それはおとぎ話。
曰く、空飛ぶ城には樹海を管理する者がいると。人々は其のものを、天の支配者と呼んだ。天の支配者とその眷属は地上にて死した後の魂を集め、そして・・・永遠の命を与える。
「ていう話があるらしいですよ」
「へぇ…それで?」
「と言いますと?」
問い掛けに返す様に首を傾げながらレフィーヤはローウェンを見る。
「まずは自分の意見を言ってほしんだが?」
「そう言う事なら、そうですね。個人的には居ると思ってます、天の支配者」
「それも訊いておくが、何故そう思った」
「モンスターが余りに同じ事ばかりするからですよ」
ちょっと気に成ったのでと言いながら、とある資料を取り出したレフィーヤ。ローウェンは手渡された其れを見て呟く
「モンスターの行動を纏めた物か」
「です。と言っても、知り合いがまとめて居た物を借りただけなんですけどね」
「その知り合い凄いな」
「キチガイですけどね」
「なんだキチガイか」
キチガイなら此れぐらいはできそうだしと言いながら、さらりと目を通す。
「二階層まで。割ときっちり行動パターンが書かれてるな」
「で、其れを見て分かると思いますけど」
「全く同じ行動を、全く同じ範囲で行ってるな。特にF.O.Eが」
「第一階層のF.O.Eと変わらず、ですよ」
第一階層の時は、いやまぁ馬鹿だなで済ませていたが。その先も同じ様なものばかりと成ると流石に可笑しい。
「いやまぁ、第一階層の時点で相当可笑しかったけどな」
「全く学習しませんでしたからねー。あの追跡者」
最終的に何回落ちれば学習するのか試したりもした。結果、落とし穴が死因となった。
「で、そんな事に成るとしたらそれこそとんでもない馬鹿か。後は、誰かがそう言う風に調教したかの何方かだと思ったわけです。それで」
「それっぽいのは無いかと調べた結果が、さっき言ったおとぎ話か」
「それっぽくないですか」
「確かになー」
言って、少し考えるような仕草をしてから。
「まぁ、正解かどうかは分からないけどな」
「ですよねー」
「だが、俺は其処まで間違ってないと思うぞ」
「そうですか?」
「勘だがな」
「勘ですか……人外の勘、凄く当たりそう」
「おい」
睨まれたので視線を逸らすレフィーヤ。でも実際凄く当たりそうだし。間違ってはいないと思う。
「しかし、仮にそうだとしたとしてだ。なんでこんな事してんだろうな」
「さぁ? 番犬替わりとかですかね?」
「それなら、もう少し優秀でも良いんじゃないか?」
「それはほら。キチガイには勝てなかったと言う事で」
「その言い方だとお前もキチガイだと言う事に成るが良いのか?」
「あっ……今の無しで」
「そうかい」
当たっている事が前提の話に成るが。何故、そんな事をしているのだろうかと。そう思いながら何気なく資料を眺めるローウェンを見て。ふと、思い付く。
「研究材料集めとか。そう言う奴ですかね」
「は?」
「いえ、ですから。こう、おとぎ話でも魂を集める的な事を言ってるじゃないですか?」
「あぁ、そう言えばそうだな…成程、詰り話に出てくる眷属の部分にF.O.Eを当て嵌めた訳か」
「そうです。なんか、どんどんそれっぽくなってきましたね」
「だが、研究云々は何処から湧いて出たんだよ。かなり唐突だったけど」
「それはあれですよ。その資料を作った私の知り合いがそう言うタイプの人だったので」
「へぇ……いやお前其れ唯のキチガイだから付き合い方は気を付けろよ?」
「いや、違いが分からないです」
え、キチガイって唯のとかそう言う種類があるんですかと。衝撃で在るが全く知りたくなかった事実であった。
「何か違うんですか?」
「違い、違いか。なんて言ったらいいだろうな」
うーん、と悩むローウェン。暫くすると視線をレフィーヤに向けて。
「同類にしか被害を出さないのがキチガイ冒険者。そう言うの関係なく被害を出すのが唯のキチガイ」
「あぁー…成程」
頷きながら思い出す知り合いの、クロの所業。第一階層のバーニング。不特定多数に被害を及ぼし。後に調べてみたら街に被害が及びそうになっていたそうだ。まごう事無きキチガイである。確かに、別物だ。
「まぁ、そう言う類いの奴は付き合い方を間違えなければ有益なんだがな」
「因みに間違えるとどうなるんですか?」
「そいつが死因に成る」
「ひぇ」
言われた通り、付き合い方をちゃんと考えておいた方が良さそうだとレフィーヤは思ったのだった。因みに有益と言う点に関しては同意だが。資料とても分かり易いし。
「ま、情報に関してはちゃんと感謝しておくんだな。お陰で第二階層の攻略は随分と楽になりそうだ」
「間違って無ければですけどね」
「其処はもう、直接確認するしかないだろう」
言いながら、椅子から立ち上がるローウェン。何処に行くのだろうかと思うと。彼は察したのか、少し呆れた様な顔を浮かべて。
「夕食を食べに行くんだよ」
「あ、え?もう夜ですか?」
「気が付いて無かったのかよ」
「全然」
「…まぁ、取り敢えず行くぞ」
「はい」
部屋から出る彼に付いて行くレフィーヤ。流石に、言われるまで気がつかなかったのは、拙い気がした。と言っても夕食を食べ逃すようなことはしないで済みそうだが、ローウェンの御蔭で。重要なのは夜になった事に気が付かなかった事では無くそれ。ちゃんと食べて、疲れを残さない様に休む事が出来れば問題ない。
明日にはまた、迷宮へと挑むのだから。