なんでそこで彼がそう言ったのだろうか。関係ないだろうと・・・そうレフィーヤは思っていた。

 

気付けば彼女は空の上。

 

あの、さっき戻ったばかりなんですがとか思ったり。またあの景色が見られるぞやったぁなんて思ったり。今度はちゃんと間近で見なければとか思ったり。やっぱり色々と頭の中がごちゃごちゃしている、いや、いたと言うのが正しい。

 

 

目に入った景色に彼女は開いた口を閉じる事が出来ずにいた。其れは誰も彼も同じで、あのローウェンでさえ驚いた様子だった。やはり、見える物が違うのだ。下から見上げるようにするのと、上から見下ろすようにするのとでは。世界樹よりも高いと言う訳では無いが、それでも湖は良く見える。

 

その水底に在る、無数の琥珀が。

 

「もしかして……あれ全部、D.O.E?」

 

そう呟いたのは、誰だったか。分からないが、そうであってほしくないと言う気持ちが込められていたのがよく分かった。レフィーヤとて、同じだから。けれど。

 

「間違いなくD.O.E入りの琥珀だろうな」

 

そう、ローウェンが断言した。在り得ないと否定する事が、どれだけ危険なのかを知っているから。もはや、気球艇に乗る物に、世界樹の美しさに目を向けられる者は居なかった。

 

 

 

 

世界樹の麓、琥珀の森を抜けた先にある廃村。そこの調査の結果。此処こそが語られた場所、盟約の地で在るとサラ教授は断言した。更に驚く事と言えばあの石碑、何とそれはランディ教授、サラ教授の師である人物が印した物であるとか。こんな場所まで来るとは、何者なのか。

 

内心、自分たちが初めてと言う訳では無いのかと残念に思ってたりするが、よく考えれば此処に住んでいた人が居るのだから当然かと思う事にした。

 

避難がどうとかなんとか会話しているマガンとギルド長を横目で見てから、さてとレフィーヤはローウェンを見る。

 

「それで、どうします?」

「大量の琥珀、D.O.Eの事を言えば手段は…まぁ、無い訳でも無いかも知れない」

「と、言いますと?」

「迷宮、あと一つ在ると思われる其れが鍵だと俺は思ってる」

「そう言えば、装飾板には琥珀が七つでしたっけ」

「それが迷宮を示して居るなら間違いなく在るだろうな。だが」

「どうしたんですか?」

「装飾板に嵌め込まれてた琥珀の位置が問題なんだよな」

「位置?」

 

思い出して見る。だが、別に可笑しな所に嵌っていた様には彼女は思えなかった。

 

「あれ、世界樹と思われる絵のどのあたりに嵌ってたか覚えてるか?」

「何処って確か絵の根っこの……あぁ」

 

世界樹を見る。より正確には下。最早人が触れられぬほどの熱を持った湖に沈んでいる根本を。

 

「最初に来た時、世界樹を調べれば確実になにか在るとか言ってましたけど」

「ぶっちゃけ、ああなってるの見た時点で駄目だなって判断した」

「成程」

 

装飾板の通りなら、迷宮の入り口はきっと根元だ。沈んでるから入れないけど。

 

「……どうしましょうか」

「俺じゃぁどうしようもないのは確かだな」

「私も無理ですね」

 

思わず、溜息を吐きたくなるレフィーヤ。拙い処の話では無いのでは無い。だが、それで諦める様な事は無い。如何しようも無いと言いつつも、ローウェンは何か手は無いかとまだ思考しているのが分かった。だからレフィーヤも出来る事は無いだろうかと考えようとして。

 

 

 

少女の声を聞いた。

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