世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第六話

「と言う訳で冒険者登録よろしくギルド長」

「いや如何いう訳だ?」

 

ローウェンにギルド長と呼ばれた人物は、当然ながら突然の事に困惑しながら言葉を返す。まぁ、そうだろうなとレフィーヤは思う。行き成り来たかと思えば何の説明も無く言われたのだ。困惑するのも仕方が無いだろう。

 

と、其処でギルド長は彼女を見る。今気が付いたとでも言わんばかりの表情をしているが、これは行き成り現れて色々言ったローウェンの所為だと、彼女は思う事にした。

 

さっと、視線を走らせたギルド長。やがて、成程と呟いた。

 

「何を言っているのかと思えば、彼女の事か」

「その通り! やはり察するのが早いギルド長。嫌いじゃ無いよ!!」

「別に男に好かれたいとは思っていない……仲間以外にはな」

「渋いねぇ!! だがその通りだな!!」

 

ローウェンの声が大きい所為か、何人か冒険者と思われる人物達が視線をよこし、そして渋いと言う発言には頷いていた……主に男性が。

 

「さて、言うのが遅くなったが。ようこそ冒険者よ。私がこの施設をあずかるギルド長だ……尤も、其れに関しては先程奴が大声で叫んでいたから言う必要は無いだろうがな」

「ごめんね!!」

 

この人は一々茶々を入れなければ気が済まないのだろうか?

と言うかテンションが以上に高い気がするのだが?

 

訝しげに、レフィーヤは見る……と、何故か照れる様に頭を掻いた。何故だ。

 

「ふざけるのも良いが、続けても良いかね?」

「あ、はい。すみません……何で私が謝ってるんですか?」

「其れは知らん。では話を続けるが……いや、其の前に何処まで奴から聞いたのか言ってもらえるだろうか?」

 

何処まで、というのは何処まで言えば良いのだろうか?

 

何と無く疑問に思いながら言葉にする。世界樹の事に、迷宮の事。あとは此処、冒険者ギルドに関して。世界樹を見に行った時と同じ様に、何故か背を押されながら説明された。この街、アスラーガに滞在する冒険者を管理している施設で在り。冒険するならそこで登録すべしと。

 

「其処まで説明されて居るなら、後は登録だけで良いだろう。では早速、君の名前と職業をこの冒険者登録台帳に記載してもらいたい」

 

言いながら、台帳を差し出すギルド長。しかし、レフィーヤは少し困惑した。名前は分かる、分かるのだが。職業とは?と、何かを察した様にギルド長は頷いた。

 

「成程、初心者と言う事か」

 

初心者とは?

 

いや、流石にレフィーヤにも分かる。其の儘の意味だろう。その言葉に思う所はあるけれど、しかしその通りなので、彼女は頷いて見せた。

 

「ならば、先ずはどの様な職業が在るのかを教える必要が在るが……お前は教えなかったのか?」

「流石にねぇー」

 

ギルド長に視線を向けられた彼は、肩を竦めた。なぜ教えなかったのかと。レフィーヤは彼を見る。すると。

 

「因みに、俺は遠距離からの攻撃や補助を行う事が出切る銃を使うガンナーという職業だ……が、ガンナーは選ばない方が良い」

 

これなと、何気なく棒のような、筒の様なモノを見せる。見た事が無い、不思議な武器。だが、それ以上に不思議なのは、何故勧めて来ないのかと言う事だ。

 

普通、と言う訳では無いが、この様な場合は自身の職業を勧めるのではないのだろうかとレフィーヤは思う。実際、彼と同じガンナーと思われる人たちは眉を顰めている。まるで、よく無いものであるかの様な物言いだったからだろう。そんな視線を感じながら、しかし彼は何でもないかのように肩を竦めて、こういった。

 

「ガンナーはな……金が掛かるんだ」

 

彼の目が死んでいた。

 

とても世知辛い発言。同時に、見ていたガンナーと思われる人たちも首が飛んで行きそうな勢いで視線を逸らしていた。レフィーヤはとても悲しい気持ちになった。

 

「う……む、確かに。その様な観点から見ればガンナーは良いとは言えないか」

「因みに俺のお勧めは一番金が掛からないルーンマスターだ。杖さえ用意すれば後は自力で何とかなるからな! 主に整備とかで金を取られない!!」

「その話題は周りの冒険者のモチベーションに関わるから止めろ」

 

其れって実際に金策で悩んでいるからだろうか?

