世界樹の迷宮 ―――英雄達の軌跡―――   作:春山乃都

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第六十四話

それはおとぎ話。

 

曰く、空飛ぶ城には樹海を管理する者がいると。人々は其のものを、天の支配者と呼んだ。天の支配者とその眷属は地上にて死した後の魂を集め、そして・・・永遠の命を与える。

 

「ていう話があるらしいですよ」

「へぇ…それで?」

「と言いますと?」

 

問い掛けに返す様に首を傾げながらレフィーヤはローウェンを見る。

 

「まずは自分の意見を言ってほしんだが?」

「そう言う事なら、そうですね。個人的には居ると思ってます、天の支配者」

「それも訊いておくが、何故そう思った」

「モンスターが余りに同じ事ばかりするからですよ」

 

ちょっと気に成ったのでと言いながら、とある資料を取り出したレフィーヤ。ローウェンは手渡された其れを見て呟く

 

「モンスターの行動を纏めた物か」

「です。と言っても、知り合いがまとめて居た物を借りただけなんですけどね」

「その知り合い凄いな」

「キチガイですけどね」

「なんだキチガイか」

 

キチガイなら此れぐらいはできそうだしと言いながら、さらりと目を通す。

 

「二階層まで。割ときっちり行動パターンが書かれてるな」

「で、其れを見て分かると思いますけど」

「全く同じ行動を、全く同じ範囲で行ってるな。特にF.O.Eが」

「第一階層のF.O.Eと変わらず、ですよ」

 

第一階層の時は、いやまぁ馬鹿だなで済ませていたが。その先も同じ様なものばかりと成ると流石に可笑しい。

 

「いやまぁ、第一階層の時点で相当可笑しかったけどな」

「全く学習しませんでしたからねー。あの追跡者」

 

最終的に何回落ちれば学習するのか試したりもした。結果、落とし穴が死因となった。

 

「で、そんな事に成るとしたらそれこそとんでもない馬鹿か。後は、誰かがそう言う風に調教したかの何方かだと思ったわけです。それで」

「それっぽいのは無いかと調べた結果が、さっき言ったおとぎ話か」

「それっぽくないですか」

「確かになー」

 

言って、少し考えるような仕草をしてから。

 

「まぁ、正解かどうかは分からないけどな」

「ですよねー」

「だが、俺は其処まで間違ってないと思うぞ」

「そうですか?」

「勘だがな」

「勘ですか……人外の勘、凄く当たりそう」

「おい」

 

睨まれたので視線を逸らすレフィーヤ。でも実際凄く当たりそうだし。間違ってはいないと思う。

 

「しかし、仮にそうだとしたとしてだ。なんでこんな事してんだろうな」

「さぁ? 番犬替わりとかですかね?」

「それなら、もう少し優秀でも良いんじゃないか?」

「それはほら。キチガイには勝てなかったと言う事で」

「その言い方だとお前もキチガイだと言う事に成るが良いのか?」

「あっ……今の無しで」

「そうかい」

 

当たっている事が前提の話に成るが。何故、そんな事をしているのだろうかと。そう思いながら何気なく資料を眺めるローウェンを見て。ふと、思い付く。

 

「研究材料集めとか。そう言う奴ですかね」

「は?」

「いえ、ですから。こう、おとぎ話でも魂を集める的な事を言ってるじゃないですか?」

「あぁ、そう言えばそうだな…成程、詰り話に出てくる眷属の部分にF.O.Eを当て嵌めた訳か」

「そうです。なんか、どんどんそれっぽくなってきましたね」

「だが、研究云々は何処から湧いて出たんだよ。かなり唐突だったけど」

「それはあれですよ。その資料を作った私の知り合いがそう言うタイプの人だったので」

「へぇ……いやお前其れ唯のキチガイだから付き合い方は気を付けろよ?」

「いや、違いが分からないです」

 

え、キチガイって唯のとかそう言う種類があるんですかと。衝撃で在るが全く知りたくなかった事実であった。

 

「何か違うんですか?」

「違い、違いか。なんて言ったらいいだろうな」

 

うーん、と悩むローウェン。暫くすると視線をレフィーヤに向けて。

 

「同類にしか被害を出さないのがキチガイ冒険者。そう言うの関係なく被害を出すのが唯のキチガイ」

「あぁー…成程」

 

頷きながら思い出す知り合いの、クロの所業。第一階層のバーニング。不特定多数に被害を及ぼし。後に調べてみたら街に被害が及びそうになっていたそうだ。まごう事無きキチガイである。確かに、別物だ。

 

「まぁ、そう言う類いの奴は付き合い方を間違えなければ有益なんだがな」

「因みに間違えるとどうなるんですか?」

「そいつが死因に成る」

「ひぇ」

 

言われた通り、付き合い方をちゃんと考えておいた方が良さそうだとレフィーヤは思ったのだった。因みに有益と言う点に関しては同意だが。資料とても分かり易いし。

 

「ま、情報に関してはちゃんと感謝しておくんだな。お陰で第二階層の攻略は随分と楽になりそうだ」

「間違って無ければですけどね」

「其処はもう、直接確認するしかないだろう」

 

言いながら、椅子から立ち上がるローウェン。何処に行くのだろうかと思うと。彼は察したのか、少し呆れた様な顔を浮かべて。

 

「夕食を食べに行くんだよ」

「あ、え?もう夜ですか?」

「気が付いて無かったのかよ」

「全然」

「…まぁ、取り敢えず行くぞ」

「はい」

 

部屋から出る彼に付いて行くレフィーヤ。流石に、言われるまで気がつかなかったのは、拙い気がした。と言っても夕食を食べ逃すようなことはしないで済みそうだが、ローウェンの御蔭で。重要なのは夜になった事に気が付かなかった事では無くそれ。ちゃんと食べて、疲れを残さない様に休む事が出来れば問題ない。

 

明日にはまた、迷宮へと挑むのだから。

 

 

 

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