街に戻り、ラガード公宮と呼ばれる場所に居る大臣にミッション達成の報告をしたギルド・フロンティア一行。無事、ハイ・ラガードの民と認められ迷宮へと挑戦する権利を得た。
何故か、大臣にはとても驚かれたが。なんでも地図は一階の指定された部分を描いて来ればそれで良かったそうだ。大抵の冒険者は一階を全て描こうとするらしいがその大半がF.O.Eを見て諦めたり、若しくはそれを避けながら描くそうで。と言う訳でF.O.Eをぶちのめして一階の地図を描いてきたのは彼等が初めてらしい。
さて、そんなこんなで漸くスタートラインに辿り着く事が出来た彼等は早速迷宮へと向かう。
何てことは無く宿屋でゆっくりと休んだ翌日、詰り今日なのだが。レフィーヤは街を散策していた。二日前にもある程度はしたが、それは位置などの確認程度でしか無く。また、冒険をするのに重要と言える場所しか探して居なかったから。今日はそう言うのとは関係の無い個人的な散歩の様な物だ。さてと、視線を彷徨わせる。
今、彼女が居るのはハイ・ラガード公国の西区。なんでもここは学生街だから若者が多く、他にも術士が集まっている場所だと。フロースの宿の女将、ハンナから聞いたのだ。面白そうだし、何よりなにか参考に出来るものが在るかも知れないとレフィーヤは訪れたのだ。
訪れてみた感想はと言えば、意外と店が多いといった所だろう。いや学生が多いのだから可笑しくは無いのだが。
それにしても、と移動しながら思う。少し見過ぎでは無いだろうかと。
ハイ・ラガードの街に入った時から感じてはいたが、この区画では更に増えた様に思える。そんなに珍しいのだろうかと耳を少しだけ撫でる。少しざわついたような気がしたがこれを無視。そう言えば珍しいとハインリヒが言っていたなと思い出しながら歩く。気にする事でも無い。
さて、お目当ての建物はどれだったかと教えられた場所を思い出しながら彷徨う。意外と入り組んでいる。慣れていない人だと迷ってしまいそうな程だ。まぁ、迷宮ほどでは無いのでレフィーヤは迷う事等無いのだが。
と、目当ての建物が視界に映る。あ、あそこかと思いながらも立ち止まり。
―――――ドンッ
と、背中に軽い衝撃が走る。一瞬、倒れそうになるのを堪えて何事かと後ろを見ると。唖然とした少女が尻餅をついていた。どうやら、彼女がぶつかってきたのだろう。いや、驚いている様に見える所からぶつかってしまった、と言うのが正しいだろうが。
「大丈夫ですか?」
「ん、大丈夫」
まぁ何方にせよ。確認の為に突然立ち止まってしまったレフィーヤも悪いと言えば悪いので、手を差し出す。少女は手を取りながらずれてしまっていた眼鏡の位置を直して。軽く服を叩いてからレフィーヤを見る。それはもう、じっと凝視する。
「あの……どうしたんですか?」
「耳」
「耳、あぁ成程」
少女も又、特徴的な耳が気に成るのだろう。ふと、もしかして耳に関して知りたいから態とぶつかってきたのかと少しだけ思ったけれど。
「耳…変」
「へッ――――?!」
言葉がぐさりと音を立てて心に刺さった気がした。いや、確実に刺さった。とても痛いから。此処まで痛いのはローウェンに自分に似てきたと言われて以来だ。しかし、其れはそうとしても良くない。目の前の少女の口が良くない。此れは注意しなければいけない。
「えー…と。そう言う事は思っても口に出しちゃ駄目だと思いますよ?」
「うん、良く言われる」
「言われるなら気を付けましょう?眼鏡かち割られたくなかったら」
言いながら思い浮かべたのはアスラーガの冒険者達。まず間違いなく彼等ならばかち割っていただろう。若しくは吊るす。
「……ぇ」
一歩、後ろに下がる少女。何故か驚いている、と言うか怯えている様に見える。どうやら、殴られると思ったのだろう。否定する様に言葉にする。
「いえ、殴りませんから大丈夫ですよ」
「本当?」
「はい…まぁ、仲間が同じ事言ったら顔面を陥没させる積りで殴りますけどね」
「…え」
更に一歩下がる。殴らないと言ったのに。それとも仲間を殴ると言ったからだろうか。氷漬けにされないだけましだと思うのだが。まぁ、アスラーガでそれをやっても暑かったからか喜ばれたけれども。
「取り敢えず気をつけてくださいね?」
「え、あ、うん。クロエ、気を付ける」
クロエとは名前だろうか。一人称が名前とは。偶に居たけど、一瞬だが何故行き成り自己紹介したのかと思う事が少しだけ在る。
なんて考えていると、恐らくクロエと言う名前の少女はバイバイと言いながら手を振って去って行った。早足で。酷く怖がらせてしまったなと思いながら、ふと、先程まで感じていた視線が感じられない事に気が付き、見渡す。其処に居た何人かに視線を向けると凄い勢いで顔を逸らした。なんか、触れてはいけない何かと思われている様に感じた。
まぁ、鬱陶しくないから良いかと改めて歩き出す。先程、見付けたその建物へ向かって。
目の前まで辿り着く。ふむと、立て看板を見て頷く。確かにここだと。さてどんな知識があるだろう、どんな技術が在るだろうかと胸を躍らせつつ。扉を叩き、どうぞと言う声に従って。
錬金術師互助組合へと足を踏み入れた。