 

何気なく、辺りを見渡すレフィーヤ。何故か、明るいのに暗くなっていた、雰囲気的な意味で。

 

「しかし、ふむ。ルーンマスターか。少々、難しいのではないか?」

「変な癖とかが付いてないなら逆に楽じゃないかな?」

「む、一理ある」

「あの、話が凄い勢いで決まっている気がするんですが?」

 

それもレフィーヤ自身の事を置去りにして、だ。せめて、ちゃんと説明してほしいと言うのが彼女の意見だ。そもそもルーンマスターって何ぞ?!

 

「む、すまない。冒険者自身の行く末。確かに、私達がとやかく言うのは間違っているな」

「まぁ、ルーンマスターがお勧めなのは変わらんがね。因みに、ルーンマスターは……大雑把に言えば炎と氷と雷の三属性をメインに遠距離攻撃をする職業だな。特徴は敵の弱点を突きやすいと言う事と金が他の職業と違って其処まで掛からない事だ」

「お前は又そうやって」

 

「ルーンマスターでお願いします!!」

 

「お、おう?」

「むぅ、随分と……いや、君がそう言うなら其れで良いのだが」

 

食い気味に答えたレフィーヤに、少しだけ驚いた様子の二人。だが、彼女はそれ処でなく。興奮した様子であると言えた。

 

ルーンマスター。

 

ローウェンの大雑把な説明だけれど、しかし、どんな物なのかは彼女にはよく分かった。詰り、魔法使いの様なものなのだろうと。そして、彼女は其れであった。天職、そう呼べる物が在ったならば其れだろう。

 

一瞬、思ってるのと違ったらどうしようと思ったが、其れは其れだと気にし無い事にしたレフィーヤだった。

 

少し待てと言い、何処かに向かうギルド長。言った通り、少しだけ待てば直ぐに戻ってきた。分厚い本を持って。何だろうかと疑問に思いながら、手渡された其れの表紙を見る。

 

書かれていたのは、『ルーンマスターを目指すなら』という文字だった。其の儘の意味の本だろう。詰り、初心者ルーンマスターの為の本と言う事だ。マスターなのに初心者ってどういうことだ?

 

「へぇ、こんなのあるんだ」

「何時だったか、一人のルーンマスターが広める為にと書き記して置いて行ったものだ。まぁ、読んで損は無いだろうと思ってな」

 

其れは技術を広める為にと言うやつなのだろう。そうそう出来る事では無い。何気に凄い物では無いのかと思いながら、本を開いて。

 

『ボッと成るのを持ってグッてすればボワッするからビュンって成る様にヒュンとする』

 

静かに閉じた。あれ? 裏表逆だったなかな? そう思いながら、反対側から本を開けば。

 

『最終的にはヌワァっとする!!』

 

「如何いう事だオラァ―――――――――!!!!!」

 

叫びと共に本を叩き付けた。

 

あれ? そう言えばなんで文字が読めるんだろうとか疑問に思ってたのに口調と一緒に何処か彼方に吹っ飛んで行った。

 

でも仕方が無いよね、だって意味が分からないし。まだレフィーヤに関わる事を解き明かす方が簡単だろう。こういうのはフィーリングが超大事だから、最初に解読できないと一生無理な場合が多いからね。

 

「おう?! え、如何した? 怒る様な事でも書いてあったのか?」

「むぅ……そう言えば、此れを読んだルーンマスターは皆、この様な反応をしていたな」

「そんなの読ませたのか?」

 

如何すれば良いのか、レフィーヤは悩んだ!

 

もしかしたら、此の侭ルーンマスターには成れないのかも知れないと。しかし、救いは確かに在った。

 

「少し良いだろうか?」

 

問い掛ける様な言葉。何だと視線を向ければ、一人の男性が立っていた。

 

「突然、申し訳ない。まず名乗ろう。私はホロン。職業はルーンマスター」

 

目を見開く。ここで、まさかの登場。しかし、何故ここで彼が話し掛けてきたのだろうかと。

 

「先程の会話は…その、行動を鑑みるに彼女はルーンマスターを目指して居るとみて良いのかね?」

「まぁ、彼女自身そう言ったな」

「ならば、私が彼女にルーンマスターとして必要な事を、印術を教えよう。勿論、彼女が良ければだが」

 

意味が分からなかった。いや、非情に幸運な事に、師匠と言える人物が向こうからやって来てくれたと言うのは、分かった。しかし、何故その様な事をしようと言うのかがレフィーヤには分からなかった。そして、そんな彼女を見て、ふっと微笑みを浮かべ。

 

「なに、大した理由では無い。唯、誓っていただけだ。そう……この書物を読んで頭を抱えてしまったものが居るなら手助けしようと、な」

 

その姿は酷く淡くて。

 

「私も」

「うん?」

 

 

 

「私も、そうします」

「……ふ、そうか」

 

後にローウェンは語る。修練の場に向かう二人の背中は…何故か煤けて見えたそうな。

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