満足気に宿へと戻ったレフィーヤ。素晴らしき一日の話を仲間たちにして、叱られたレフィーヤ。
キチガイ冒険者への対応と同じ事を一般冒険者にしてはいけないと。普通に尤もな事を言われたのだった。彼女は思う。そうか、あの対応の仕方はキチガイ限定のものだったのかと。しかし、その言い分だと自分達がキチガイと言う事に成るが、それで良いのかと問い掛けたら。
「否定してもキチガイである事に変わり無いしな。普通の冒険者は仲間を吊るさないし」
と、言った。確かにと頷き。あれ、てことは自分もキチガイなのではなんてレフィーヤは考えてなんていない。
そして、ふと思い出し気が付く。キチガイにたいしての対応で大半の冒険者に、と言うか一般市民に接しても問題なかったアスラーガは……そこで、考えるのを止めた。其れ以上は考えてはいけないのだ。
キチガイ冒険者と一般冒険者は別物だと言う当たり前の事を思い出せたレフィーヤは夜、ぐっすりと眠り。翌日には疲れは抜け、気が付いてしまった余計な事を忘れた清々しい朝に絶好調の様子。荷物の確認も済ませて。同じく準備万端な仲間と共に。
「さてと、じゃあ」
いざ、世界樹の迷宮へ。
「行く前に食事だな」
「ですね。あ、私カレーでお願いします」
「レフィーヤちゃんたら朝からがっつり行くわね。あたしステーキ丼で」
「コバックには言われたくはないだろうね」
行かずにテーブルに付き各々、好きな様に頼んでいく。朝食は大事だとみんな知ってる事。
食事を済ませて、少しだけ休憩を挟んでから今度こそ迷宮へと向かい、探索に乗り出すギルド・フロンティア一行。さらりと最初の地図を描いていた時に見つけた通り道を抜けて二階へと歩を進める。
そして。
「何だろうなこれ」
「さぁ?」
ローウェンの呟きに。首を傾げて見せることしかできなかった。実際、分からないからだ。目の前の其れが。強暴で凶悪。そういう言葉が当て嵌まりそうなモンスター、F.O.Eが。
落とし穴にはまってもがいている。
「・・・・・此処のモンスターは馬鹿なのか?」
「此れを見る限りは否定できないわね」
コバックの言葉を聞きながら改めてモンスター、確か駆け寄る襲撃者と呼ばれるそれを。彼等を見つけるや否や呼び名の通り駆け寄って、何もしていないのに穴に落っこちたそれを。
「警戒心は皆無ですね、間違いなく」
「最初に出くわした時も突っ込んで来ただけだしな」
そしてコバックが防ぎローウェンが撃ち抜きレフィーヤが氷槍で貫いて終わった。此れで終わりなのかと思う位あっさりと。
「強いは強いんだけどな…馬鹿、いやコバックだけど」
「そうですね、ば、いえコバックさんみたいですけど」
「冒険者に壁の言われるのも納得は出来る強さだね。馬鹿、違ったコバックだけど」
「ねぇ、もしかして馬鹿って言葉の代わりにあたしの名前使ってる?」
『うん』
なんで?!と声を荒げるコバックを無視して這い上がってきそうだった駆け寄る襲撃者の頭蓋を氷槍で貫く。そう、強い事には強いのだ。一般冒険者からすれば避けて通る他無い程に。
尤も、一般とは違う道を爆走しているキチガイと言われる様な冒険者からすれば倒すのはそう難しい事では無い。強いだけなのだから。寧ろそういったものよりも賢いものの方が危険だ。まさに今、まるで観察する様に彼等の事を物陰から見ているモンスターの様な存在の方が。
まぁ、其処に居ると分かっていて放置などせず、逃げられる前にローウェンが仕留めたのだが。
「しかし、やはりと言うか数が多いな」
「これで四体目ですもんね」
「今の所は別々に動いているみたいだが、纏まって動く事は無い…なんて考えるは無しだな」
「一体なら問題なくても二体以上なら危険よね」
「それは此奴に限った事ではなけどな」
言いながら有益そうな物を剥ぎつつ。さてと、前を見る。
「サクッと次の階目指しますかね」
「あ、ちょっと待って下さい」
そう、止めるレフィーヤ。如何したのかとローウェンが見るので。これ、といいながら地図を見せる。
「ここ、まだ行ってませんよ」
「あぁ、そう言えば分かれ道だったな……行くか」
「えぇ、そうです。えぇはい、そうですよ。此処だけ描かずに次の階に行くなんて本当に許されない事ですからね」
言いながら来た道を引き返すレフィーヤ。それを見て、やれやれと言った様子で肩を竦めるローウェン達が続く。
そして、ちょっとした広場と成っている小部屋で。其れは現れた。
サラリと、小部屋を地図に描き記したレフィーヤ。さてこれで大丈夫かなと確認してから。其れでは先に進もうかと、ローウェン達に声を掛け様として。
カサリと、茂みが揺れた事に気が付く。
何か居る。油断なく彼等は構え、備える。今の所は敵意と言うものは感じられないが。それでも警戒しない理由にはならない。いつ、行き成り襲い掛かられても良い様に、音のした場所を。同時に周辺にも気を配りながら。現れたそれを見た。
其れはふわふわとした尻尾が特徴的な小動物。名前は。
「…栗鼠ですね」
「栗鼠か。良し殺そう」
「殺意高くないですか?」
「動かないでレフィーヤちゃん。直ぐに仕留めるから!!」
「殺意高すぎませんか??」
「僕は逃げられても直ぐに叩き潰せるように構えておこう」
「栗鼠に親でも殺されたんですか??」
それはなと、口にしたローウェンが固まる。如何したかと彼を見ると、何やら彼の視線が自分の鞄に向かっている。鞄がどうしたのだろうかと思い、気が付く。何故か、鞄が動いている事に。何事かと鞄を見る。其処には何故か鞄から出てきた栗鼠が首を傾げていた。
アリアドネの糸を持った栗鼠が。
余りに予想外の事に固まるレフィーヤ。いや、其れだけでなく三人もまた、何時の間にか出し抜かれていた事に驚いている。そんな彼等の事等知らんと言わんばかりに鞄から飛び降りた栗鼠は、其のまま茂みに向かって走り去っていった。
暫くの間、固まった儘だったレフィーヤ。ふっと力を向く様に息を吐き。やれやれと首を振りながら肩を竦めて見せた。
そして満面の笑みを浮かべて。
「栗鼠の丸焼きって美味しいんですかね?」
その言葉には、途轍もない怒りが籠っていたそうだ。